行政改革と業務改善:リーン経営の導入とABC分析の活用
杉並区議会公明党の中村康弘でございます。区民の皆様の代表として、本日初めてこの場に立たせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、一つ目のテーマとしまして、行政改革、特に区役所業務の改善と情報システムの合理化について質問をさせていただきます。そして、二つ目のテーマとしまして、地球温暖化対策について質問をさせていただきます。
三期目を迎えられた山田区政ですが、経常収支比率が平成十七年度で七八%、区債残高も今年度末の見込みで三百九十七億円にまで削減されるなど、これまでの二期八年間の行財政改革の成果として評価できるものと思います。しかし、改革には、ここまで結果を出したからもういいという到達点はありません。トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏が、改善は永遠にして無限であると語っているように、どこまでもどこまでも改善・改革を進めていく杉並区であってほしいと思っております。
私は昨年まで、本社がアメリカのシリコンバレーにあり、携帯電話やパソコンに使用される電子部品の外資系メーカーで、年間十数億個の製品を生産している工場のオペレーション管理の仕事をしておりました。日進月歩で技術が進化し、また市場からの厳しいコストダウンの要求にさらされ、いかに安く早くいいものをつくっていくか、製造オペレーションが競争上の優位性にまでなっていくオペレーショナル・エクセレンスが求められていました。
最も競争力のあるオペレーションとして世界じゅうで物づくりのお手本ともなっているのがトヨタ生産方式です。トヨタ自動車を分析したアメリカの学者がその強さを「リーン」という一語で表現しました。リーンとは、英語でぜい肉のないすっきりとした体という意味です。ぜい肉すなわち無駄を徹底的に省いて最大の生産効率を求める改善活動をエンドレスに行っていく、それも現場の隅々の作業者一人一人のマインドにまで改善意識が浸透している、その高い生産性と競争力を見習って、現在では多くのアメリカの企業がこのリーン経営への改善活動に取り組んでおります。
私も前の会社で工場のリーン改善活動のプロジェクトリーダーを務め、さまざまな業務の改善を実行してきました。それこそ作業の詳細な手順から製造ラインのレイアウトに至るまで、無駄がないか、合理化できるところはないか、工程分析をしながら徹底的に改善を進め、結果、大幅に生産効率を高めた経験があります。
こういったシビアな改善に対する姿勢は、これからの行政、自治体にも非常に大切なことだと思っております。当区の行政運営の方向性としましては、行政サービス民間事業化提案制度の本格実施による新たな公共空間としての協働化ではありますが、そういう時代である今だからこそ、行政側に最高水準の効率的なサービス運営を目指していくという姿勢が必要なのではないでしょうか。民間との相乗効果を生み出すためにも、無駄を徹底的に排除するリーンオペレーションを、行政の運営にもぜひとも取り入れていただきたいと思っております。
また、今さら申し上げるまでもないかもしれませんが、地方自治法の第二条十四項にも、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」とあり、リーンと合致した理念をうたっております。そのためにも行政サービスの運営をQDC、クオリティー、デリバリー、そしてコスト、この三つの方向性に具体的な指標を設け、PDCAサイクルで継続的に向上させていく仕組みを構築することが重要であると思います。
こういった業務改善活動に民間の手法を取り入れ、積極的に取り組んでいる自治体に岩手県庁があります。岩手県庁は、いわてマネジメントシステム(IMS)というプロジェクトを立ち上げ、全庁を挙げて改革・改善活動を推進しています。
IMSは、トヨタ生産方式での無駄を顕在化させる手法や改善の考え方、進め方などを十分に活用しながら、副知事をトップとしたIMSクロスファンクショナルチームを中心に、全庁的に活動を展開しています。平成十七年度、十八年度と全庁で大幅な業務時間短縮の実績を上げています。また、現場職員から毎年多数の業務効率化のための改善提案が出され、実際に実行されています。まさにボトムアップ型の全庁一丸となった改善の機運が構築されております。
その上で質問です。我が杉並区におきましても、民間企業の業務改善手法を積極的に取り入れ、業務の効率化が杉並区の競争優位となるぐらいのオペレーショナル・エクセレンスを追求されてはいかがでしょうか。
また、それぞれの事業で効率を高める独自の管理指標をPDCAサイクルで向上させていくマネジメントシステムを設けてはいかがでしょうか。
さらには、徹底した業務改革の機運を全庁的に広めていくために、トップマネジメントに直結した業務改革チームをつくって改革を推進していけばよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
