地域包括ケアシステムと高齢者住宅支援
杉並区議会公明党の一員として、地域包括ケアシステムについて質問いたします。
2025年問題という言葉が、最近マスコミ等でもよく取り上げられております。団塊の世代が全て75歳以上になるのが2025年。具体的にどのような社会環境の変化が起きるのか、また、そのことは社会保障、医療、福祉にどのような影響を及ぼすことになるのか、予想される本区の将来像に即して、2025年の時代に対する区の見解をお聞かせください。
昨年、社会保障制度改革国民会議がまとめた報告書では、来年度からの第6期以降の介護保険事業計画を地域包括ケア計画と位置づけ、2025年モデルの地域包括ケアシステムの構築という中長期的な視野に立った施策の展開が提言されています。
厚労省の地域包括ケア研究会によれば、地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住みなれた地域で生活を継続することができるような包括的な支援、サービスの提供体制としています。そして介護、医療、予防、生活支援サービス、そして住まいの5つの要素について、住まいを地域での生活の基盤をなす植木鉢に例え、生活支援サービスを養分を含んだ土とし、その上で介護、医療、予防の専門的サービスが植物のように力を発揮するものとの概念が示されています。
杉並区においては、昨年度より3つのモデル地域を設定し、地域包括ケアシステム構築の基本的な考え方について検討を進め、その中で見えてきた課題の整理とこれからの取り組みの方向性を、中間まとめとして先日公表しました。
ここで、確認の意味で質問をさせていただきます。そもそも本区においては、地域包括支援センターをケア24として平成18年度に立ち上げて以来、地域包括ケアシステムという形は存在してきたのではないのでしょうか。なぜ今、改めて地域包括ケアシステムが注目されるのか、区の所見をお聞かせください。
また、中間まとめで明らかになった課題とは、主にどういうものがあるのでしょうか。これからの取り組みの方向性とあわせてお示しください。
それでは、個別の課題について、順に伺っていきたいと思います。
まずは、住まいと生活の支援について伺います。
先ほどの植木鉢の例えのとおり、適切な住まいの確保は高齢者の生活を支えるための基本となります。住まいの整備に当たっては、防火や耐震性、バリアフリーといったハード面での質の確保とともに、生活支援や介護、看護、医療などのサービスの提供体制についても一体的に考え、進めていく必要があります。そして、そのためには、区の高齢者部門と住宅建築部門等の連携した施策の展開が重要であると考えます。区の所見と、そうした連携の現状についてお聞かせください。
住まいと生活の一体的な支援においては、居住支援協議会の設立及び活用が考えられます。居住支援協議会とは、地方公共団体、学識経験者、宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者、居住支援を行うNPOなどから構成され、高齢者や低所得者、障害者など、住宅の確保に特に配慮を要する方が民間賃貸住宅に円滑に入居できるよう推進する組織であり、いわゆる住宅セーフティーネット法で、各地方公共団体に設置が認められているものであります。
23区では、江東区、豊島区、板橋区で既に立ち上げられており、社会福祉協議会や区の保健福祉部及び都市整備部も参画し、それぞれの課題に応じた活動が活発に行われています。東京都としての協議会もことしの7月ごろに設立される予定で、区市町村の協議会の活動支援や広域的な啓発活動を中心に行っていくとのことです。本区における居住支援協議会設立に向けての検討状況はいかがでしょうか。
生活支援のサービスと住宅の一体的な整備という点では、サービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住があります。区は、総合計画において、24時間体制の介護、看護を備えた杉並型サ高住を、みどりの里を転換するなどして、10年間で500戸整備していく方針を示しています。25年度からは民間事業者への助成制度も始めています。
しかし、先日改定された住宅マスタープランでは、既に一部転換されている和田みどりの里以外については、当面、現行の体制で維持運営していく旨が記載されています。これは、みどりの里をサービス付きに順次転換していくという総合計画の方針の変更と理解すればよろしいのでしょうか。また、現在の目標、10年間で500戸は、みどりの里を転換することを前提としたものと理解していますが、この目標については見直していくのでしょうか、説明を求めます。
先日、区内にある民間のサ高住を視察させていただきました。3階が食堂などの共有部分で、4階から7階までの個室32室、常駐の専門職員による24時間緊急時対応の体制も備わっており、安心が感じられます。一方で、完全な個室であるため、個人の自由度がかなり確保されており、快適な住環境であることがうかがえました。
