平成26年11月18日 第4回定例会

高齢者の住まいと健康づくり推進条例

中村 康弘

杉並区議会公明党の一員として、高齢者の住まいについて、健康づくり推進条例について質問いたします。
 初めに、本区における高齢者の住まいの実態に関して、その居住形態、世帯構成、住まい、住まい方を取り巻く環境などについて、近年どのような変化や特徴が見受けられるのか、概要をお示しいただきたいと思います。
 私は、本年の第2回定例会の一般質問において、地域包括ケアシステムで住まいを植木鉢に例えた概念を引用し、適切な住まいの確保は、高齢者の生活を支えるための基本であることを述べました。そして、住まいの整備にはハードとソフトの一体的な取り組みが重要であり、そのためには高齢者部門と住宅建築部門等の綿密な連携が必要であることを主張し、区も同じ考えであることを確認させていただきました。その後、さきの第3回定例会での我が会派の代表質問に対する答弁などにおいて、区は、学識経験者等を交えた、高齢者や障害者の総合的な住まいのあり方を検討していく会議体を設立する考えを示しました。この会議体については、構成メンバーや今後の展開、目標等、どのようなものを検討しているのでしょうか。現段階でわかる範囲で結構ですので、お示しください。
 エイジング・イン・プレイスという言葉があります。これは、欧米諸国における高齢者の住宅政策の底流にある考え方であり、直訳すれば、本来の場所で年齢を重ねていくという意味で、多くは地域居住と訳されています。
 エイジング・イン・プレイスには4つの構成概念が挙げられています。すなわち、1、高齢者の尊厳を守り、自立を支援する環境を守る。2、自宅に住み続けたいという根源的な願望に応えて地域に住み続けること、つまり、最後まで地域での居住継続を保障していく。3、そのためには、高齢者の変化するニーズに合わせていくことが必要である。4、近隣やコミュニティの課題も含むダイナミックなコンセプトである、というものです。スウェーデン、デンマーク、イギリスなどで、いち早くこの考えに基づき、それぞれの国の状況に応じた政策が行われています。
 現在、区では、特別養護老人ホームの定員増を、総合・実行計画に基づいて精力的に進めています。待機者がAランクで1,000人、全体でも2,000人の状況にあって、その解決に向けて区が最大の努力を行っていることは評価しておりますし、支持するものであります。
 ただ、一方で、区の高齢者実態調査では、現在の住まいにできるだけ住み続けたいと6割以上の方が回答しており、在宅生活の継続こそが、多くの高齢者の根源的なニーズであると思います。したがい、充実した在宅生活の支援や地域居住の環境整備に向けて、より一層の力を注ぐべきであると考えます。エイジング・イン・プレイスの概念は、住宅施策を通した高齢者施策全般にも通じる基本的な考え方とも言えますが、このことについて区の所見を伺います。
 本区の高齢者向けの住宅は、従前からのみどりの里に加え、近年多様化が図られています。サービス付き高齢者向け住宅、サ高住は昨年に、また都市型軽費老人ホームは今月、それぞれの区内第1号が開設しました。区は今後、同様の施設、住居を区内で増やしていく考えを示しています。サ高住では建築費の5分の1、1戸当たり上限200万円の助成金を設け、民間整備の誘導を進めていますが、課題として本区の高い地価があり、公有未利用地の活用の必要性が伴ってきます。また、家賃等の利用者負担が高額となっているのが現状です。
 一方、都市型軽費老人ホームにおいては、このたび開所したのは認知症グループホームとの併設型です。先日、見学をさせていただく機会がありましたが、生活に必要な設備が整った大変立派なすばらしい施設です。本施設は、一定の敷地規模を伴った併設型でありますが、軽費老人ホーム単体での運営の場合は、事業としての採算性はどうなのか。また、基本的には自立生活ができる方を対象としたもののため、今後、居住者の体調や介護度等の変化が生じた場合の対応、場合によっては他の施設への移転の必要性も出てくると思いますが、そういった将来的な引き継ぎ、受け入れ体制は確立されているのでしょうか。今述べました点を含めて、これらの新たな高齢者向け住宅の運営及び拡充策の課題について、区はどのように認識をしているのでしょうか。
 民間の既存住宅ストックの活用については、区はこれまでも、高齢者等アパートあっせん事業の拡充などを通して推進してきました。大型施設の新設には、どうしても物理的、財政的な制約が伴うため、これからの高齢者の住宅需要を考えたときに、地域で活用されていない既存住宅の、ますますの開拓と活用が望まれます。住宅マスタープランにも掲載されている平成20年住宅・土地統計調査によれば、区内には、空き室、空き家が全体で3万2,690戸存在し、そのうちの6割以上が賃貸、売却用にあいている物件が占めています。
 11月10日に行われた区の協働提案による公開プレゼンテーションにおいて、あるNPO法人による、空き室等を活用した要介護高齢者等の住まいの確保の提案を聞かせていただきました。説明時間が20分程度と限られていたため、提案のスキームの全てが理解できたわけではありませんが、地域居住や民間ストックの活用といった考えを基礎としており、また、さまざまな分野の専門家が参画している同法人特有の強みを生かした、興味深い提案でありました。今後、NPO等活動推進協議会で評価を行い、事業化を進めていくかどうかの検討を行っていくことになります。