一方、当区では、業務の原価を間接費までより正確に分析し、活動単位でコストを把握するという目的でABC分析、アクティビティー・ベースト・コスティングが二〇〇三年より公表されております。スポーツ振興財団事業、広報紙の発行、給与、福利事務など、これまで十一事業、十二回のABC分析が行われてきました。これらのABC分析の内容は、その後の業務の効率化に関してどのように活用されてきたのでしょうか。これまでのコストダウンに向けての改善の取り組みの状況をお伺いします。
情報システムの合理化と電子自治体推進:オンライン化とGIS導入
次に、IT、情報システムの合理化について質問をします。
このテーマにつきましては、これまでも当会派の議員からさまざまな場で質問をさせていただいておりますが、その延長線上として、最新の状況をお聞かせいただければと思います。
ICT(情報通信技術)は、業務の効率化や区民サービスの向上に欠かせないツールであります。したがい、当区の情報システムの合理化やIT戦略は、オペレーショナル・エクセレンスへの業務改善と整合していくことが必要不可欠であると考えます。杉並区としては、杉並区情報化アクションプランで二〇〇五年度から本年度までの情報化の計画を定めております。現在は来年度以降の新たな計画を作成している状況だと思います。
一方、我が国の政府におきましては、本年三月に新電子自治体推進指針を発表しました。この指針では、二〇一〇年度までに利便、効率、活力を実現できる電子自治体を実現するということを大きな目標としています。住民の視点と費用対効果の視点に立った上で、住民の利便性の向上、ITの積極活用による効率的な行政、ICTの活用による安全・安心や子育て、高齢者福祉などの地域の課題の解決などを目標として掲げております。
そこで、当区の情報システムの現状が政府の指針とどういう位置関係にあるのか確認するため、この新電子自治体推進指針に基づいて何点か質問をさせていただきます。
指針では、利便性向上のため行政手続のオンライン化を促進していくことを実践目標としていますが、当区の行政手続のオンライン化への取り組みはどうなっているのでしょうか、状況をお聞かせ願います。
指針では、地理情報システムである統合型GIS(ジオグラフィック・インフォメーション・システム)導入についても触れています。統合型GISは、道路、建物、河川など複数の異なる地図データを一つのプラットホームに乗せ、庁内横断的に、福祉、防災、環境などさまざまな情報発信、政策判断などに活用できるツールでございます。杉並区では、庁内GISを近々導入する予定があるとの答弁が過去にされていますが、統合型GISの導入に関する現在の進捗状況をお聞かせください。
また、指針では、組織全体を通じた業務とシステムの全体最適化の推進、すなわちEA(エンタープライズ・アーキテクチャー)を進めています。現在当区は、ホストシステム、サーバー系LANのシステムが混在している状況を将来的にネットワーク化していく予定とのことですが、今後のシステムの管理の計画についてお聞かせください。システムの全体最適化、EAの計画はあるのでしょうか。
ITガバナンス体制の強化と新技術活用戦略
次に、ITガバナンスの体制について質問します。
複雑化している情報システムの管理をしていくためには、やはり投資効果の判断も含めて、高度な情報化政策の知識とテクニックを備えている人や組織の活用が課題となります。当区の現在の情報システムの統括や責任は、過去の答弁によれば、区長、副区長、政策経営部長、行政管理担当部長の四人がそれぞれの役割に応じて分担しているとのことですが、今後は、将来の区役所のあるべき姿や電子自治体の構想も加味しながら戦略的に検討していくCIO、CIO補佐官、または専門チームを設置してはどうでしょうか。必要であれば、三鷹市のような情報政策コーディネーターを外部から招聘することも検討されてはいかがでしょうか。
また、ウエブ二・〇の言葉に代表されるように、利用者参加やオープン志向という最近の情報通信技術は、新しい流れが出てきております。その中でサービス・オリエンティド・アーキテクチャー(SOA)、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、またブログ等の新しい情報通信技術が出てきておりますが、こういったものを今後当区のIT戦略においてどう活用していく予定なのか、ご所見をお聞かせください。
続いて二番目のテーマ、地球温暖化への対策についての質問に移ります。
地球温暖化対策の進捗と家庭・業務部門のCO2削減
先日、ドイツのハイリゲンダムで開催されたサミットでは、気候変動問題が最大のテーマとなりました。気候変動問題に対する日本の新戦略が提案され、そしてサミット参加各国の首脳の間で、世界全体の温室効果ガス排出量を二〇五〇年までに半分以上削減することを真剣に検討するということで合意が得られました。また、来年日本で開催される洞爺湖サミットでも、環境気候変動が主要課題として取り上げられる方針が明らかになっています。まさにこれからの世界的な温暖化対策のリーダーシップは日本がとっていくという明確な意思表示が世界に発信されています。