費用のほうは、1人部屋の家賃で13万1,000円、共益費1万円、生活支援サービス費5万4,000円、そのほか介護保険を利用した場合はその自己負担分、そして食費などの生活費を全て含めると、合計で月額30万円近くになります。年金が主な収入源の高齢者にとって、月々その額を負担していくことは決して容易ではなく、負担軽減のための何らかの策を検討する必要もあるのではないかと感じました。
種類は異なりますが、費用面を考慮すると、都市型軽費老人ホームなどのニーズも、これから確実に増加してくると思います。区内の高齢者も、経済的な状況や身体的に必要なサービスの内容が多岐にわたります。また、一個人においても、それは年とともに変化するものでしょう。したがい、施設や住宅の整備については、できる限り豊富な選択肢を設けていくことが望ましいと思います。区の考えと現状についてお聞かせください。
杉並区の高齢者は、23区全体と比較して、持ち家に住んでいる割合が非常に高いという特徴があります。平成20年の住宅・土地統計調査によれば、区内の高齢者のいる世帯では78.4%、高齢単身世帯では58.6%が持ち家に住んでいます。高齢者の夫婦世帯においては、23区全体では74.5%に対し、杉並区では88.1%が持ち家に住んでいるという状況です。ちなみに、同じ統計調査の平成15年の時点では81.6%でしたので、5年間で相当数増加したことになります。
このことからも、高齢者が住みかえをする場合の居住住宅をその後どうしていくのかということも、検討すべき課題であります。例えば住宅をリフォームし、シェアハウスとして比較的低廉な家賃で若い世代に賃貸するまでの一連の支援をしていく。高齢者にとっては家賃収入が得られ、サ高住等への居住も可能になるかもしれませんし、同時に、若い世代への住宅提供策にもなるでしょう。
また、このことは、空き家対策という側面もあります。区内には約3万3,000戸の空き家が存在し、今般、その実態調査報告書が出されたところですが、持ち家率の高い高齢者世帯の増加を考えると、空き家の数も今後増加傾向になるとも考えられます。
三鷹市には、空き家を改修し、高齢者同士が暮らす家として、ミニキッチンつきの個室5部屋をNPOが提供している住宅があります。医療や介護が必要になったときは、市民団体や行政等と連携してサポートをする体制をとっているとのことです。あるいは住まいとまではいかなくとも、デイサービスやショートステイなどへの活用も考えられます。
また、世田谷区では、区内にある空き家を地域資源と捉え、その活用を目的とした相談窓口を開設し、協力の得られるオーナーとNPOなどの利用団体とのマッチングを行っています。また、活用のアイデアを公募で受けながら、地域コミュニティの活性化、再生へとつなげていくことを目指しています。
空き家を地域資源と捉え、積極的に活用していくべきと考えますが、区の所見を伺います。
あくまでも自宅での生活を希望する方に対しては、リバースモーゲージが有益な場合も考えられます。幾つかの金融機関が扱っており、低所得者向けのものとしては、社会福祉協議会が窓口となっている不動産担保型生活資金があります。しかし、いずれも取扱機関の数や情報量が少ないため、制度の仕組みやコンセプトが十分に理解されておらず、なかなか普及していないのが実態ではないでしょうか。リバースモーゲージの利用実態について、区はどのように把握しているのでしょうか、実績等をお示しください。
いずれにしても、こうした多岐にわたる住まいの問題については、さきの居住支援協議会などがその専門性を生かすことで、適切な支援ができるのではないかと思います。
地域密着型サービス推進と医療介護連携
次に、地域密着型サービスについて伺います。
毎年の区民意向調査において、現在住んでいる地域に今後も住み続けていきたいとの意向が常に80%を超えており、杉並区民には高い定住意向があります。介護保険の地域密着型サービスは、住みなれた地域での生活が継続できるよう、区が事業者を指定し、支援していくサービスです。区内における地域密着型サービスの利用実態はいかがでしょうか。特に小規模多機能型居宅介護事業は、平成23年度では、事業計画350人に対して実績が21人と、達成率がわずか6%でした。状況は改善しているのでしょうか。課題をどのように認識し、今後どのように進めていくのか、お聞かせください。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスは、在宅生活の安心に直結するサービスであり、これが広く普及、定着すれば、特養を希望する方々の不安解消にもつながるものと思います。区内におけるサービス事業者はまだ4カ所しかなく、時間内に駆けつけるための地理的な条件や事業としての採算性など、幾つかの課題が考えられます。さらに、効果的に活用するためには、ケアマネ、事業者、利用者間での、このサービス内容に関する深い理解と認識の共有が欠かせません。定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを今後推進していくため、区はどのような取り組みをされていくのでしょうか。
医療と介護の連携について伺います。
