地域包括ケアシステムと在宅医療推進に関する質問
杉並区議会公明党の一員として、地域包括ケアシステムについて質問いたします。
改めて、地域包括ケアシステムとは、住まい、医療、介護、予防、生活支援の一体的なサービスの提供により高齢者の地域での生活を支える体制であり、おおむね中学校区での日常生活圏域、つまりケア24のエリア単位で構築していくというものです。またそれは、フォーマルなサービスとともに、インフォーマルな個人や団体の地域資源をネットワーク化していくことで実現するとしています。
本区における2025年に向けたシステム構築への取り組みは、調整・検討期間を含めて足かけ5年になりますが、まずは、これまでの取り組みに対する検証と現状認識、また顕在化してきた課題等について所見をお聞かせください。
私が指摘したいのは、システムの具体像の見える化とシステムの構築過程のマネジメントのあり方であります。本取り組みにおいて、従来からの区の高齢者施策や介護保険事業との違いは何か、医療機関や地域資源、ネットワーク化などについての具体的、定量的な情報は十分か、2025年までの具体的なロードマップ及び進行管理は関係者間で共有されているか、日常生活圏域ごとと区全体を単位とした進捗状況など、整理する点が幾つかあるのではないでしょうか。それぞれの地域で、何がどうなるのか、いつまでに何をなすべきなのか、システム構築の可視化を進めるとともに、関係者間においてその共有化を図るべきではないかと考えますが、区の所見を伺います。
また、区の役割として、地域単位と区全体という2つの視点からのロードマップの作成や進行管理などを行うマネジメントに、もっと重心を傾けるべきではと考えます。この点についても、区の考えをお聞かせください。
天沼3丁目に建設中の複合施設は、地域包括ケアの取り組みをバックアップするものとして、平成30年度に複合施設棟、33年度に特養棟が開設する予定です。複合施設棟内に設置予定の在宅医療・生活支援センターは、地域の在宅医療の推進と高度困難な事例への対応という2つの機能を備えた新たな枠組みの施設となります。
在宅医療の推進は、地域包括ケアシステムにおいて必要不可欠な要素であります。昨年7月に東京都が発表した地域医療構想では、本区を含む区西部医療圏において、2025年には、1日当たり2万2,000人近い在宅医療のニーズがあるとの推計値が示されました。しかし、これには区などの自治体単位の数値が示されていないため、杉並区における在宅医療の需要と供給の実態を把握することはできません。区は、東京都の地域医療構想から、区内の在宅医療の現在と将来の状況をどのように読み取っているのか、認識をお聞かせください。
先日、NHKのドキュメンタリー番組で紹介された横浜市の訪問診療所は、常勤の医師が6名、看護師やドライバー等を含めると、合計で50名以上のスタッフを擁し、国内でも最大規模とのことであり、この人員で1日に約40件の患者を訪問し、年間で約300人のみとりを行っているとのことであります。こうした実例も参考にした上で、区内の実態把握、地域の特性に合った運営や連携の仕組みづくり、また新規参入の誘引策の検討など、具体的な政策立案と計画化を進める必要があります。
区では、本年度、千葉県柏市と東京大学高齢社会総合研究機構との連携事業である、レセプト情報を利用した終末期医療・在宅医療の実態調査の手法を参考にしながら、区内の在宅医療に関する調査分析を行う予定です。改めて、この実態調査について、具体的な取り組み内容、さらには、得られた調査分析結果をどういう形で活用していくお考えか、所見を伺います。
また、在宅医療を推進する過程において、在宅医療・生活支援センターは具体的にどのような役割を担うことになるのでしょうか。さらに、平成33年度開設の特養棟内には、訪問診療を中心とした診療所や訪問看護ステーションのほか、ショートステイ、看護小規模多機能型居宅介護など、在宅介護を支援する施設を併設する考えも示されています。これらを含めた複合施設全体が完成した後の推進体制についてはどのように構想しているのか、あわせてお聞かせください。
区では、在宅医療推進連絡協議会や、7つのブロックごとの在宅医療地域ケア会議などを通して、関係者の顔の見える関係づくりや課題の共有など、医療と介護の連携推進にも取り組んでいます。在宅療養者のニーズに応じた多様なサービスや支援が1つのチームから提供されていると感じられる、利用者から見た一体感が重要であります。医療、介護の連携におけるこれまで進めてきた顔の見える関係づくりの後の展開についてはどのようにお考えか、お聞かせください。
関連して、自宅でのみとり支援について伺います。