そのような状況下、環境基本計画で環境先進都市を目指すと宣言している我が杉並区としては、日本の中でもトップレベルの対策を講じていかなければなりません。地球温暖化という問題に対して、当区では、杉並区地域省エネ行動計画を区民、事業者、業者の三者共同の実行計画として、昨年六月に策定しております。同計画では、平成二十二年度までに平成二年度比で二%のCO2排出の削減を目指しています。これは国のチーム・マイナス六%よりも厳しい目標です。
そこで、まず総括的にお伺いしたいのですが、省エネ行動計画策定から一年たった今、計画の進捗は今どのように評価されているのでしょうか。CO2排出量削減効果の最新のデータとともにお聞かせください。
ところで、同行動計画を読んでも、計画にあるそれぞれの施策を実施した場合に二%のマイナスという目標が達成できるという数量的な根拠がいま一つ見えてこない、いささか総花的なことが書かれている、そのような印象を持ちます。
一方、区役所単体としては、杉並区地球温暖化対策実施計画第二次によると、平成十七年度でCO2排出量削減の目標を達成しています。区役所としては平成十七年度の実績で一千二百七十トンのCO2を削減し、それが九千六百十八万円のコスト効果があったとのこと。それはすばらしいことですが、区役所のCO2排出量は平成十七年度で二万二千四百九十七トン、一方、省エネ行動計画の杉並区全体としての平成二十二年の排出目標は百三十九万四千トンです。幾ら区役所が順調に目標を達成しても、杉並区全体から見れば一・五%程度で寄与率が非常に低い。したがって、区役所以外の部分で結果を出さなければ、省エネ行動計画の実現は難しいことは明白です。区役所としてのCO2排出量削減の成功には、ISO14001の環境マネジメントシステムが功を奏したとの評価があります。そうであるならば、今度は杉並区全体をカバーする行動計画の各施策の達成状況についても同様にきめ細やかにチェックし、四半期ごととかの短期間でモニターしていくPDCAサイクルのマネジメントシステムを設けてはいかがでしょうか。
続いて、全体の排出量の四〇%以上を占める一番大きい家庭部門に関してお聞きします。
杉並区の高い目標達成のためには、各家庭での努力が非常に重要であるにもかかわらず、そのことが区民広くにはまだまだ浸透していないのではないか、私個人としてはそう感じております。家庭部門への啓発事業は充実しているとお考えでしょうか。計画では、普及活動として総合相談窓口エネルギーカフェと専用ウエブサイトの立ち上げを検討しているとのことですが、それらの進捗状況はどうなっていますでしょうか。また、窓口カフェにしても専用サイトにしても、立ち上げることが目的ではなく、結果が重要であると思いますが、それらの施策への目標達成への効果は期待できるのでしょうか。
さらには、家庭部門の次に割合が大きい業務部門、すなわちオフィスや店舗における対策の進捗状況についてお聞きします。
各事業者に対する啓発作業は普及しているのでしょうか。また、ISO14001、エコアクション、エコステージなどの環境マネジメントシステムの認証取得の状況は現在いかがでしょうか。現状をお聞かせください。
区施設における省エネ設備導入と自然エネルギー活用
最後に、区役所や区の関連施設での大幅な省エネ設備や自然エネルギーの導入についてお伺いします。
先般、環境配慮契約法が成立しました。この法律の制定により、国や自治体が物品やサービスを購入する際、価格だけではなく、温室効果ガスの排出削減効果も考慮して契約を結ぶことが義務づけられるとともに、エネルギー回収事業の債務負担行為の期間が十年まで延長されました。これにより、ESCO事業等の長期契約による大規模な環境側面での回収が可能となります。杉並区としては、この契約法の制定を受けて、ESCO事業の活用も視野に入れながら、庁舎や区の関連施設の大幅な省エネ設備や自然エネルギーの導入等に取り組んでいくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
地球温暖化対策は待ったなしの状況です。この問題に対して、杉並区としても速やかにかつダイナミックに対策を講じていくことを強く望みます。
終わりに、世界的な市民運動をリードしているアメリカの未来学者ヘーゼル・ヘンダーソン博士の言葉を紹介して、私の質問を終了させていただきます。
「とても一市民の力では不可能だと思えるようなことでも、皆が力を合わせて取り組めば必ず道は開けてきます。どんなに目の前の壁が厚く見えようとも、ドアは必ずどこかにあるものです。だから決してあきらめてはいけません。」
以上で私の一般質問を終了します。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(山田 宏)登壇〕