安心の在宅生活を送っていくためには、医療と介護の連携の強化が重要であることは、かねてより注目されているところであります。とりわけ、医療機関からの退院時に、患者の状況に応じた自宅での受け入れ体制が整備されていることが重要です。そのためにも、病院のソーシャルワーカーと介護専門員などの多職種が協働して支援する仕組みを構築する必要があります。
この点に関しては、区は、在宅医療相談調整窓口を設置し、そしてこのたび、医療と介護の連携「すぎなみガイドライン」を策定しました。関係者にとって相互に必要な情報がまとめられているものであり、画期的なガイドラインであります。今後、このガイドラインをどのように定着させ、活用していくのでしょうか。
また、これは、あくまでも区内の関係者向けに作成されたものであると理解しますが、規模の大きな医療機関の多くは区外にあるため、広域的な対応が必要になると考えます。この点についてはどのように進めていくのでしょうか。
続いて、地域包括支援センター(ケア24)について伺います。
地域包括ケアシステム構築の中心となるのは、言うまでもなくケア24であります。運営を委託している区内20カ所の各センターには、それぞれ5名から10名程度の職員が配置されており、年間平均5,000件程度の各種相談に応じながら、介護予防、権利擁護、要支援の方のケアプラン作成などの業務を行っています。
区は今年度、地域づくり担当を3カ所のモデル地域のケア24に配置し、地域活動育成ネットワーク構築など、センターの機能強化に取り組んでいます。各センターを統括し後方支援を担う、いわゆる基幹型地域包括支援センターについては、本区では区役所がその機能を担っています。東京都では、機能強化型地域包括支援センター設置促進事業というものを今年度より始め、機能強化型業務に従事する職員の配置経費1人当たり550万円を補助することになっていますが、同事業を活用する予定について、区の考えを伺います。
また、区は、地域づくりのツールとして、地域ケア会議の活用を目指しています。これまで本区では、主にケアマネジャーの支援を目的として会議が開催されていましたが、今後は、フォーマル、インフォーマルをあわせた地域資源のネットワーク化とマネジメントをするものへと、位置づけを変えていくと伺っています。
地域ケア会議については、埼玉県の和光市の事例が有名です。先日、同市の保健福祉部長のお話を伺う機会がありました。和光市では、市全体の介護保険事業計画をマクロ的なマネジメント、そして地域ケア会議をミクロ的なマネジメントとして位置づけ、月3回の頻度で開催しています。3回のうち1回は市全体の中央会議で、残り2回は、市内に4カ所ある地域包括支援センターごとの会議です。
担当のケアマネジャー、センター職員、サービス提供事業者、市の担当者などのほか、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などの外部専門家も参加し、個々の事例について、個人的、環境的な課題解決に向けたサービスや個別支援プランをよく検討し、皆で問題点を共有、チームケアの編成を行います。自立を阻む要因の徹底的な解決に努め、モニタリングによる管理や評価を行う仕組みも組み込まれています。最終的には介護保険制度からの卒業を目指すという自立支援のためのマネジメントが、会議を通して体系的に行われています。参加者にとって、会議はOJTの場でもあり、それぞれが専門性を生かしながらも、専門外の分野への理解も深めることができ、結果、ケアサービスや自立支援の幅が広がってきているとのことです。
和光市は、介護予防、要介護度の重症化予防や、徹底した地域ニーズ調査などにも力を入れており、それらの総合的な結果、同市の要介護認定率は10%と本区の約半分、全国平均約18%を大きく下回るという効果があらわれているとされています。
これは、本区が目指している地域ケア会議のモデルとは、そのアプローチが異なることは承知していますが、ここで申し上げたいのは、会議が単なる顔合わせに終わったり、開催回数や参加者の人数等をもって成否を判断したりするのではなく、具体的な目標に対するPDCAサイクルの核となる実効性のある会議としていただきたいということであります。区の所見を伺います。
杉並区の認知症対策強化
最後に、認知症対策について伺います。
認知症の男性が徘回中に列車にはねられ死亡した事故で、鉄道会社が男性の遺族に対して振りかえ輸送費などの損害賠償を請求した控訴審の判決が、先日、名古屋高裁でありました。内容は、遺族の賠償責任を認めるというもので、介護の実態を反映しない極めて残念な判決であります。我が会派はこれまでも、患者個人の尊厳、介護家族の支援、早期発見・早期対応の充実、認知症サポーターを初めとした認知症に対する理解の促進など、具体的な提案も交えながら対策の強化を求めてきたところです。
全国で800万人が認知症あるいは認知症予備群と言われる時代、さらには2025年を見据えたときに、対策の強化はまさに待ったなしです。改めて、認知症対策について今後の区の取り組みと決意を確認し、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