令和6年6月4日 第2回定例会

地域公共交通計画とMaaS実装の具体像

中村 康弘

おはようございます。杉並区議会公明党の一員として、地域公共交通について、住宅施策について質問を行います。
 昨年3月に策定された杉並区地域公共交通計画で、区長は、今後の20年、30年先を見据え、区の魅力を持続可能かつ発展的に高めるために、交通をまちづくりのダイナミズムを支える軸として位置づけると述べています。そのような意義を踏まえながら、本日は、同計画の中の施策4-2、MaaSの実装と自動運転技術の活用検討について、1、交通事業者等のプラットフォームを活用したMaaSの実装、2、オープンデータの整備・活用、3、都市OSを見据えた交通のデータ整備とその他各種データとの連携、4、自動運転技術等の実証実験の取組について質問いたします。
 まず、施策の中心に位置づけられているMaaS(Mobility as a Service)について伺います。
 先日、杉並区産MaaSシステム構築等業務委託事業者の公募があり、現在選定作業が行われております。公募要領では、MaaSを基軸として、移動から派生する都内住宅都市部固有の課題解決並びに新たな移動価値を創出するためのシステム構築等を目的としており、実行計画終期の令和8年度までを見据えた委託契約となっております。現在進めている杉並区産MaaSの具体像をお示しください。その上で、公募要領にある都内住宅都市部固有の課題とは、新たな移動価値とは何か。また、MaaSがその課題解決や価値の創出にどのように寄与し、私たちの生活がどのように変化し得るとお考えか、お聞かせください。
 公募要領では、MaaSを推進する体制として、区を含めた複数の企業、団体による共同体、コンソーシアムを組織して運営に当たるとしております。推進組織をコンソーシアムとしている理由を伺います。法人格を持つ組織を想定しているのでしょうか、その中で区はどのような位置づけで、どのような役割を担うことになるのでしょうか、お答えください。
 今回受託する事業者は、既存のMaaSプラットフォームを活用してMaaSのユーザーインターフェースの構築を担うことになります。ここでいうインターフェースとは、スマートフォンアプリやインターネットサイト等の利用者のフロントエンドツールを指しているものと理解いたします。
 MaaSのユーザーインターフェースは、具体的にどのような機能を持つのでしょうか。また、MaaSプラットフォームについては、地域公共交通計画では、JR東日本のRingo Pass、京王電鉄のTAMa-GO、トヨタ自動車のmy routeが例示されておりますが、区が求めるプラットフォームの機能、特長はどのようなものなのか、お聞かせください。

MaaS推進におけるオープンデータ整備と活用

中村 康弘

 次に、取組2、オープンデータの整備・活用について伺います。
 計画では、区が主導となって、既存の鉄道やバス、その他の民間事業者に移動データの提供を促し、地域交通に係るデータを誰もが収集、分析できる体制を構築し、活用を推進するとしております。ここで言う移動データ、あるいは地域交通に係るデータとは、国が10年に1度実施しているパーソントリップ調査のデータ、GTFSと呼ばれる世界共通のフォーマットに基づく公共交通機関の時刻表や停留所、経路等に関するデータ、さらには携帯電話の基地局データやGPSデータ、Wi-Fiアクセスポイントデータなどを指していると理解します。
 GTFSなどは主に交通事業者から供給されると思われますが、事業者にとってのデータは彼らの情報資産であり、競争優位の源泉でもあります。そういう中で、データ供給についての事業者側の全面的な同意や協力を得ることが必要であり、そもそも事業者側がデジタル化されていることが前提となります。現在の区内交通事業者におけるデータ供給環境の整備状況について、区の認識をお聞かせください。
 今回の公募要領では、委託事業者が各種モビリティーサービスの移動データ、購買データ等を連動させ、分析、可視化可能なデータ収集及び管理を担うものとなっております。それでは、収集したデータを分析し、課題解決や価値の創出につなげるための活用はどのように行うのでしょうか、お答えください。
 なお、データの収集、分析、活用には、拡張性や包含性、またベンダーロックインを回避するという観点からも、フォーマットの標準化やAPIとの連携は必須です。この分野の環境整備についても着実に進めていただきたいと思います。

