財政運営の基本方針と財政のダムの活用
杉並区議会公明党の中村康弘です。会派の一員として、通告に従い、財政運営について、ICT調達について質問を行います。
区政経営改革推進基本方針では、財政の健全性の確保と時代の変化に即応できる持続可能な財政運営の実現をうたっています。そして、その具体策として、財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方――以下、基本的な考え方と言います――で次の5つの指標を定めています。1、財政調整基金の年度末残高350億円の維持、2、施設整備基金への毎年度40億円以上の積立て、3、公債費負担比率は5%を超えない、4、行政コスト対税収等比率は100%を超えない、5、債務償還可能年数は5年を超えない。以上の5項目です。
これらは単年度の収支均衡と中長期的な財政の健全性、そして現金主義と発生主義のそれぞれの会計情報から区財政を捉え、管理すべき数値を指標化したものであります。時間軸と会計方法という2つの視点による財政分析と管理指標は、私自身、議会で主張してきたことであり、区が現在それを採用していることは率直に評価をしております。この基本的な考え方に対する区長の評価を伺います。
これまで代表質問でも御答弁をされてこられましたが、今後もこれを継続して採用する意向なのか、改めて確認をいたします。
区長は区長就任後、職員から区政の現状等を聞いていく中で、安定した財政基盤を維持することが必要との認識を新たにしたと述べられております。
では、それ以前はどのような認識であったのでしょうか。また、安定した財政基盤が必要と認識するに至った最大の理由は何か、お答えください。
本区において、指標を設定し、健全な財政を確保する試みは、2012年度に策定した財政の健全化と持続可能な財政運営を確保するためのルールから始まっています。本年度からは、数値の達成にとらわれることなく、柔軟で機動的な財政運営を行うということから考え方へと名称が変わりました。また、指標項目についても、これまで幾度か見直しが行われてきました。私は、かねてより財政規律の仕組みの必要性は訴える一方で、過度に硬直的になるのではなく、むしろその時々の財政状況に応じて直面するニーズや課題に臨機応変に対応することを是としています。その立場から、この5項目の内容について、さらなる改善も促しつつ、以下伺ってまいります。
まず、項目1と2及び財政のダムについて伺います。
項目1は、財政調整基金を維持する残高、項目2は、施設整備基金に毎年度積み立てる金額を定めています。これらは、それぞれの基金の目的や性格に応じて適切に活用していくための目標であります。地方自治体の予算は、単年度で収支が均衡することを原則に編成されています。これは毎年の経済成長に比例して、自治体の歳入も右肩上がりで自然に増加している時代には有効であったのかもしれません。しかし、このような時代ははるか昔のことです。未来を見据えた上で後世にツケを回さず、状況の変化にも柔軟に対応できる財政運営でなければなりません。
私はこうした認識から、かねてより財政のダムの必要性を主張してきました。基金をダムに例え、平時に可能な範囲で水をためておき、緊急時に放流することで安定的に行政サービスを提供する仕組みを訴えてきました。項目1で財政調整基金350億円を維持するとしているのは、その考えが反映されています。大規模災害に備え、被災した自治体の事例を踏まえ、1人当たりの災害復旧費を杉並区の人口に換算した場合の経費約150億円、そして経済状況の著しい変動に備え、リーマンショックのときに区が実際に基金を取り崩した約200億円、これらを足した額となっております。
実際に放流した事例として、現在のコロナ対策があります。区はコロナ禍を大規模災害に匹敵する事態と捉え、必要な財源を積極的に投入するとの一貫した方針でコロナ対応に当たってきました。その中でも特筆すべきは、入院・外来医療体制強化事業補助金です。当時、コロナ感染が急激に拡大し、医療崩壊の危機という、今まで経験したことがない恐怖に私たちは包まれました。そのさなか、区は区内4基幹病院に対して、予算額で合計22億2,900万円、支払い額として16億3,005万円の財政支援を行いました。この事業はその後、第三者による検証が行われ、今年の3月に検証結果が公表されました。その報告書によると、対象となった一昨年の4月-6月期は、4病院ともコロナ対応によって大幅な減収となり、病院経営が圧迫される状況にありました。現預金等の残高が前年3月末比で5割以下に激減し、キャッシュフローの悪化が心配されましたが、区からの補助により深刻な事態が回避できたことが報告されています。国や東京都からの補助金が入金されたのは秋口であり、スピードを重視したこの区の包括補助がまさに救いの手となったのです。当事者である医療機関からは、真っ先に杉並区が包括的に支援を打ち出したことで医療に専念できた、杉並区と共同で社会的な使命が果たせたとの声が寄せられました。
