フェーズフリー防災の推進と区立公園・学校の防災機能強化
杉並区議会公明党の中村康弘です。通告に従い、防災について質問を行います。
地域の防災対応力の強化、区民の防災意識の向上、総合計画で掲げられている目標です。その施策指標は、区民意向調査による災害時に備えて家庭内での対策を行っている区民の割合とされ、令和2年度の91.3%から、6年度に98%、9年度に100%に引き上げる計画としています。既に9割以上の人が何らかの備えを行っているという高い防災意識が示されています。
区民意向調査での推移は平成29年度まで下降傾向にありましたが、同年の83.9%以降は、87.4%、89.6%、91.3%、そして昨年度は91.6%と着実に上昇しています。区は、この数値の背景についてどのように分析しているのでしょうか。また、令和6年度に98%という目標には、今後取組を大きく強化するか、より効果的な方策を実施するなど、さらなる対策が必要になると思われますが、所見を伺います。
川の土手の桜の話を紹介したいと思います。全国各地で見られる川沿いの桜並木は、江戸時代に水害対策を目的に整備された桜堤の名残でもあります。川の土手に多くの人が花見に訪れ地面が踏み固められることにより堤防が頑丈になり、さらには危険な箇所や補修を必要とする箇所が発見されやすくなることも計算に入れていたとされています。花見客は、桜を楽しみながら無意識のうちに土手の決壊防止に貢献していたのです。
今、フェーズフリー防災という考えが注目を集めています。これは、桜堤のように平常時と非常時という2つのフェーズをフリーにする、取り除くことで、自然のうちに防災の行動へと向かわせることを意図した災害対策です。東洋大学大学院の岩岡博徳教授は、防災意識を災害の悲劇や被害の周知を通して個人の意識に頼るという対症療法ではなく、人は日常時には非常時を十分に想像することができないという前提に立つのがフェーズフリーであると説明しています。この考えは、既に様々な製品やサービスに展開されており、一般社団法人フェーズフリー協会がフェーズフリーアワードとして、コンセプトに合致し優れた製品、サービスを選定、表彰し、普及に努めています。
議長、ここで資料の提示、よろしいでしょうか。
例えば、今私の手首に着けているのはウェアラブルメモといい、フェーズフリーアワードを受賞しました。これはリストバンド型のメモで、素材にシリコンを使っているため耐久性に優れ、水に濡れてもボールペンで書いた文字が消えません。逆に、指で強くこすると消せるので、何度でも使用することができます。災害時、避難時、あるいは日常で何らかの紙が使いづらい状況下でもメモを取ることができます。つけ外しも簡単です。また、アワードには止水機能を有したガーデンチェアも選ばれています。止水設備としては土のうがありますが、水害の時にしか用がなく、むしろ日常は景観を損ない置き場所にも苦労します。止水チェアは、日常時には椅子、テーブル、傘立てとして使え、実用的なエントランスファニチャーであり、水害発生時には土のうの役割を担います。ほかにも、6リットルのバケツになる超撥水性のショルダーバッグ、懐中電灯になるデスクライト、目盛り付デザイン紙コップなど、多くのフェーズフリー製品が商品化されています。
現在、区が行っている防災用品のあっせんでは、消火器、災害時のトイレセット、エマージェンシーブランケット、非常持出袋、保存食、非常食等、多岐にわたりリスト化されておりますが、ふだんはしまわれているものがほとんどです。また、区では在宅避難に備えてローリングストックなど、ふだんとなるべく変わらない生活ができる備蓄についても呼びかけてはいますが、日常使わないものにお金や手間をかけることに正直ちゅうちょしてしまう方も少なくないのではないでしょうか。
そうした意味からも、フェーズフリー防災は防災意識の裾野を広げていくアプローチとして一定の意義があると考えますが、所見を伺います。
豊島区のとしまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)もアワードを受賞しました。この公園は区内最大の芝生広場であり、利用者の憩いの場やファーマーズマーケットなど多彩なイベント空間としてにぎわいをもたらしております。災害時には、地域住民や帰宅困難者の一時避難場所となり、その後は救援物資の集積・集配所として機能することが計画されています。広場の中央にはヘリポートが整備され、大型トラックによる救援物資の搬入や重症患者の搬送等を可能とするため、園路には耐圧路盤が整備されています。木造住宅密集地域に面した側には防火樹林帯が配備され、飲料用応急給水槽や防災井戸、非常用発電設備、非常用トイレ、防災倉庫が整備されています。地域のにぎわいと防災機能のフェーズフリーの空間を実現させたことが受賞理由となっています。
本区の区立公園では、桃井原っぱ公園、井草森公園、蚕糸の森公園、柏の宮公園が災害時の広域避難場所に指定されており、防災機能が備わっています。改めて、これらの公園の防災機能の概要についてお示し下さい。また、それ以外で防災機能がある公園はどこか、それぞれの特徴と併せてお示しください。
