平成19年9月26日 第3回定例会

行政改革と情報バリアフリー推進

中村 康弘

杉並区議会公明党の中村康弘でございます。本日は、我が会派の一員として、区政一般に関する質問を行わせていただきます。
 一つ目のテーマとしまして、行政改革、特に全体最適、成果重視の体制に向けての今後の展開について、そして二つ目のテーマとして、視覚障害者のための情報バリアフリーについて質問をさせていただきます。
 平成十一年の山田区長就任以来、我が杉並区はこれまで行政改革へ果敢に取り組み、次々に新しい施策を導入し、経常収支比率の改善、区債残高の減少等、数値の上で着実に結果を出してきました。と同時に、区の財政状況を、企業会計的分析による財務諸表をできるだけわかりやすい形で公表し、区民への説明責任にも努力してきました。このような改革と説明責任に対するこれまでの当区の姿勢としては、高く評価できるものです。
 しかし、先般の議会での区長の所信表明にもありましたとおり、今こそ真に自立した地方政府の実現に向けて、ここで区政運営の盤石なる体制づくりのための次なる展開を真剣に考えていくときではないか、そのように感じております。本日は、組織論や人材論も含めて、将来の区政運営のあるべき姿について、さまざま質問をさせていただきます。
 まずは、これまでの杉並区の行革の流れを簡単におさらいをさせていただきます。
 当区は、スマートすぎなみ計画という行財政改革大綱のもと、「区民とつくる小さな区役所で、五つ星のサービスを」というテーマを掲げ、小さくても力のある区役所として、区民との協働や民営化を戦略の柱とした改革に取り組んでおります。そして、そういった目標を実現するための方策として、さまざまな新しい行革手法を全国に先駆けて、また大変積極的に取り入れ、実行してまいりました。
 行政評価におきましては、当区は、事務事業評価に本格的に取り組みを開始したのが平成十一年度分からでした。日本において初めて政策評価という言葉が明示的に使用されたのが平成九年十二月の行政改革会議最終報告であり、また、平成十一年九月の段階では、全国の基礎自治体で行政評価システムを導入していたのは、わずか二%しかなかった状況をかんがみると、いかに当区がこの制度に対して積極的に取り組んできたか、わかります。
 その後、評価制度にさまざまな指標を取り込み、より定量的な分析で成果重視による評価ができるシステムを目指し、また、政策レベル、施策レベルでの評価を加え、三層による総合的な行政評価の確立に尽力してきました。そして、外部評価委員会や区民の評価により客観性を高め、さらには、当該年度の評価と翌年度の予算との連動を実現するため行政評価の実施時期を早めるなど、これまでの八年間、さまざまな改善を加えてきました。
 また、PFI事業に関しても、杉並公会堂の改築、維持管理及び運営事業、今川の新型ケアハウスの整備事業、井草介護強化型ケアハウス整備事業にPFIを適用し、まだ緒についたばかりですが、公共施設の建設、維持管理・運営に民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法を導入しております。
 そして、新しい展開として、杉並行政サービス民間事業化提案制度を通して、平成二十二年度までに区の行政サービスの六〇%を協働化していくことを目標としております。国の市場化テストのように行政が枠組みを決めるのではなく、区のすべての事務事業を公表し、民間が自由な発想で提案ができるという大胆な試みで、本年度はモデル事業を実施し、来年度からの本格的導入を計画しております。
 さらには、財務会計システムの改革であります。先般の議会における我が会派の代表質問に対する回答にもありましたとおり、現在の区の計画としては、来年度から、発生主義・複式簿記等を取り入れた、企業会計をベースとした新たな財務会計システムを導入予定と伺っております。最終的な全体像はまだ発表にはなっていないものの、東京都が昨年度から稼働させた、日々の官庁会計の処理を行いながら、同時並行で企業会計処理も行えるシステムを有効と考え、検討を進めているとのことです。会計システムの改革によって、資産や債務の総量や変化、また個別の行政サービスのコストなど、区の財政状況の透明性が格段に高まることが期待されます。
