← 戻る
中村(なかむら)やすひろ

フランスにとっての『セクト』とは?

※ このブログは、あくまでも、私が個人的に調べた内容を記しているもので、見解は全て私見に基づくものです。

先日のブログで、フランスの「反セクト法」について書きました。(2022年8月13日ブログ)

2001年の同法の制定に先立つこと1995年7月、フランス議会はセクト調査委員会を設置し、12月に同調査委員会が報告書  No. 2468、通称「ギュイヤール報告書」* を提出しました。

* “Les sectes en France, Rapport fait au nom de la Commission d’enquête sur les sectes, № 2468”

フランス議会が、セクトについての調査を行った背景として、

1993年 (アメリカ) ブランチ・デビディアン事件(警察との銃撃戦の末、信者が焼死)

1994年 (スイス・カナダ) 「太陽寺院」の集団自殺

1995年 (日本)オウム真理教の地下鉄サリン事件

など、世界中でカルト教団による重大事件が発生し、危機感を強めていたことが想像されます。

「ギュイヤール報告書」には、セクトかどうかを判断する際、以下の10の指標が記載されています。

1. 精神的不安定化

2. 法外な金銭要求

3. 元の生活からの意図的な引き離し

4. 身体の完全性への加害

5. 児童の加入強要

6. 何らかの反社会的な言質

7. 公序への侵害

8. 多大な司法的闘争

9. 通常の経済流通経路からの逸脱

10. 公権力への浸透の企て

ニュースなどでも時々取り上げられています。しかし、ご覧いただければわかる通り、「公序への侵害」や「多大な司法的闘争」などはまだしも、「どうとでも取れる」内容のものが多いように見えます。あまりにも  抽象的 であるように感じます。

先日のブログにも書いた通り、この報告書には172(カウントの仕方では173だそうです)の宗教団体が、セクトとしてリストアップされています。

しかし、どういう基準に基づいて、これほど多くの団体を抽出しリスト化したのかー。実は、その点も、実に あいまい なのです。報告書には、『定義困難な現象(A.- UN PHÉNOMÈNE DIFFICILE À DÉFINIR)』との項目があり、”法律的に定義することが不可能(L’impossible definition juridique)”で、”流通している言語による定義が不正確で多様性(L’imprecision et la diversite des definitions issues du langage courant)”であるため、結局は、「世論がセクトの概念に与えている常識を考慮し (retenir le sens commun que l’opinion publique attribue a la notion) 」基準としているというのです。

つまり、個別具体の定義は困難なので、この報告書の作成者は、世の中の「常識」から判断してリストアップした、ということなのでしょうか??

先日のブログでも説明した通り、その後(2001年)立法化された「反セクト法」では、解散勧告などの何らかの法的措置は、具体的に犯罪行為を行い、法廷により確定した判決を複数回受けた「あらゆる法人」に対して適用されるとのことです。

ちなみに、セクトを監視しているフランスの民間団体が上のリストをアップデートしているようで、公明党の支持母体である創価学会のフランス組織は、2006年5月以降はこの団体のリストから外されているそうです。

[参考]

・ 小泉洋一 『フランスにおけるセクト対策と信教の自由—セクト対策の10年間を振り返って』 甲南法学, (46-4-75) 329-368, 2006年3月

・ 中島宏 『フランスのセクト規制法―敵対か?受容か?』 宗教法, (23) 31-52,2004年11月

・ フランス議会ホームページ  https://www.assemblee-nationale.fr