入院・外来医療体制強化事業補助金についての検証結果を受けて、改めて区としての同事業の総括を伺います。
この事業を皮切りに、この間、14回にわたり合計103億円の財政調整基金の取崩しが行われ、そのうちの大部分がコロナ対策の財源に充てられました。基金の取崩しにより対応してきたこれまでの対策の内訳をお示しください。
あわせて、一連の区のコロナ対策に財政調整基金が果たしてきた財政面からの役割についてどのように評価しているのか、お聞きいたします。
今後、首都直下型大地震等の大規模災害が区内で発生した場合は、事態はさらに深刻であると予想されます。以前、一般質問にて、阪神・淡路大震災の被害が大きかった兵庫県西宮市の事例を紹介したことがあります。同市では、震災直後からの18年間で震災関連経費の合計額が4,485億円に上り、その4割弱の1,700億円を市債発行により対応しました。結果、20年以上経た現在でも市債の償還が重い財政負担となっています。高岡法科大学の野口教子教授は、昨今の災害の被害の複合化、多様化、そして大規模化によって、災害の応急対策から復旧、復興への過程が長期化し、対策の連続性への財源確保が今、地方自治体に求められている喫緊の課題であると述べています。財政のダムは、いつかのための特別な措置ではなく、通常の財政運営の中に組み込まれるべきものと考えます。
緊急対応に備えた財政運営の在り方について一層の研究を重ね、より精度の高い効果的な財政のダムの構築に努めていただきたいと思いますが、区の所見を伺います。
施設整備基金の積立計画と行政コストの分析
次に、項目2、施設整備基金への毎年40億円以上の積立てについて伺います。
将来の財政負担を予測し平準化させる取組であり、これも一種の財政のダムと言えます。40億円以上という数字は、区立施設再編整備計画(第2期)に基づき、今後40年間の区立施設の長寿命化も含めた改築、改修等に要する経費に対して、施設整備基金からの繰り出しに必要な年平均額を算出したものです。今年の予算特別委員会で、私はこのスキーム自体は理解できるものの、40年間という対象期間が長過ぎるのではないかと指摘いたしました。将来の物価変動や、国や都による施設整備への補助制度が変化していくことなども考えられるため、例えば総合計画の2030年度までを対象としたほうがより現実的ではないかと問題提起をいたしました。それに対して、区は柔軟に見直していくとの考えを示しました。
項目2、施設整備基金への積立計画40年間という期間についての私の指摘に対して、区はどうお考えか、改めてお聞かせください。
続いて、項目4、行政コスト対税収等比率100%以下について伺います。
これは、経常的な行政コストが税収や補助金等の歳入に占める割合を示したものです。100%を下回るということは、単年度の収支に資産形成や財政のダムなどに回せる弾力性があることを意味しています。本区の実績では90%台で推移しており、財源がコストを上回っております。しかし、2020年度は95.4%で、それまでの平均的な値より数%ポイント上昇しました。
区は、この要因についてどのように分析しているのか、確認いたします。
公債費負担比率と金利変動リスクへの対策
次に、項目3、公債費負担比率と項目5、償還可能年数について伺います。
これら2つの指標は区債発行に関するものです。まず公債費負担比率について、5%を超えないと設定しています。一般的に5%でもかなり低い数字ですが、区の過去の実績に基づいて、より抑制的な数値となっています。しかし、公債費負担比率は果たして財政規律を維持する事前統制的な指標になり得るのか。予算特別委員会で、私はこの点についても質問いたしました。なぜなら公債費負担比率とは、古くは20年前、25年も前に起債した区債の元利償還金等の一般財源に対する比率であり、正確な数字は決算後に明らかになるからです。対して財政課は、この指標は中長期的なシミュレーションをし、起債の調整を行うことにより予防的措置への活用が可能との考えを示しました。この財政課の考えが実行できれば、まさに単年度の収支均衡と中長期的な財政の健全性を図るというコンセプトに合致します。しかし、それを実際に行うには複雑な作業と多大な労力を必要とし、また前提とするシミュレーションの精度も課題になると想像されます。
さきに区が答弁した、公債費負担比率を用いた予防的措置について、現段階での検討状況と今後の取組予定について伺います。
項目5の債務償還可能年数については、私は常々、発行済み区債の平均償還年数と対比して見ています。現在の区債の平均償還年数は十七、八年程度、対する債務償還可能年数はほぼ2年未満というのが実態です。つまり十七、八年で返済する借金に対して、数年で返せる財源を保有しており、財源から見れば、本区の区債発行余力はまだ十分にあると私は見ています。