 さまざま述べさせていただきましたが、これら行政評価、PFI、民間事業化、また公会計システムの改革等、これまで杉並区が導入してきた、また導入を計画している施策については、一九八〇年代後半から、ニュージーランド、イギリス、アメリカなどアングロサクソン系諸国の公的部門の改革手法として使用されてきた行政実務のマネジメント論、いわゆるニュー・パブリック・マネジメント(NPM)で導入されてきた手法であります。
 NPMとは、民間企業における経営理論・手法を可能な限り行政の現場に導入することを通じて、行政の三E、エコノミー(経済性)、すなわち税金などを投入する資源の最少化、エフィシェンシー(効率性)、投入から資源が生まれる活動の最大化、そしてエフェクティブネス(有効性)、活動から生まれる成果の最大化の達成を図り、市民が、私たちでいえば区民が支払う税金に対して最大の満足、バリュー・フォー・マネー(VFM)を提供するという改革手法であります。つまり、区民志向の観点から、経済性、効率性、有効性の三Eを徹底して追求し、税金を支払っている区民に最大の満足、VFMを与える行政運営を目指すというものです。
 そういう意味におきましては、杉並区がこれまで導入してきた行政評価、PFI、民間事業化提案制度等の政策は、あくまでもツールであり、手法であります。手法のみを導入しても、意思決定や資源配分の仕組みの全体的な改革に踏み込まなければ、改革の効果は極めて限定的になると考えます。要するに、方法論ばかりに目が行き、そもそもの視点、到達点が矮小化、歪曲されてしまうおそれがあります。あくまでも目標とするのは全体最適であって、部分最適であってはならない。
 例えば、計画に水を差すようで申しわけありませんが、民間事業化、協働化が六〇%進んだとしても、結果的にコストが上がり、サービスの質が下がれば本末転倒です。意味がありません。施策の一つ一つがお互いにリンクし、相乗効果を生みながら、PDCAサイクルで全体がよい方向に向かっていくことが重要です。
 それでは質問します。
 これまで海外諸国で導入され、現在我が国の行政改革の主流となっているこのNPMの手法に対して、区長はどのように評価をされているのか、お聞かせ願います。
 また、個別のツールの有効性、効率性を総合的にマネジメントし、全体最適の視点からの評価、改善をしていく、そのようなシステムの構築にも相当な注意力が必要であると思いますが、区長の所見をお伺いします。
 さらには、これらを実行する区役所のガバナンス、組織、そして人的資源管理の考え方についても伺います。
 「組織形態は戦略に従う」とは、経営史学者のアルフレッド・チャンドラーの言葉です。NPMの手法を総合的に活用して区の全体最適を目指していく、そういう高度な行政運営を着実に実行していく組織体のあり方というものも考えていかなければならないと思います。
 例えばカンパニー制度。企業内に企業、カンパニーをつくる組織体制であり、新規ビジネスや開発分野においての意思決定の簡素化、経営スピードのアップを目的として、多くの民間企業が導入しています。カンパニーのように各部署を一つ一つの独立した組織ユニットとみなし、それぞれに資産、資本を付与すると同時に、自ら業績に直結した責任をとらせるガバナンスの体制です。予算と実績を直接リンクさせた自己管理を求め、さらには、バランスシートを自分たちで管理させるということによって、徹底した自己完結型のマネジメントを要求する一方、人材配置を含め、運営と権限の自由度を高めていきます。
 このようなカンパニー制は一つの例であり、また、ある自治体では事業部制を実施しているところもありますが、区としては、今後の成果重視のマネジメントの中で、意思決定の迅速化を図り、現場のエンパワーメントを高める組織改革についてはどのような考えをお持ちでしょうか。
 行財政改革実施プランでは、行政需要に迅速、的確に対応できる、より簡素で活力ある組織への改編についても言及されていますが、今後の具体的な計画についてお聞かせください。