都市OSを見据えたデータ連携と自動運転、AIオンデマンド交通

中村 康弘

 次に、取組3、都市OSを見据えた交通のデータ整備とその他各種データとの連携と、取組4、自動運転技術等の実証実験について伺います。これらは、MaaSの実装がある程度進み出した先のフェーズにあるものと理解します。
 取組3では、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合したデジタルツインの活用を含め、交通分野のデータ整備をはじめ、将来的に防災、観光、福祉、環境等の他分野のデータとの連携基盤となる都市OSについても、国や東京都の動向を注視しつつ、検討を進めるとあります。
 デジタルツインとは、現実世界と対になる双子(ツイン)をデジタル空間上に構築し、モニタリングやシミュレーションを可能にする仕組みのことであり、都市OSとは、データ連携基盤、交通機関、医療、教育といった分野をまたがったデータを集積、分析し、自治体や企業が横断的に活用するためのプラットフォームのことであります。昨年の第4回定例会でのデジタル技術を活用した災害対策についての一般質問でも、区の3D高精度地図情報のオープン化を通して、これらのツールを積極的に活用するよう訴えております。
 そこで、改めて伺います。防災、福祉、環境等の他の分野のデータとはどのようなものを指すのか、また、それらの分野から有益なデータを取得し活用するには、どのような環境整備が必要か、お示しください。
 あわせて、他の分野のデータを交通分野のデータと連携させることの意義は何か、そのことによりどのようなことが可能となるのか、また、これらの取組における国や東京都の動向は現状どのようになっているのか、これらの点についてもお答えください。
 自動運転について伺います。
 区では、2018年度に井草森公園と荻窪駅南側にて条件付運転自動化のレベル3の実証実験を行いました。私も井草森公園を周回する自動運転の車に乗車させていただきましたが、全く違和感なく車が走行していたことを記憶しております。その後、自動運転の技術開発が進み、道路交通法も改正され、レベル3の機能を搭載した市販車の販売や、レベル4の自動運転タクシーやシャトルバスの開発、実証実験も進められております。改めて、2018年度に行ったレベル3の実証実験により得られた成果は何でしょうか。計画では、2030年度までの中期目標として、自動運転技術の実証実験を検討し、順次実施するとしていますが、前回よりどのように進展した形での実証実験が考えられるのでしょうか。そもそも区が自動運転を推進することの意義は何か、お答えください。
 また、計画には、「将来的な自動運転社会の到来に向けて、歩車共存空間の拡大や路肩におけるシェアリング車両用の留置、停車スペースの確保、スマートな交差点の運用などもあわせて検討する」との記載があります。これらは、道路整備やまちづくりに関係することでありますが、ハード面において現状ではどのような課題があるのか、所見を伺います。
 関連して、本年11月から運行開始を目指しているAIオンデマンド交通について伺います。
 区は、鉄道駅から800メートル、バス停から200メートル圏外となる善福寺、本天沼・清水、上荻・西荻北、南荻窪・宮前、堀ノ内・松ノ木・成田東の5つの地域を公共交通不便地域としており、AIオンデマンド交通の実証実験は、このうちいずれかの地域で始められることになります。現段階における対象地域の検討状況を伺います。選定作業はどのような着眼点で行っているのでしょうか。運行は、タクシーやバス等の公共交通事業者に任せるものと思われますが、事業全体のスキームはどのような形になるのか、お答えください。
 そしてAIを活用することの意義は何でしょうか。当該事業に関するAIシステムを提供できる事業者は現在どの程度存在しているのか、そして区は、これまでどのように比較検討してきたのか、そして区が最も重視するポイントは何か、それぞれお示しください。
 先日、会派で、2022年度からAIデマンド交通の実証実験を行っている三鷹市の取組を視察してまいりました。市民からの評価も高く、今年度から対象地域を拡張させている一方で、独立した事業としては採算性が非常に厳しい状況も伺いました。運賃設定、また事業の採算性について、区はどのような考えを持っているのか、お伺いいたします。
 この項の最後に、AIオンデマンド交通のシステムや事業者の選定を含め、事業開始までの今後の取組予定を伺って、次の項目に移ります。

