フランスの「反セクト法」
政治家と旧統一教会との関係が連日報道されています。反社会性のある団体ということを知っていながら、何らかの理由で付き合っていたとすれば、大きな問題です。一方で、一見、教会との関係性が不明な団体名もあり、一つ一つの相手の素性やイベントの背景を全て完全に調べて対応することは、実態として困難であったことは想像できます。それでも、今となってはもっと慎重さが求められたのでしょうが。。。
大事なことは、関係の有無の事実を公表するだけではなく、問題の本質を明らかにし、改善するべきことには迅速に対応していくことだと思います。
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フランス下院の議事堂であるブルボン宮殿 (写真は外務省HPより)
今回の事件を受けて、”カルト宗教”を規制するための新たな法律を制定することについて、フランスの”反セクト法”(人権及び基本的自由の侵害をもたらすセクト的運動の防止及び取締りを強化するための2001年6月12日法律2001-504号) が注目されています。
フランス語の「セクト secte」 は、英語の「カルト cult」に当たります。
法律名にもある通り、規制する対象は、「セクト secte」ではなく、「セクト的 sectaire」 としています。セクト的な団体とは、「活動に参加する人の精神的又は身体的依存を作り出し、維持し、利用することを目的又は効果とする活動を行うあらゆる法人」と定義しており、以下に挙げる違反について、刑事上の最終的な有罪判決を複数回宣告された場合、解散宣告をすることができる、と規定しています。
- 【各現行法典に基づく】 生命侵害、人の身体的・精神的完全性に対する侵害、人を危険に晒させる行為、無知と脆弱な状態に付け込む不法侵害、略取及び監禁、売春斡旋、人間の尊厳に反する労働、死体に対する侵害、差別、人格に対する侵害、未成年者及び家族に対する侵害、盗取、強要、詐欺、背信、財産の法的状況の詐称、不法な医師・歯科医・助産婦専門行為、不法な薬剤処方、虚偽広告、詐欺、食物・医薬品についての虚偽並びに不法売買
「セクト的」としているのは、教義・思想・信条が規制の対象ではなく、反社会的(法規に反する)行動を組織的に行ったことが対象なのです。このことにより、宗教的中立性や信教の自由を保障するとしています。
山形大学人文社会科学部の教授である中島宏氏は、「その規模や教義の内容に関わらず宗教であると主張する団体に対する規制は、信敦の自由保障の観点から慎重且つ冷静であるべきであり、背景にある事情や法的伝統を見ずして反セクト法の安易な類似立法を求めるのは危険である」(中島 2014、p.972)と、日本において同様な法律を制定することについて注意を促しています。
つまり、フランスはフランス、日本は日本、それぞれの社会的、文化的背景をよく考慮せよということです。
フランスは、日本とは全く異なる宗教観があり、社会的背景があります。古くはカトリックの国であり、フランス革命以降、信教の自由の問題に関して数百年間にわたって紆余曲折を繰り返してきた歴史があります。現代でも、中東やアフリカからの移民に多いムスリムとの社会規範の違いが、大きな社会問題となっています。シャルリ・エブド襲撃事件もありました。国家と宗教の関係、公共と私的における宗教活動のあり方や、学校における宗教教育等については、同国の社会論争の一大テーマです。「ライシテ laïcité 」と呼ばれるものです。
その他、フランスではインテリ層でチベット仏教や禅が好まれており、特にダライ・ラマが’89年にノーベル平和賞を受賞した後、同国では東洋思想やチベット仏教が大ブームになりました。
ちなみに、公明党の支持母体である創価学会のフランス組織が、’80~’90年代にフランス政府により「セクト団体」(海外布教を展開する日本の他の主な宗教団体を含む172の団体がリスト化されました)と扱われていた時代がありました。現在は創価学会は「セクト」とは見られていません。反セクト法が制定される前のことで、上の「セクト的」な行動によるものではありませんので、決して誤解のなきよう。詳しくは、以下にリンクを貼ったフリーライターの前原政之氏のルポを参照して下さい。
私は学生時代、フランスに留学していたこともあり(’88~89)、この問題には高い関心を持っています。さらに学んでいきたいと思います。
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[参考]
中島宏 『フランスのセクト規制法―敵対か?受容か?』 宗教法,(23) 31-52,2004年11月
中島宏 『フランス公法と反セクト法』 一橋法学,1(3) 345-409,2002年11月
前原政之 『仏『ル・モンド』の月刊誌がフランスの創価学会のルポを掲載――その意義と背景』 WEB第三文明 2013年6月25日