 空き家、空き室の活用には多様なアプローチが考えられます。インターネットで物件情報を公開し、仲介する空き家バンク制度などを導入する動きも広がっています。区は、引き続きさまざまな知恵やノウハウを積極的に取り入れ、ぜひとも充実した対策に取り組むことを要望したいと思います。
 話題は少し派生しますが、老朽危険建築物となっている放置空き家について伺います。
 私も、このような空き家についてのご相談をたびたびいただきますが、これらは、景観上の問題のみならず、ごみの不法投棄や不審者の侵入、放火の要因になるほか、災害時に倒壊して避難や消防の妨げになるおそれがあります。対策の緊急性、必要性は高いと言えます。
 一方、あくまでも管理責任は所有者にあるため、対策が難しいことも理解しています。所有者を特定し連絡をとること自体が容易でないケースもあり、仮に特定できたとしても、撤去や維持管理を行う際の費用負担の問題、あるいは固定資産税が軽減される特例措置の関係上、所有者があえて家屋を残したままにしていることも考えられます。こうした状況は全国各地で見受けられる課題であり、国としても、税制面を含む抜本的な対策に取り組む動きを見せています。
 そのような中で、それぞれの自治体で問題のある空き家に対しての条例を定めるなど、独自の対策を行う動きが広がっています。例えば足立区では、老朽家屋を解体する所有者に解体費用を助成する制度を実施しており、文京区においては、危険な空き家を所有者の同意を得て無償で取り壊し、跡地を区が無償で借り受けるという取り組みを今年度より始めています。こういった老朽危険建築物となっている空き家対策の取り組みについて、区の所見をお聞かせください。
 地域居住に話を戻し、生活支援について伺います。
 高齢者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むためには、医療と介護といった従来のフォーマルサービスの給付に加え、生活上の不便をカバーするインフォーマルなサービスも身近に担保されていなければなりません。区の実態調査に基づく推計によりますと、本年1月現在で、区内ではひとり暮らし高齢者が2万168人いるとされています。平成12年時点での同様の推計値が9,449人とのことですので、この十数年の間に2倍以上に増えています。私の周りにもたくさんいらっしゃいます。
 見守り支援、安否確認、家事の手伝い、外出の付き添い、話し相手などの支援については、近隣住民、友人、ボランティア、民間事業者、NPOなどの多様な主体により、フォーマルサービスと絡み合って提供されることが望まれます。それには、その地域におけるソーシャルキャピタル、とりわけ個人と社会の結びつきや協調的な交流、そしてその基礎となる善意や信頼といった支え合いの意識が重要であると言われています。
 地域包括ケアシステム構築に向けて、現在区がモデル地域を通して進めている地域づくりの取り組みが、まさしく自助・共助・公助、プラス互助のネットワーク形成による、このような地域を目指したものであると理解しております。
 地域づくりについては、これまでモデル地域の活動状況の報告会を何度か傍聴させていただきましたが、各担当は相当苦労していることが見てとれます。大変困難な作業であることは想像にかたくありません。区は、地域包括支援センター任せとするのではなく、共に悩みながら、1つ1つ階段を上るように、細かい具体的な目標を提示、共有するなど、イニシアチブを示していただきたいと思います。所見を伺います。
 これまで、空き家などの既存ストックの活用や生活支援の体制について伺ってきましたが、これらはケア24ごとの地域といった比較的狭いエリアでの実施が想定されています。その上で、これらの個々の活動を広域的に支援し、その関係機関とのネットワークを調整し、推進できるプラットホームの存在が必要不可欠です。このプラットホーム機能については、前回の質問でも述べたとおり、地方公共団体、宅地建物取引、賃貸住宅管理業者やNPOなどから構成される居住支援協議会を設立し、運営することが望ましいのではないかと考えます。
 豊島区の居住支援協議会は、居住場所に困っている方などに対する支援活動等を行うグループに、その実施に要する費用を助成する事業を行っており、その結果、地域とのつながりをもちながら暮らしたい人のための居住支援事業、障害者を地域で支える体制づくりモデル事業、そしてシングルマザーと子供のための自立支援シェアハウスの3つのプロジェクトがモデル事業として採択され、それぞれNPOが運営を行っています。そして、協議会が豊島区内全域の範囲で支援を行い、広域性、公共性を担保する存在として機能している事例もあります。
 前回の質問では、居住支援協議会設立の検討については、東京都が立ち上げ予定の居住支援協議会や他区の設立状況を確認し、設立に向けて検討していくとの答弁を受けました。東京都の協議会は、その後、本年6月に設立されています。本区における居住支援協議会設置に向けてのその後の検討状況はいかがでしょうか。
