令和7年11月20日 第4回定例会

情報リテラシー教育の推進と生成AIへの対応

中村 康弘

杉並区議会公明党の一員として、情報リテラシーについて質問をいたします。
 インターネットやSNSは、利用者の興味や関心に応じたアルゴリズムによって利便性が高まる一方で、情報の偏りにより、フィルターバブルやエコーチェンバーが生じ、個人や社会へ影響を及ぼすことが懸念されております。さらに、生成AIの発達によって、精巧な偽画像や動画、いわゆるディープフェイクがSNS上に拡散し、真偽の判別が難しい情報が増えることで、誤解や対立、詐欺などにつながるおそれが高まっています。各種調査によれば、誤情報は事実の6倍の速さで拡散し、誤りを見抜ける人は3割から4割にとどまるとされております。
 こうした状況を踏まえ、まず、SNS上での偽・誤情報やフィルターバブルやエコーチェンバーなどによる情報の偏りや分断が、区民の情報接触や行政情報への理解や信頼に影響を与えるリスクについて区はどのように認識しているのか、伺います。
 総務省の調査では、10代の若者がニュースに触れる機会は増えているものの、紙の新聞からSNS中心へ大きく移行していることが示されています。紙の新聞を利用する割合は、平成27年当時の32.4%から令和3年では13.5%へと急激に減少し、一方でSNSからニュースを得ている層は24.5%から61%へと急増しています。また、その間、10代のインターネットの利用時間が1.5倍以上に増加しており、オンラインでの情報接触が急速に拡大しております。つまり、より多くの10代がニュースに触れるようになった一方、その主要な入り口がフィルターバブルやエコーチェンバーが生じやすいSNSによるものという現状です。したがい、若い世代が早い段階からオンライン情報の成り立ちや背景を理解し、多様な視点で選択する力や姿勢を身につけることが重要です。
 そこで、区立学校における情報リテラシーに関する教育について伺います。
 当区では、区立小中学校の児童生徒一人一人にタブレット端末を配備し、デジタル技術を活用した教育DXを推進していますが、機器の操作や活用法を教えるだけではなく、SNSやインターネット上の情報を批判的に捉える力を育む教育はどのように行われているのでしょうか。教育相談や内容、また外部機関との連携など、実施状況についてもお聞かせください。
 現在の児童生徒は、生まれたときからデジタルに囲まれて育ってきているデジタルネイティブの世代です。そのため、ICT機器の操作や情報検索を直感的に行う感覚が身についており、私たち大人の世代、場合によっては教員よりも高いスキルを持つ生徒も少なくないと考えられます。だからこそ、学校教員自身が情報リテラシー指導のスキルを常にアップデートしていく必要があります。教員に対しての最新のネット社会の課題を踏まえた研修は行われているのか、研修の実施状況について確認いたします。
 文章、画像、音声を自動生成するチャットGPTなどの生成AIは急速に発展し、その性能の高さには目をみはるものがあります。また、使いやすさから、私たちの日常に急速に広がりつつあります。しかし、こうした生成AIは、大規模言語モデルなどの技術に基づき、膨大なデータから統計的に整合性の高い内容を生成する仕組みであり、その結果が必ずしも事実と一致するとは限りません。
 文科省が昨年12月に発表した初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインでは、生成AIは学習などを支援する道具であり、利活用自体を目的化しないことが示されています。AIの出力に誤りや偏りがあり得ることを踏まえ、情報活用能力の強化や最終的な判断は人間にあるという人間中心の原則が示されています。教育現場における生成AIの活用状況について伺います。AIを使いこなすだけではなく、AIに使われない力を育てることが、これからの時代の学校教育において重要な点であると考えますが、このことに対する区教委の考え及び取組状況をお聞かせください。