昨年、厚生労働省が、平成26年の人口動態調査をもとに、市区町村別の在宅死率、自宅で死を迎える方々の割合の統計を公表しました。それによると、同年、杉並区民が死を迎えた場所は、自宅が17.7%、老人ホームが6.3%、病院が73%という推計結果でありました。一方、区が行っている高齢者実態調査では、全体でおおむね6割の方が、現在の住まいで介護サービスを受けながらできるだけ住み続けたいと回答しています。また、私ども区議会公明党が平成27年に区民約3,000人を対象に行ったアンケート調査の中で、終末期を迎えたい場所として自宅を希望する方の割合が58.5%との結果が見られました。しかし、実態は17.7%。希望と現実には大きな乖離があると言えるでしょう。
人生の総仕上げとなる最後の時間を、どこで誰とどのように過ごすのか、また病とどのように向き合いながら生を全うしていくのか、全ての人にとって避けて通れない人生最大の課題であり、また、それは個々人及び家族がそれぞれの人生観に基づいて選択していくものであると私は思います。みとり支援については、区としての具体的なものはまだ存在していないようですが、本人や家族が選択できる環境の整備や支援体制の充実の必要性は高いのではないでしょうか。区のみとり支援について、どういった視点での取り組みが重要と認識をしているのか、所見を伺います。
在宅医療・生活支援センターが担うもう一つの機能は、高度困難事例への対応です。これは、高齢者、障害者、経済的な困窮、未受診の精神疾患患者、あるいはサービスの拒否など、本人または世帯において異なる分野での複数の福祉的課題を抱えたり、制度の谷間で適切なサービスが受けられていなかったりする事例等を対象としたものと理解しています。
複合施設棟には、同センターのほかに、福祉事務所、成年後見センター、消費者センター、就労支援センター、社会福祉協議会、生活支援自立窓口等、生活支援や福祉全般にわたる施設、部署も同一の建物内に集約されることになります。全ての人が安心して自宅で暮らし続けられる、まさに全世代を対象とした地域包括支援の拠点となることが期待される中、物理的な集約化は大きな利点であると考えます。区はこうした複合施設棟の物理的な特色をどのように生かしていくお考えか、お聞かせください。
この取り組みの入り口とも言えるのが相談の受付業務であります。現在では、各地域のケア24、保健センター、福祉事務所、障害者地域相談支援センター「すまいる」のほか、区役所の各所管担当課などが、いわば区のフロントオフィスとして、福祉に関する区民からのさまざまな相談を受け付けています。私は、これらフロントオフィスと在宅医療・生活支援センターとの役割分担や全体を通した業務フローなどを体系化し、その上で、複合的な課題に対する適切なアセスメント、支援のコーディネート、さらには関係機関との調整といった一貫したシステムとすることで、センターの効果的な運営が可能になると考えます。区役所全体の業務における同センターの位置づけ、また、センターの開設に伴う相談受付業務の見直し、再構築について、区の考えをお聞かせください。
また、入り口に対して、出口は課題の解決であります。困難な事例には、背景や要因が複合化して解きほぐしが困難なケース、当事者に解決に向けた意欲や意識がなく困難になっているケース、地域や社会から孤立し解決策が見出せないケースなど、困難となる要因は幾つか考えられます。また、解決に至るまで5年、10年、あるいはもっと長い期間を要する、または既に要している場合も少なくないと考えられます。センターにおける困難事例への対処に関して、どこを出口と設定するのか、またどの程度の期間での解決を目指すのか、その基本姿勢、原則について所見を伺います。
また、複合化、困難化した事例への対応は、自助・互助・共助・公助の枠組みを基礎としつつ、課題解決に向けての当事者のエンパワーメント、また、地域の身近な伴走者、支援者づくりが欠かせないと考えます。そして、何よりもセンターに求められるのは、解決能力にすぐれた強いチームとして、区民の皆様から頼りにされる存在になることだと思います。そういう意味から、担当職員の一定数の確保とあわせて、専門職の国家資格である精神保健福祉士など職員の質の確保も重要です。センターの人員体制について、現段階における区の考えをお聞かせください。
高齢になっても健康で自立した生活を送ることは誰もが望んでおり、地域包括ケアシステムにおいても核となる要素であります。ここからは健康寿命の延伸について伺ってまいります。
区は、生涯にわたって健やかに生き生きと暮らせる健康長寿の地域社会を目指し、健康づくり推進条例を制定しました。そして、65歳健康寿命の延伸に具体的な数値目標を設定して、さまざまな施策を実施しています。平均寿命が東京都で男女とも1位である杉並区が健康寿命延伸の取り組みを充実させる必要性については、私もこれまでたびたび訴えてまいりました。老化現象は身体内で起こる進行性の現象であり、誰人も避けられないものであります。しかし、それは画一的に生じるものではなく、個人差が非常に大きいとされています。
