平成23年9月8日 第3回定例会

歯科口腔保健推進法の施行と杉並区の歯科医療施策

中村 康弘

本日は、杉並区議会公明党の一員として、歯科医療について、また精神疾患に対する保健福祉施策について、質問を行わせていただきます。
 歯科口腔保健の推進に関する法律が本年8月2日衆議院本会議にて全会一致で成立、8月10日より公布、施行されています。同法は、国民の歯科口腔の保健に関連するものとしては初めて制定された法律であり、歯科口腔の健康について、「国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしている」と位置づけるとともに、「国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取組が口腔の健康の保持に極めて有効」であり、国民の保健の向上に寄与するものとしています。
 第2条では3つの基本理念が示されています。1つは、歯科疾患について、生涯にわたって日常生活において予防に向けた取り組みを行うとともに、早期に発見し、早期に治療を受けることを促進すること。2つ目は、乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における口腔とその機能の状態及び疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進すること。そして3つ目は、保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、その関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進することとされています。
 本区においてはこれまでも、関係団体と連携をとりながら、かかりつけ歯科医の普及やまた10月より新たな体制となる区立歯科保健医療センターの機能強化を中心に、歯科保健に関する施策を推進してきました。今回の法律が制定されたことにより、本区の保健福祉施策において歯科医療がより明確に位置づけられ、総合的、重層的、多角的な事業の展開が望まれます。区の認識を伺います。
 基本理念の第1が日常的な歯科疾患の予防であり、早期発見・早期治療であります。歯の健康は実は体全体の健康と深くつながっており、動脈硬化や心臓病、糖尿病、肺炎、骨粗鬆症等、さまざまな全身疾患の症状抑制や予防との関係性が指摘されています。すなわち、全身の健康を保つためにも歯の健康を保つことが大切であるとのことです。一方で、近年、生活習慣の変化からか、歯周病にかかる人の低年齢化が進んでいるとの専門家の声もあります。
 これらの状況をかんがみ、本区がこれまで推進してきた成人歯科健診事業のさらなる充実が望まれます。現在20歳から50歳まで5歳刻みで、その後は60歳、70歳の区民を対象に、6月から11月までを受診期間として実施されていますが、これらを5歳刻みではなく、できれば毎年受診可能に、また受診期間を延長するなど拡充していく中で受診率の向上を図り、歯周病予防の強化に努めていってはどうか、区の所見を伺います。
 基本理念の第2は、乳幼児から高齢者まで、人生の各ライフステージに沿った適切かつ効果的な歯科口腔保健の推進です。お母さんの妊娠・出産の前後に健診を通して歯科疾患の早期発見と予防を行うことは、母体の健康のみならず、胎児、乳幼児の健康にとっても大変重要とされています。
 本区における妊婦の歯科健康診断については、これまで保健センターでの母親学級の中で行っていたものが、今年度より、健康と医療・介護の緊急推進プランによって、身近な歯科医でも気軽に受診できるようになりました。この改善は評価するところでありますが、今後については、妊婦のみならず、少なくとも産後1年未満までを含む妊産婦を対象とすることを提案したいと思いますが、区はいかがお考えでしょうか。
 区立小学校における給食後の歯磨き推進運動と洗面環境の充実についても伺います。
 平成21年に区立小学校2校において、歯みがき推進モデル校として専用の洗面台の設置が行われました。給食後の歯磨き実施計画及び洗面環境に関するデザインは、学校歯科医会の要望を加味した上で、実情に合わせてそれぞれの学校の養護教諭により策定をされました。児童、保護者、教員からも非常に好評との知らせも受けています。この取り組みはこれまで5校まで拡充されてきましたが、児童の健康推進のためには、この歯磨き推進運動と洗面環境の充実をさらに進めていくべきであると考えますが、区の認識はいかがでしょうか。
 高齢者にとっても口腔の健康は大切な問題です。例えば、私は昨年の決算特別委員会でも質問しましたが、高齢になると嚥下、飲み込みの反射が鈍り、口腔内の細菌が唾液や胃液などにまじり肺に誤って流れ込み、結果、誤嚥性肺炎が発症することがあります。そして、そのことにより多くの高齢者が命を落としているという現状があります。高齢者の歯科健診については、歯周病予防だけではなく、専門家による義歯、入れ歯の洗浄も必要であります。
 このような高齢者に対する口腔ケアは、在宅歯科医療の推進を通して充実していくことと思います。本区では7月より在宅医療相談調整窓口を開設しました。この窓口は、地域の訪問医師や看護事業、さらには介護や福祉の情報を提供、関係機関との調整などを行う中で、安心・安全な在宅療養を推進する機能を持っています。在宅歯科医療の充実についても、この調整窓口が、歯科医師会、医師会、薬剤師会に加え、ケア24、介護事業者などの連携を図る調整の中心的な役割を担うことが期待されます。まさに法の基本理念の3点目である保健、医療、福祉などが連携しながら総合的に歯科口腔保健を推進していくためにも重要な役割であります。区の認識を伺います。
 歯科口腔保健に関する知識等の普及啓発についても伺います。
 法の第7条では、国民の口腔内の健康を保つ予防に関する知識の普及啓発、また、その意欲向上に向けた運動の促進などに取り組むことが国及び地方公共団体の責務とされています。本区のこれまでの普及啓発の取り組みをお示し願います。
 また、杉並区歯科医師会が主催し、食育や歯科医療あるいは医療分野の著名な専門家などを招致して、杉並区民健康講座が杉並公会堂などにて2年に1回程度の単位で開催されていますが、区としてもでき得る限りの支援を行うべきであると考えます。区の所見を伺います。
 続いて、精神疾患に対する保健福祉施策についての質問に移ります。