中村 康弘

 住宅施策について伺います。
 現在開催中の通常国会にて、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律、いわゆる住宅セーフティネット法の改正案が可決成立いたしました。この法律は、既存の賃貸住宅や空き家等の有効活用を通じて、高齢者、子育て世帯、低額所得者、障害者、被災者などの住宅確保要配慮者が入居しやすい賃貸住宅の供給促進を図ることを目的としているものです。今回の同法の改正に至る背景と改正内容について御説明いただきたいと思います。また、改正に伴う区の住宅施策への影響について、伺います。
 区では、現行法に基づく取組として、セーフティネット専用住宅家賃低廉化補助事業を昨年度から始めております。住宅確保要配慮者のみが入居可能なセーフティネット専用住宅の賃貸人に対し、家賃を引き下げた額を補助することで、低廉な家賃で入居できるように支援するものです。月額最大4万円の減額が可能で、財源としては国が2分の1、残りを都と区がそれぞれ4分の1ずつ分担する補助スキームであり、期間は原則10年間にわたります。昨年12月から事業を開始し、これまで区内で5件の実績があります。
 この制度について、さきの予算特別委員会における当会派の斉藤りか議員の質問に対し、区営住宅の抽せんから外れてしまった方の受皿となる程度の対象物件数を確保していきたいとの区の考えが示されております。現状では、区営住宅とみどりの里を合わせて抽せんで外れて入居できない方の数が300名ほどですので、まだ大きな乖離があります。セーフティネット住宅の拡充を今後進めるに当たり、整備目標とそのための具体的な取組を明確にするべきと考えますが、所見を伺います。
 区が現在検討を進めている杉並区としての家賃助成制度についても伺います。
 この事業案は、セーフティネット住宅とアプローチは異なりますが、住宅に困窮する方々の経済的支援という政策目的は同じです。この点についても、さきの斉藤議員の質問に対する答弁では、両事業のすみ分けを行うものではなく、それぞれを実施して支援していくとの区の意向が示されております。しかし、政策目的が同じ事業を別々に実施することにより、冗長化や資源の分散などにより中途半端な状況になるのではないでしょうか。区として両事業の位置づけを明確に立て分け、それぞれが独自の効果を生み出し、お互いに補完し合うものであるべきと考えますが、所見を伺います。
 また、区の家賃助成制度は、対象を住宅確保要配慮者を仮に高齢者のみに絞ったとしてもその数が膨大に上ることから、財政面からの持続可能性に疑問を抱かざるを得ません。住宅に困窮する方々の経済的支援という幅広いものから、事業の対象をもっと絞り込むべきではないでしょうか。この点に関しても、区も同様の考えをお持ちであれば、絞り込みを行うに当たっての課題認識をお聞かせいただきたいと思います。

単身高齢者の民間賃貸住宅居住支援パッケージ

中村 康弘

 次に、単身高齢者等の民間賃貸住宅への居住支援について伺います。
 国土交通省の調査では、大家などの貸手の約7割が高齢者の入居について拒否感があるとされております。区内においても、単身高齢者が民間の賃貸住宅に入居することのハードルが高いことは、日々相談を受ける中で私も実感しております。
 核家族化により連帯保証人の確保が困難であることに加え、入居者が自宅で亡くなった際、その後の手続や処理、特に特別清掃を伴うなどの事故物件になると、心理的瑕疵物件となり、次の賃料を大幅に減額しないといけなくなるなど、貸手側が単身高齢者との賃貸契約に二の足を踏んでいるというのが実態であります。こうした課題は、家賃を低廉化することで解決できるものではありません。不安要素を軽減するための対策は多岐にわたります。
 議長、ここで資料の提示、よろしいですか。
 この表は、身寄りがない高齢者などへの必要と考えられる支援策を入居前から入居中、そして入居後、死亡後に至るまでの一連の流れをまとめたものであります。住まいに関する相談から、入居中の安否確認、緊急時の対応、見守り、声がけなどの生活支援、そして入居後、死亡後には行政への諸手続、関係者への連絡、死後事務、家財の処分、遺品整理、葬儀、納骨などがあります。この中で、赤い丸印をつけているものが区の高齢者等アパートあっせん事業と高齢者等入居支援事業で対応しているもの、それ以外は民間の居住支援法人、不動産業者、あるいは実質的に大家が自ら行うなど、様々な人や団体により行われております。また、東京都防災・建築まちづくりセンターによるあんしん居住制度によりカバーできるものも幾つかあります。この中でも特に強化が求められるのは、さきに挙げたとおり、賃貸人側での不安要素となっている入居後、死亡後の対応策です。
 そこで、その強化策の一環として、残置物の処理等に関するモデル契約条項について述べたいと思います。入居者が亡くなった後、賃借権と居室内に残された家財、残置物の所有権は、法的には、亡くなった方の相続人に引き継がれることになりますが、相続人の有無や所在が不明な場合、賃貸契約の解除や、残置物の処理に困難を伴います。後々、所有権侵害による民事上の責任や、器物損壊等の刑事上の責任が発生する可能性があるからであります。
 令和3年6月、国土交通省と法務省は、残置物の処理等に関するモデル契約条項を策定しました。これは、単身高齢者の居住の安定確保を図るため、賃借人の死亡後に契約関係及び居室内に残された家財などの残置物を円滑に処理できるように、①賃貸借契約の解除、②残置物の処理に関する条項から成る委任契約書のひな形であります。入居者が死亡した後の事務委任について、賃貸契約を結ぶ段階で明確にするものであり、入居前に双方が理解、同意することで、賃貸人のみならず賃借人にとっての安心にもつながります。
 残置物の処理等に関するモデル契約条項については、不動産業界や賃貸人側では、まだ周知が進んでいないと聞き及んでおります。区として、業界及び契約当事者にもこの件の理解が進み、賃貸契約がスムーズに、かつ効果的に実行するための支援体制を、法律の専門家の力も借りながら構築していただきたいと考えますが、所見を伺います。
 加えて、入居後支援の補強策として、今年度から港区が行っている家主あんしんサポート保険なども一考に値すると思います。これは、単身高齢者世帯等が入居する民間賃貸住宅を対象に、居室内における死亡事故による家主の損害を補償する保険です。1戸当たり月額690円の保険料を区が負担し、今年度は250戸を見込んでいるとのことであります。仮に先ほど挙げた本区の区営住宅等の抽せんが外れた方300名ほどを対象としても、年間経費が248万円程度で、さほど大きな予算を必要とするものではありません。
 もう一度資料を。
 私は、これらの支援策を区が全て行うものではないと思います。区はコーディネーターの役割を担い、多様な実施主体や仕組み、それぞれの連携や連続性を高め、一体的に推進してはどうかと考えます。これらを一つのシームレスで総合的な居住支援パッケージとするのであります。入居者の生活が連続して続いているのと同様に、居住支援も伴走型で行うことで、貸手、借手双方の安心につながるのではないでしょうか。
 現存する制度、施策を整理し、入居前から入居中の生活支援、さらには入居後までの伴走型の支援、そこにセーフティネット住宅や家賃助成制度なども組み合わせて、総合的な居住支援パッケージの仕組みを検討しては、いかがでしょうか。
 それとともに、それぞれの役割を担う関係機関、また庁内の関係部門が一体的に実施し、充実させていく体制が必要です。そのため、まずは顔の見える関係を構築するのに、例えば区の居住支援協議会の部会のような形で、定期的に一堂に会して情報交換を行うなどの場を設けてはいかがでしょうか。区の所見を伺って、私の質問を終わります。ありがとうございました。