さらには、区内には350もの公園がありますが、その規模や立地等は多様です。被災時には各地域においてニーズや局面も随時変化すると思いますが、より効果的な公園の防災機能の配備を検討していただきたいと考えます。区立公園の防災機能について、区はどのような考えなのか、伺います。
フェーズフリーを学校での防災教育に活用している事例もあります。徳島県鳴門市教育委員会では、フェーズフリーの考え方を防災教育に取り入れたガイドブックを作成しています。毎日の学校生活において、子供たちが災害をより身近なもの、生活に即したものとして学び、災害対応力を高めることを目指しています。
ガイドブックには、具体的な実践事例が紹介されています。例えば、小学5年生の算数の授業では、秒速10メートルの津波の速度と自分の50メートル走のタイムを比較しながら速さの計算を学び、全速力で走っても津波には追いつかれてしまうことを知ります。同じく算数の同じ数ずつでは、避難所での食料の分配や東日本大震災の時のエピソードを紹介した発展問題を学習します。また、中学の保健体育では、被災時や避難所生活等での心情を想像することを通して、心の不安定さへの学びを深めています。鳴門市教育委員会は、防災を特別なこととせず、子供たちの学力向上と生き抜く力、主体的に防災に対する姿勢を育成していくとしています。
本区の区立学校における防災教育のコンセプトと実施状況について確認します。また、鳴門市のように日常の学校生活や学習に則して防災教育を行っている事例について、区教委の所見を伺います。
ちなみに、今年はNECのスマート街路灯もフェーズフリーアワードを受賞しました。同社のスマート街路灯は、本区においてもIoT街路灯システムとして実証実験を経て、昨年8月から本格運用されています。区のIoT街路灯は、管理クラウドシステム、カメラ、冠水センサー、そして通信装置で構成され、リアルタイムの河川映像の配信や水防活動に活用されております。この製品は、日常時においても住民サービスやまちづくり等、有効に活用できる可能性があると思います。今後の展開に期待したいと思います。
被災時生活再建支援と罹災証明書発行迅速化、ICT-BCPの強化
次に、被災時の知識の備えと生活再建支援について伺います。
熊本地震の際、日本弁護士連合会が行った1万2,284件の被災者の無料法律相談の内容分析によると、不動産の賃貸借の相談が全体の20.3%、工作物責任、相隣関係が15.4%と住居等の損壊に関連する相談が1位、2位を占め、そのほか、住宅、車等のローン、リースに関するものが13.7%、公的支援、行政認定等に関するものが12.4%とのことでした。自宅が全壊してしまったが住宅ローンが数千万円残っている、借りていたアパートが一部損壊したが家主による修繕が期待できない、家族が亡くなってしまったが生命保険金などがなく家計が厳しくなってしまった、職場が閉鎖され当面の収入が見込めないなど、私たちの周りで大規模災害が発生した場合、多くの人々が生活上の重大な危機に直面することが予想されます。
法律相談に応じた弁護士は、絶望のふちから希望を持って生活再建に進むには、必要とされる解決方法や制度についてふだんから知っておくことの大切さを訴えています。例えば、通帳やカードを紛失しても、災害時の金融上の措置により預貯金の引き出しが可能であること、家の権利証がなくなっても不動産取引はできること、また、被災ローン減免制度、災害弔慰金、災害援護資金の貸付け、被災者生活再建支援金、災害時ADR制度など、生活再建に関わる法律や制度は多岐にわたります。
被災者の生活再建に必要と思われる情報を、例えばQ&A形式にして区の防災関連のホームページに掲載したり、小冊子を発行するなどして日常から区民が一定のリテラシーを身につけることが有益と考えますが、区の考えはいかがでしょうか。
続いて、罹災証明書発行の迅速化について伺います。
罹災証明書は生活再建への第一歩と言われ、速やかな発行が求められます。一方で、自治体は災害時の混乱の中で多くの罹災証明の申請を受け付け、被害認定調査から発行まで一連のプロセスを経ることになります。熊本地震を経験した益城町では、1次調査だけで1か月以上を要し、職員の経験差によって被害判定に違いが生じたことなどから、2次調査希望のケースが40%を超え、調査終了までに半年以上を費やしたとのことです。
本区では、被災者生活再建支援システムの導入や、行政書士や不動産鑑定士と協定を結ぶなど、迅速な罹災証明書の申請、調査、発行につなげる仕組みを整えてきました。さらなる迅速化に向けてマイナポータルを利用した申請や、民間事業者との協働についても検討が現在進められております。一方で、ドローンの空撮画像による被災状況の把握やAIによる画像解析等のデジタル技術の活用などについて事業者と共同研究を行い、さらなる効率化と迅速化を検討している自治体もあります。
改めて、本区における罹災証明書の申請、調査、発行の各プロセスにおける迅速化への取組状況を確認いたします。また、今後はデジタル技術等の活用も検討していただきたいと考えますが、所見を伺います。
災害時の情報システムの対応、ICT-BCPについて伺います。