 ちなみに、区役所には、区民から信託を受けた行政サービスの購入者、調達者としての機能も本来備わっていると私は考えます。その意味において、各部が競争力のある行政サービスの供給者を目指す一方で、その部署とは立場的に一線を画して、あくまでも区民全体の代理者として、社会的トータルコストをベースに、区役所の内外から最も競争力のあるサービスの供給者を選択するという機能の強化にも尽力するべきです。
 ニュージーランドにおいては、政府立案機関と行政供給機関を分離し、各行政府の執行責任者と大臣との間で、数値目標をベースとした業績に関する契約を結び、行政の仕事ぶりを厳しく監視していく体制となっています。
 我が区におきましても、従来の縦割り的な発想を捨てて、公共サービスの比較分析、評価を行う独立した機能の充実についても、今後研究を進めていただきたいと思います。
 さて、幾ら組織や体制を整えても、肝心の職員が自発的に改善をしていく姿勢がなければ、真の意味での改革はできないと思います。組織といっても、しょせん職員一人一人の力が大きくかかわってくるわけです。一般企業であれば、会社の業績が個人の給与に直接結びつくストックオプションや成果主義などの経済的な動議づけが、社員のやる気を引き立てることもあります。区役所としては、改革(イノベーション)の動機づけとして、今後どのような方策が考えられるでしょうか。改革の度合いに伴う実力主義や成果主義の人事昇給制度への移行はどのように検討されているのでしょうか。
 また、当区でも職員提案制度が既に導入されておりますが、これまでのこの制度の効果についてどのように認識をされているのか、また、今後この制度を現場活性化にさらに活用していく予定はあるのでしょうか、お聞かせください。
 また、グローバリゼーションの時代の中で、世界に通用する、民間にも負けない一流の行政マンの育成を目的とし、民間企業やNPO、また、国内外の大学院等への派遣研修制度も検討されてはいかがかと思いますが、ご所見をお聞かせください。
 その一方で、どれだけ時代が変わり、新しい行政手法が取り入れられたとしても、決して実務や理論のみの無機質な職員ではなく、あくまでもパブリックサーバントとして、どこまでも区民のためにの目線で、また、名もなき一庶民の苦しみがわかる温かいハートを行動基準とした、区民に奉仕し抜く職員であってほしいと思います。そういう意味においての今後の具体的な職員全体の意識の教育、啓発計画はどのようにお考えか、お聞かせください。
 いずれにしましても、杉並区の行政改革の次の展開を真剣に検討する時代に入っております。NPMの手法をいかに効果的に活用していくか、そして区民満足度をいかに高めていくか、今後の自治体運営のあり方を、私自身も、区民の皆様から信託を受けた議員としてこれからも真剣に考え、また、さまざまな機会で発言してまいることをお誓い申し上げ、次の質問テーマに移らせていただきます。
 視覚障害者への情報バリアフリーについてお伺いいたします。
 昨年の十二月十三日、ニューヨークの国連本部で開催された第六十一回国連総会で、障害者権利条約が全会一致で採択されました。この条約は、世界じゅうの障害を持つ方々に対する差別を撤廃し、社会参加の促進を目的としています。締結国に対し、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人に対し、物理的環境や輸送機関に加えて、情報及びコミュニケーションへのアクセスを確保するための適切な措置をとることを求めております。つまり、段差解消のバリアフリー化は建物や道路だけに限らず、情報やコミュニケーションの環境も改善していくことの重要性を訴えています。
 視覚障害者にとって最もポピュラーな情報収集ツールの一つに点字があります。この点字は、現在、日本国内で障害者手帳を保持されている約三十万人の視覚障害者の中で、点字を利用されている方の割合は、何と一〇%にも満たないと言われております。こういった視覚障害者に対する情報格差をなくすための手段として、最近では、さまざまなIT技術を駆使した情報提供機能のソフトとハードが日進月歩で生まれ、発展しています。