 2つ目の項目である健康づくり推進条例について質問します。
 本年7月より施行されている健康づくり推進条例は、全ての区民が社会とのつながりを生かし、生涯にわたって健やかで生き生きと暮らせる健康長寿の地域社会の実現を目指し、健康づくりを推進することを目的としています。あくまでも個々人における健康への自覚を基本としつつ、人々の連携と協働を通してその意識を広げていくことを推進するものであり、大変画期的な条例であると思います。
 条例に基づき、身体の健康、心の健康、歯と口腔の健康、健康づくりを支える社会環境などの分野において、それぞれの目標、指標を来年1月を目途に設定することで、健康づくり推進協議会を立ち上げ、検討が進められています。
 田中区政の発足以来、健康と医療・介護の緊急推進プラン、長寿モニター事業、がん対策推進計画など、次々と策定されました。そして、このたびの健康づくり推進条例の制定。健康推進施策を重要視している区の姿勢が明確であり、高く評価したいと思います。改めて、本条例制定の意義と条例の目的達成に向けた今後の施策展開について、考えをお聞かせください。
 議長、ここで資料をお示ししてよろしいでしょうか。──このグラフのとおり、杉並区は、2010年のデータでは、男性の平均寿命は81.9歳で全国第9位、女性は88.2歳で10位と大変長寿な自治体であります。その10年前の2000年から比較すると、男女とも平均寿命が約3歳延びており、大変喜ばしい限りであります。一方、健康寿命については、本区が採用している東京保健所長会方式の65歳健康寿命で同じ10年間の推移を見ると、男性は82.1歳から82.54歳へ、女性は85.5歳から85.49歳へと、健康寿命に関してはほとんど横ばいです。今後、平均寿命と同様に、健康寿命も同じように右肩上がりのトレンドにしていきたいものであります。そのためにも、条例の制定を機に、これまでとは異なるアプローチ、取り組みが必要になってくるのではないでしょうか、区の所見をお聞かせください。
 関連して、歯と口腔の健康について伺います。
 健康長寿を阻害する3大要因として、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)、運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、そして3つ目に認知症が挙げられます。先日、杉並区歯科医師会主催の「区民健康講座~歯科と認知症~歯を残して認知症予防!」での、神奈川歯科大学の山本龍生准教授のお話を伺いました。そこで紹介された研究データが大変興味深いものでした。
 高齢者の中で、自身の歯を失った後、入れ歯などの義歯を使わずそのままにしている人は、20本以上歯がある人に比べ、認知症の発症リスクが1.9倍もあったというものであります。つまり、歯がなくなった上に義歯も使わずに、かむという行為が十分にできなくなることで、脳の認知機能の低下を招いてしまう。逆に、かむという行為を通して、脳にさまざまな情報が伝達され、脳の血流が活発になり、脳内部の神経ネットワークが活性化されるというメカニズムが考えられるとのことでした。さらに、かむというあごを上下させる行為は、人間の頭部や体全体のバランスにも影響し、追跡調査では、歯がなく義歯も使用していない方の転倒リスクは2.5倍にも上るという、つまり、ロコモティブシンドローム予防にも歯の状態が関係するとの研究データも示されました。
 8020運動について、歯科医師会の協力により、平成24年度に実施した長寿モニター事業では、アンケート回答者の60.4%が達成しているというデータが示されました。しかし、継続的にかつ大規模な調査のためには、80歳での歯科健診を行うことが有益と考えます。8020のデータが採取できるのみならず、義歯を使用している人にとっては、義歯の機能やあるいは摂食・嚥下機能の状態を健診することもでき、結果として、高齢者に多い誤嚥性肺炎を予防することにもつながるのではないでしょうか。区の所見を伺います。

がん検診電算システムの現状と今後の展開

中村 康弘

 最後に、がん検診システムについて伺います。
 区は、今年度からがん検診電算システムを本格稼働させ、がん検診の受診率向上に取り組んでいます。先日、このシステムを保健所で見せていただきました。データベースに蓄積されたそれぞれの情報が有機的に連携し、管理する目的や用途を明確にした上で、効率的にターゲットとする対象者に個別勧奨、再勧奨を行える、大変すぐれたシステムであるという印象を受けました。改めて、本区の今年度のがん検診の受診状況と、このシステムの本格稼働による受診率向上へ向けて、区が目指しているところの今後の展開についてお聞かせください。
 これからの時代、長寿社会となり、人々の健康に対する関心はますます高まってくると思います。健康づくり推進条例の制定を契機に、本区において健康長寿が大きく広がる新しい時代の開幕を期待して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

答弁

議長(斉藤常男議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
      〔区長(田中 良)登壇〕