精神疾患の5大疾病化と杉並区の保健福祉施策

中村 康弘

 この7月、厚生労働省は、医療対策としてこれまで重点的に取り組んできた、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病の4大疾病に、新たに精神疾患を追加して5大疾病とする方針を決めました。平成20年に行われた国の患者調査によりますと、4大疾病の患者数は糖尿病237万人、がん152万人、脳卒中134万人、心臓病81万人となっています。これに対し、うつ病や高齢化による認知症など精神疾患の患者は合計で323万人と、4大疾病の患者数を大きく上回っています。
 特にうつ病患者数においては104万人と最も多く、この10年間で約2.4倍と大きく増加、また、このような統計にあらわれない未受診の有病者数が約250万人とされており、まさに現代の国民病とも言われる病気となっています。厚労省が今回精神疾患を加える方針を決めたのは、こうした患者数の増加とともに、13年連続で3万人を超えている自殺者の約半数がうつ病などの健康問題によるなど状況が深刻化していることから、対策の強化が必要との判断に至ったとされています。今回の厚生労働省の方針決定を受けての区の感想、今後期待される動向について所見を伺います。
 本区の精神疾患に対する取り組みとしては、保健福祉計画では、心の健康づくりとして、(1)、うつ病対策の強化、(2)、精神疾患の正しい理解に向けての普及啓発、(3)、心の健康相談の充実、(4)、地域支援ネットワークの整備、を重点課題として取り組んできました。特にうつ病対策の強化では、うつ病に関する普及啓発の強化、早期発見・早期対応の推進、家族への支援の充実と、3つの重点的な取り組みを定めています。これは25年度までの計画ですが、現時点におけるこれらの達成状況をお聞かせください。
 精神疾患に対する社会のニーズが急増している一方で、地域における精神科の医療や患者等への支援体制について、現状どのような課題があるのか。この点については、東京都地方精神保健福祉審議会が昨年12月に取りまとめた「精神科医療体制の整備に向けた今後の検討の方向性」によると、日常の診療体制においては発症から精神科医療機関の受診にまで時間を要している、精神症状のある一般診療科の患者への適切な精神科医療の提供体制が不十分、地域で患者を医療につなぐための医療連携が十分でないなどの課題があり、救急医療の体制においては、地域で患者を受けとめる医療基盤がない、また精神身体合併症患者の受け入れが困難な状況であるなどの問題があります。
 また、地域における患者の生活を支援する体制では、受診に応じないなどの深刻なケースへの介入支援体制の整備や保健医療と福祉の連携の問題、地域において訪問にも対応できるチーム医療・ケアの担い手が少なく、かつ連携が不十分などの課題があるとされています。
 それでは、本区においては、二次医療圏内あるいは近隣自治体を含めた周辺地域の精神医療に関する診療、救急医療、生活支援のこれらの体制について、どのような現状の認識をお持ちでしょうか。東京都では平成20年度より、うつ診療充実強化研修事業という、東京都医師会に委託をし、うつ病診療の知識や技術、精神科専門医との連携方法をかかりつけ医に対して研修を行うことにより、早期発見、適切な治療を行えるよう体制を整備する事業に取り組んでいます。これまで新宿や八王子市など19の地域で実績があり、本区の医師会も22年度に取り組みを行っています。
 そのほかにも、地域の関係医療機関の連携体制を構築する地域精神科医療ネットワークモデル事業もありますが、このような事業を、本区においてもこれからも積極的に取り組むべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 相談体制について伺います。区の保健所、保健センターでは、心の健康づくり、精神疾患の予防及び早期治療の促進、精神障害者の社会復帰の支援などを目的として、区民に対する精神保健相談を日常的に行っています。21年度の実績では、保健師による訪問相談の実数が680件、訪問延べ数1,654件、訪問以外のすべての相談合計数が1万4,382件と、日常的に大変多くの相談が寄せられております。保健所、保健センターにおける精神保健相談の資質の維持向上に向けた研修等の取り組みや今後の課題について、区の認識を伺います。
 また、東京都立中部総合精神保健福祉センターにおいて、アウトリーチ事業という、医師や保健師、看護、福祉、心理などの専門家によるチームを編成し、訪問を行いながら支援や治療につなげていくという事業が、本年度から正式にスタートしています。このような事業を十分活用することでも本区の相談事業の体制が充実していくと考えますが、所見を伺います。
 患者の家族への支援について伺います。
 私は、月に1回のうつ病患者の家族会の会合に時々出させていただいており、患者家族の生の声を伺っています。働き盛りの家族が突如として病に倒れ、なかなか出口の見えない回復への道のりを、家族一体となってこの病気と闘っている様子を伺いながら、でき得る限りのサポートをしていきたいという思いです。現段階での区としての家族への支援の状況をお聞かせください。また、さらなる充実を求めたいと思いますが、区の見解を求めます。