効果的な区の広報戦略と災害時情報伝達

中村 康弘

 続きまして、区の広報活動、情報発信について伺います。
 情報の受け手側のリテラシーとともに、情報の送り手側も、発信手段や届け方についての工夫や配慮が必要です。区が発信する情報を正確に適切に届ける信頼性の高い広報が求められます。「広報すぎなみ」は、区が行政情報を発信する主要メディアですが、紙による配布に加え、PDF版、音声版、マチイロアプリなど、多くのチャンネルで提供されております。年代、世帯構成、デジタルの利用状況などから、各媒体がどの層にどのように届いているのかの実態は把握されているのでしょうか。「広報すぎなみ」の情報到達度に対する区の認識をお聞かせください。
 一方、エックスやフェイスブック、LINEなどの区の公式SNS媒体についても、それぞれのフォロワーの属性、年代、利用時間帯、反応傾向などを分析し、より効果的な投稿方法についての工夫、改善は行っているのか、確認いたします。
 本来、理想とする情報伝達の在り方は、多岐にわたる全ての行政情報を一律に送ることではなく、必要な情報を必要とする方に最適な手段で確実にお届けすることです。そのような精度の高い情報提供を行うにはどのような工夫が必要とお考えか、伺います。
 一方で、行政情報の発信においては、個別最適化だけではなく、区の広報そのものを重要な情報源として身近に強く認知していただくことも重要です。そのためには、区の基本構想や総合計画の主要テーマなどについて一貫したメッセージを複数の媒体で発信し、全体として統一感を持たせることが効果的と考えます。
 近年、民間企業の広報活動では、複数のチャンネルを連動させて情報を届けるオムニチャンネル広報が注目されております。従来のように紙媒体やデジタル媒体を個別に活用するマルチチャンネルとは異なり、オムニチャンネルは、各広報媒体を統合的に結びつけ、一貫した情報発信を行う仕組みであります。例えば生活雑貨ブランドの良品計画では、ブランドの価値や考え方をどの場面でも同じように伝えることを重視し、店舗の陳列や公式サイト、アプリ、SNS、広告などで統一したメッセージを発信しております。商品の開発背景や使い方の情報もオンラインと店舗で連携させ、顧客がどのチャンネルでも同じ内容を理解できるように工夫しています。
 このように、統一感のある広報を行う取組は、情報を効率よく確実に届け、認知度を高める上で効果的な手法とされております。区の情報発信も主要テーマを軸に広報紙、SNS、関連ウェブサイトなどを連携させ、一貫性のあるメッセージを統合的に届けるオムニチャンネル化を進めることは、広報の認知度や届きやすさの向上に有効ではないかと考えます。所見をお聞かせください。
 今年1月に全面リニューアルされた区の公式ホームページについて伺います。
 公式ホームページのリニューアルに当たり、留意した点について改めて確認いたします。そして、それらの留意点がリニューアルによってどのように改善されているのか、区民、利用者からの評判や評価はどのようなものか、検証状況をお伺いいたします。
 障害のある方へのデジタル支援体制について、視覚、聴覚、知的障害など属性に応じたアクセシビリティーの向上はリニューアルによって図られているのでしょうか。多様なニーズに応じた情報提供体制についてお示しください。
 災害時には緊急の行政情報を正確に確実に届けることの必要性は一層高まります。能登半島地震では、停電や通信障害により、自治体の避難情報の伝達が滞り、一部地域で情報空白が発生しました。とりわけ、デジタル環境がなかったり、高齢者、外国人、障害のある方など、受け手の状況は様々であり、通常の広報以上に即時性と到達性が求められます。
 そこで伺います。災害時の行政情報の伝達には、平常時と比べて情報発信の目的や優先順位、また、形式、スピード、内容などの伝え方にどのような違いがあるとお考えでしょうか。防災無線、メール、SNS、アプリなど、区では複数の災害時の情報発信手段の併用が想定されておりますが、それぞれの情報到達に関する課題をどのように認識しているのでしょうか。そして、その課題克服に向けてどのような取組を行っているのか、確認いたします。
 また、近年の災害では、SNS上で避難所が満杯、特定の河川が氾濫したなど、事実と異なる投稿に加え、実際には存在しない住所や状況を装った救助要請のデマが広がり、救助活動の妨げとなった例も報告されております。災害発生直後の混乱した状況下で、このような偽情報、誤情報が急速に拡散し、住民の判断を乱す傾向が強まっています。災害における偽情報、誤情報の拡散リスクに対する区の課題認識と対策についてお聞かせください。
 続いて、高齢者の情報リテラシー支援とデジタル格差の是正について伺います。
 消費者庁の調査では、高齢者の半数以上が、インターネットにおける商品、サービスに関して、情報があふれていて、正しい情報を判断しにくいと感じており、健康不安や対人関係への配慮から、トラブル対応が遅れがちであることが指摘されております。また、60代のインターネット利用率は約6割に達しており、70歳以上でも一定の利用が確認されています。こうしたことからも、高齢者もネット空間で情報収集、共有を行う存在になっており、偽・誤情報に対するリスクを抱えていると考えられます。
 杉の樹大学では、高齢者向けのスマートフォン講座を定期的に開催し、大変好評と伺っております。しかし、スマホ等の操作方法だけでなく、詐欺メールや誤情報、検索結果の偏りなど、情報の信頼性を判断するための情報リテラシーの啓発も重要です。現在の講座等においても、高齢者向けにそのような内容を扱う啓発活動は行われているのでしょうか。
 今年10月からはデジタルなんでも相談窓口が開設されました。まだ事業開始から間もない段階ではありますが、直近までの開設実績と利用者数や相談内容など運営状況について確認いたします。また、相談に来られた方に対しては、SNS上の情報に関するリスクについても積極的にお伝えし、しっかりと理解をしていただくことも必要であると考えますが、所見を伺います。

若者と連携したデジタル支援と情報発信

中村 康弘

 最後に、若者の力を生かしたデジタル支援と情報発信について伺います。
 NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボでは、横浜市と連携し、若年層を中心に、スマートフォン活用のサポート役を育成するプロジェクトを実施しています。デジタル技術に不慣れな高齢者などへの支援を通じて、社会的孤立や情報格差といった課題の解消を目指すもので、若者の社会参加の機会づくりにもつながっております。こうした取組は、高齢者、若者双方にとって有益であると考えます。若者にとっては、地域や社会に貢献する実践の場になるだけではなく、ICTスキルを教える立場を通じて、指導力やコミュニケーション力を高めることができます。一方、高齢者にとっては、ICT機器やSNSの操作への不安が軽くなり、若い世代との交流を通して、孤立感の緩和や新しい視点の獲得につながると思います。高齢者のデジタルディバイド対策への若者の参画は1つの事例で、本日ここまで取り上げてきた情報リテラシー、区の広報活動、情報発信などといった、今日における社会課題の解決に当たっては、Z世代などの若者こそが力を発揮できる分野ではないかと考えます。
 これまで区は、区民や地域団体等の区政参画を促す取組として、公民連携プラットフォームの構築、運営を進めてきましたが、必ずしも若者に着目してきたものではなかったと思います。今後、さらに多様な立場の人々との連携、協働を進め、実行力の高い取組としていくためには、若者の参画という視点を強く持つべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。最後にこの点についての区の見解を伺って、私の質問を終わります。ありがとうございました。

答弁

副議長(川原口宏之議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
      〔区長(岸本聡子)登壇〕