答弁

議長(井口かづ子議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
      〔区長(岸本聡子)登壇〕

中村 康弘

答弁ありがとうございました。
 MaaSに関してちょっと1点だけお聞きしたいと思います。様々御答弁いただきました。大変楽しみにしておりますけれども、今のお話を総合すると、個別最適な移動サービスをすることで、外出が容易になると、そのことによって外出意欲が向上して、行動変容の啓発にもつながっていくと、そういうふうな趣旨のお話がございました。MaaSというのはモビリティーというふうにネーミングがついておりますけれども、そういうことからすると、移動自体が目的ではなくて、移動を活性化することによって、この移動の先にある、例えばそのことによって健康増進や地域経済の活性化、そのこと自体が目的であるというふうなこと、そこにつなげていくことが大事だということがよく分かりました。であれば、先にある、例えば移動の先、例えば病院、医療とか、教育、福祉、地域活性化、お買物へ行ったり、お食事したり、友達と会ったりとか、そういう産業振興のサービスとMaaSをいかに連携させていくかというところが大事かなというふうに思っております。
 そういう意味では、その先にあるいろんな様々なサービスの決済機能とか、予約機能とか、また行動変容につなげるということであれば、ポイントなんかは、最近大きくやっていますけれども、そういうふうなことにつながっていく、そういう仕組み、そういうところにいかにこのMaaSがつながっていくかというところが、拡張していくかというところが、これから大事な成功の鍵になるのかなというふうに、政策目的を達成するためには大事なのかなというふうに感じております。
 それと同時に、今これは杉並区産MaaSでありますけれども、別に区民は区内だけを移動するわけではありません。近隣の自治体を見ても、例えば練馬区は交通不便、南北は不便と言われておりますけれども、練馬区には大きな病院もありますし、例えば南のほうに行きましたら、下北沢とか、二子玉川とか、すごい魅力的な、そういう商店街もたくさんあります。そういったところということであれば、地理的な拡張性というところも、やっぱりこれからつなげていくべきじゃないか。この間三鷹にも行ってきましたけれども、そういったところと拡張しやすくなるような、そういうふうなインターフェースというか、そういうふうな仕組みというのを今回立ち上げるに当たって、やっぱりしっかりと充実させていくということが大事だと思います。サービス面での垂直統合、また地理的な水平統合、この両方にしっかりと配慮というか、目を向けた、そういうふうな形でのMaaSの検討を行っていただきたいというふうに思います。それに関してもう一度御答弁をお願いいたします。

議長(井口かづ子議員)

理事者の答弁を求めます。
 都市整備部長。
      〔都市整備部長(中辻 司)登壇〕