東日本大震災では、多くの自治体で被災により住民情報データの喪失や通信手段の損壊が発生しました。情報システムに関する資源の喪失は、災害時の初動や復旧復興段階における対応に大きく影響することから、区ではICT部門における業務継続計画、ICT-BCPを策定しています。本区のICT-BCPは、BCP(震災編)を基に、災害対策本部が行う251業務と、災害時でも優先すべき57の業務の執行を確保するべく、全庁的なICTインフラ資源の運用体制について対策や方針を定めております。被害想定に基づいて、本庁舎の被害、電力供給、緊急対応要員の参集等について、詳細にシミュレーションを行った上での計画となっております。
混乱なくBCPの業務を遂行するためには、保有するデータが安全に確保され、災害時でも正常に運用されなければなりません。区では、住民情報系システムを再構築し、昨年よりクラウドサービスによるデータセンターのオープン系システムを使用しておりますが、バックアップデータの保存や災害時のデータセンターの運用体制等はどのように保障されているのでしょうか。また、災害時における情報システム部門の運用体制はどのように規定されているのか、伺います。
また、住民情報系システムは、国が進めている地方公共団体情報システムの標準化に基づき、令和7年度からの運用を目途に、再々構築に向けて調査検討が進められております。標準化されることにより、災害対策への対応やICT-BCPへの影響はどのように変化することが考えられるのでしょうか、確認いたします。
また、区ではデジタル化推進計画第1次を本年度より開始し、既存の業務やサービスをICT化、デジタル化へと業務改革していくことを進めております。その中には、AIやRPA等の自動化ツールの導入や、ICTの活用による災害情報の収集、発信、デジタル技術を活用した水防情報の提供、地域BWAの促進等、災害時の初動体制に大きく関わるデジタル化も数多く含まれています。災害時にICT環境を確保することの重要性が日々増していると言えるでしょう。
現在のICT-BCPの対象範囲は、庁舎内の情報政策課の執務室やコンピューター室内の各種機器やサーバー、各フロアのネットワークや端末、ファシリティー関連、周辺機器に限定されておりますが、対象範囲については見直す必要があるのではないでしょうか。また、デジタル化と連動したICT-BCPの更新や担当者への訓練等も速やかに行う必要があると考えますが、所見を伺います。
また、デジタル化推進計画では、情報セキュリティーに何らかの事故等が発生した場合に状況を調査し対応を行う体制、コンピューター・セキュリティー・インシデント・レスポンス・チーム、CSIRTについての記述があります。このチームの構成、役割について確認いたします。自然災害においても情報セキュリティーに絡むインシデントの発生が考えられます。しかし、ICT-BCPにはCSIRTの記述がありません。ICT-BCPとCSIRTの関係性について、そしてBCPの想定事態下におけるこのチームの役割について、説明を求めます。
区財政の災害対策基金:実効性向上とフェーズフリー化の検討
最後に、区財政の災害対策として、基金積立による財政のダムについて伺います。
区がこれまで行ってきたコロナ対策の経験から、非常時の緊急対応に財政のダムが重要であることが証明されました。財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方では、阪神・淡路大震災で被災した兵庫県西宮市の事例から、災害への備えを150億円と設定しております。これは30年近い前の事例に基づいて算出したものであり、今の時代における物価、社会インフラ、行政需要等に対しての実効性が不明です。現在の状況を基準に再検討するべきではないでしょうか、所見を伺います。
ただ一方で、財政のダムは、あくまでも非常時への備えです。災害等が起きなければ多額の資金を眠らせているのが実態であり、積み立てることの価値が日常では見えにくいとも言えます。そこで、財政のダムのフェーズフリー化ができないものかと考えます。財政調整基金の令和2年度末積立残高は408億円、令和3年度末は485億円でした。それぞれの年度における積立基金全体の運用利回り実績は、令和2年度は0.044%、令和3年度は0.063%で、単純にそれぞれの年度末残高を掛けると令和2年度は1,800万円程度、令和3年度は3,000万円程度となります。現状では、運用益は基金に編入され、また運用益5%相当額を次世代育成基金に繰入れすることになっています。したがって、低金利とはいえ、この積立てを行うことで、実態として財源確保にも貢献しています。私は、このことをもっと可視化してはどうかと考えます。
例えば、財政調整基金の運用益相当分について、次世代育成基金へ繰入れする割合を増やしたり、防災・減災関連の事業を充実させる財源に充当するなど、財政のダムを構築することによる現在の便益が理解、実感できる仕組みであります。
最後にこの点について区の所見を伺って、私の質問を終わります。ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
危機管理室長。
〔危機管理室長(寺井茂樹)登壇〕