認知行動療法の普及と精神疾患患者の社会復帰支援

中村 康弘

 最後に、認知行動療法について伺います。本件については過去にも我が会派から質問いたしましたが、対面式のカウンセリングで行うこの精神療法は、患者との対話を通して、否定的な物事のとらえ方や行動の癖を肯定的に修正することで認知のゆがみを矯正していくものです。うつ病治療は現在薬物療法が中心に行われていますが、薬物だけに頼らない同療法の普及が期待されるところです。
 私はこの夏、日本における認知行動療法の第一人者とも言える精神科医の仲本晴男氏が所長を務める沖縄県立総合精神保健福祉センターを訪問してきました。同センターでは、平成17年から認知行動療法を中心としたうつ病デイケアを実施しており、目覚ましい成果を上げています。客観的評価や自己評価において、デイケア通所者の約9割が症状の改善を見せており、企業で働いている方たちの復職を支援するための企業連携コースでは、修了者の約6割が復職もしくは就業可能な状態になっています。
 しかし、この認知行動療法については、昨年4月から医療保険が適用されるようになったものの、東京都内においても実施医療機関はまだまだ限られており、区民への普及はこれからという状態であります。以前、区は、認知行動療法が行える医療機関の情報収集を行い、その情報を保健センター等を通じて必要な方に適時適切に提供できるよう取り組む、そういった旨の答弁をされておりますが、その後の進捗・取り組み状況を伺います。
 また、さきの都立中部総合保健福祉センターでも、うつ病を初め広汎性発達障害や統合失調症の方を対象に、復職や就労、就学に向けての支援を疾患別、目的別に行う精神科デイケアの中で認知行動療法を取り入れています。このセンターにも先日視察でお邪魔をし、プログラムの内容や実施状況などについて説明を受けてきました。緻密に組まれたプログラムに大変感心しましたが、一方で、そもそもこうしたトレーニングの場にいかにして患者を送り出し、修了ができるまで継続的にサポートをしていくか、いわゆる橋渡しを行う人の存在が不可欠であると強く感じました。
 改めて伺いますが、本区の精神保健相談でこうしたプログラムに関する情報提供、連携にとどまらず、実際の治療やトレーニングへ参加、通所を促し、最終的に社会復帰ができるまで粘り強く支援を行っていく、そういった機能の強化にさらに取り組んでいってはどうか、区の所見を伺います。
 以上、歯の健康、心の健康の促進を通して、杉並区が命と健康を守る施策に一層取り組まれることを期待しまして、私の一般質問を終了いたします。
 ありがとうございました。

答弁

議長(藤本なおや議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
      〔区長(田中 良)登壇〕