議長、ここで資料の提示の許可をお願いいたします。
許可します。
このグラフは、東京大学高齢社会総合研究機構特任教授である秋山弘子氏が、全国から無作為に抽出した約6,000名の高齢者の生活を20年にわたりパネル調査を行い、高齢者の日常生活の自立度を指すADLの低下をパターン化したものであります。縦軸が自立度、横軸が年齢をあらわしています。上のグラフは男性、下のグラフは女性です。男性は3つの、女性は2つのパターンに分かれるそうであります。
この図における赤い線、男性の19%、女性の12%が、60歳を過ぎたころに急速に自立度が低下し、重い要介護の状態になってしまいます。この集団には進行の早いがんなども含まれ、メタボリックシンドロームを背景とした脳、心臓、血管にかかわる疾患の発症が関係している可能性が高いとされています。一方、青い線、男性の70%、女性の88%が75歳ごろを境に自立度が低下しています。これらは虚弱化と言われており、ロコモティブシンドロームや加齢による筋肉の減少、いわゆるサルコペニア、また認知症などにより、個々に自立度が低下していく可能性を多く含んでいるとされています。
健康寿命を延ばすには、こうしたADL低下の傾向性を加味した上で、効果的な疾病予防と虚弱予防に注力する必要があります。区の所見を伺います。
本年度より、区は、高齢者の健康づくりにおいて、フレイル予防という新たな概念を掲げました。フレイルとは虚弱を意味する言葉で、健康な状態から要介護状態に至るまでの中間的な状態を指します。そして、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題(フィジカルフレイル)、認知機能障害や鬱病などの精神・心理的問題(メンタルフレイル)、独居や経済的困窮などの社会的問題(ソーシャルフレイル)の、3つが相互に絡み合って発生するという概念です。
区は、フレイル予防の1つとして、今年度より口腔機能チェック事業を開始し、高齢者の歯と口腔の健康状態を保つことで、食事を通した栄養補給による体の健康保持を促進するとしています。大変有意義な取り組みであると思います。ただ、一方で、ただいま述べたとおり、フレイル予防は多面的であります。区が従前より実施している高齢者の健康増進策や社会参画を促す取り組みなどの既定事業の多くも、フレイル予防につながるものと考えます。このたび区は、フレイル予防という新たな概念を打ち出したことを受け、関連する事業をどのように体系化し展開していくお考えなのか、お聞かせ願います。
先日、信州大学大学院の能勢博教授が考案したインターバル速歩という、速歩き3分、ゆっくり歩き3分を交互に繰り返すウオーキング法についてお話を伺い、また、その運動法を取り入れた健康事業を行っているNPOの活動を視察させていただきました。専用に開発された計測器により個人の最大体力を測定し、その70%以上の負荷で1日30分以上、週4日以上のウオーキングを実施することで、6カ月で体力が10%向上、生活習慣病の症例も10から20%改善するという効果が実証されています。エビデンスに基づく政策の実践が求められている今日、区で行っているウオーキングや介護予防といった多様な健康づくりの方法についても、本人の行動変容や健康状態の把握、そして課題解決についての検証を行い、より効果的、効率的な方法の導入を積極的に進めていただきたいと考えます。所見を伺います。
居住支援協議会の活動と今後の展望
最後に、住まいの確保について伺います。
住みなれた地域で長きにわたってその人らしく暮らし続けていくことができるエイジング・イン・プレイス、地域居住は、地域包括ケアシステムの前提となる概念であります。区では昨年11月、居住支援協議会を立ち上げ、区役所の都市整備部と保健福祉部、住宅・不動産の業界団体、さらにNPOと社会福祉協議会が参画、協働して、高齢者や障害者などの住宅確保要配慮者に対して居住支援を行う体制を新たに構築しました。この協議会では、不動産連携と空き家等利活用の2つの専門部会を設け、それぞれのテーマに沿った具体的な対策を検討しています。先日、協議会の会議を傍聴させていただきましたが、既に家賃等債務保証制度の充実策や空き家利活用モデル事業が立ち上げられるなど、大変素早い展開が印象的でありました。本年度、居住支援協議会の活動が本格化するにつれて、住みやすい地域づくりが一層進むことに大いに期待したいと思います。最後に居住支援協議会の今後の活動予定を伺って、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