 例えば活字読み上げ装置というのがあります。紙に掲載された文字の情報をデジタルに変える十八ミリ四方の切手ほどの大きさのコード、見た感じには携帯電話用のQRコードに似ておりますが、その小さなこのようなスペースの中に八百から千文字の情報が入り、そこに専用の読み上げ装置を当てますと、機械が活字を読み上げてくれます。コードの作成も、専用ソフトをインストールすれば、複雑な設定をすることなく、マイクロソフト社のワードで作成したテキストをコード化できます。作成したコードは一般的なレーザープリンターで出力ができ、だれもが簡単に大量の情報を記録、掲載できます。
 それ以外にも、OCR(光学式文字認識)の技術を利用して、画像として読み取った印刷物を文字に変換し、それを音声で読み上げるところまでを簡単な操作で行える機能やソフトウエアも多数出ております。また、インターネット上での情報を直接パソコンの合成音声で読み上げ、画像やリンクの数、フレームの有無など、画面情報を音声で知らせる音声ブラウザーも多数開発されております。
 そういった技術の発展に伴って、視覚障害者のパソコン、インターネットの利用率が、平成十年で約三%であったのが、平成十一年に約二〇%にまで急伸し、平成十五年にはおよそ七〇%の方が利用しているとの統計データもあります。そして、障害者へパソコン講習を行うパソコンボランティアの推進に取り組む企業やNPOも多数設立されており、また、音声だけでウエブを利用している方々のために、違和感なく聞けるよう、ウエブサイトのユニバーサルデザインに配慮しているホームページも増加している状況です。
 ちなみに、ある新聞社系の視覚障害者のための情報サイトは、音声ブラウザーに配慮したユニバーサルデザインとなっておりますが、一日に何と五十万件以上のアクセスがあるそうです。
 役所のサービスにおいては、情報提供がまず第一歩です。こういった視覚障害者に対する技術と環境が発展している状況下、行政としても、障害者にとって健常者と同様に重要な情報をいかにスピーディーに、かつ的確に提供していくことができるか、ぜひとも当分野での最新の技術トレンドに常にアンテナを張りめぐらせ、そして積極的に活用し、情報バリアフリーの実現に尽力をしていただきたいと思います。
 「障害者のてびき」や「すぎなみくらしのガイド」等に記載されている、日常生活をしていく上での基本的な情報や、各種手当や健診、予防接種、住民税、介護保険に関する通知、そして災害、防災に関する事柄などを情報バリアフリー化していくことは、視覚障害者だけにとどまらず、細かい文字を読むのに苦労されている弱視の方々や高齢者の方々にも非常に重要なサービスであると思います。また、こういった音声化対応の情報提供を促進していくことは、各部門の職員における情報バリアフリーに対する意識向上にも有効なのではないでしょうか。
 当区として、こういったIT等の新しい技術を活用して視覚障害者の情報バリアフリー化に取り組むことについてどのように認識されているのか、ご所見をお聞かせください。
 「足は大地に着け着実に。しかし目は希望の未来へ高く上を見よ」、この言葉は、私が高校に入学したときの式典に来賓として出席されたフランスの著名な美術史家、ルネ・ユイグ博士が私たち新入生に対して贈ってくださったものです。我が杉並区としても、障害者や高齢者等、社会的な弱者と言われる方々に対しては、きめ細やかな配慮、つまり庶民の生活という現実の大地にしっかりと足を着けて、一方では効率性と有効性と区民満足度でどこまでも最高のサービスレベルを追求していく、つまり希望の未来を空高く見上げていく、そのような杉並区のたゆまない挑戦をこれからも継続されることを強く念願申し上げ、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。

副議長(横山えみ議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
     〔区長(山田 宏)登壇〕