一方、金利状況も区債発行の大きな検討要素です。超低金利の時代が続き、過去5年間で本区が起債したものでも、最も高い利率は0.4%でした。そのような背景から、私は昨年度と今年度、区債充当事業を拡大するなど、区債を最大限活用するよう提案し、区はそうした起債方針を採用しています。しかし、いずれ金利が上昇局面に転ずるリスクはあり、金利動向が急激に変化した場合でも柔軟かつ機敏に対応できなければなりません。
区は区債発行に伴い、金利変動リスクに対してどのような対策を取っているのでしょうか、お聞かせください。
実態として、全国の自治体の中でも、他の特別区とともに杉並区の財政状況は相対的に優良です。しかし、現下ではコロナ対策に引き続き万全を期すことが求められ、長期的には人口減少、少子高齢化、災害、税制度の改正など、幾つもの課題、あるいはリスクを抱えています。そのような中で、杉並区がこれからも長きにわたって区民福祉の向上を推進していくには、健全な財政が必要不可欠であることを改めて訴えたいと思います。
引き続き区民サービスの向上と健全財政の維持の両立に尽力していただきたいと思いますが、所見を伺います。
次の項目、ICT調達について伺います。
議長、ここで資料を提示させていただいてよろしいでしょうか。
答弁
どうぞ。
このグラフは、2020年度までの過去10年間の本区の情報システム運営コストの推移です。具体的には情報システム部門が直接管理する内部情報系と住民情報系のシステム関連と、ネットワークやセキュリティー等の全庁的な情報インフラに関する経費を示しています。この棒グラフは各年度の決算額で、10年前、2011年度は15億7,700万円、2020年度は11億2,700万円でした。一方、折れ線グラフは一般会計における割合であり、2011年度は1.0%、2020年度は0.4%となっています。点線の部分は住民情報系のメインフレームシステムの再構築に要した、過去3年間で合計約20億円に上った投資的経費であり、今申し上げた数字には含まれておりません。
遡ること15年前、2007年度は、この経費は24億8,000万円でした。この辺です。また、一般会計に占める割合は1.6%と、金額では倍以上、割合では4倍という状況でございました。情報システムは専門性が高く、複雑になればなるほど適正価格の検証や効率化を図ることが難しい分野です。にもかかわらず、情報システム部門が直接管理する範囲については、着実にコストの縮減が図られてきており、評価に値するものと考えております。
改めて過去15年間にわたり、情報システムの運営に関わる経費が着実に縮減されてきた経緯、また所管が行ってきた取組等について確認をいたします。
一方で、情報システム部門が直接管理していない各所管における情報化も進んでいます。全庁的な状況は把握しているのでしょうか。また、システムの全体最適化を図るためには、情報システム部門が各所管に対して積極的に関与することが必要と考えますが、所見を伺います。
今やICTやデジタルの情報、また技術が社会や生活の形を変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代へと移っています。本区においても、今年度よりデジタル化推進基本方針に基づく杉並区デジタル化推進計画(第1次)の実行期間に入っています。ICTの効率的な導入、運営を図りつつ、戦略的にICT分野への投資を進める局面に入っていると理解しますが、改めてDX時代におけるICT・デジタル分野への投資に対する区の考えを伺います。
デジタル化推進基本方針では、デジタル技術を活用した区民サービスの向上と行政内部のデジタル化による効率化の推進という2つの大きな方針を掲げています。つまり区民サービスの向上と行政の効率化、これが本区におけるデジタル化の目的であります。杉並区情報システム調達ガイドラインでは、ICT調達においては、業務全体を俯瞰して全体最適に向けた検討や、業務フローや事務処理方法と合わせた改善の視点、ビジネスプロセス改善(BPI)、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(PPR)、さらにはサービスデザイン思考を目指していくとうたっています。我が会派としても、これまで訴え続けてきた内容であります。これらの概念はどのように具現化するお考えでしょうか。
また、具現化の過程においては現状や進捗の見える化が必要であり、区民サービスの向上とデジタル化による効率化の状況を把握し、評価する数値的な成果指標、KPIを設けるべきであると考えます。このことにより、合理的、客観的にICT投資における可否の判断や優先順位づけが可能になると考えます。所見を伺います。
現在、区では、4名のデジタル戦略アドバイザーによる意見、助言を受け、また一方で経費精査では、監査法人の情報システム部門によりコンサルティングを受けるなど、それぞれの局面で外部専門家を活用しています。デジタル化やICT投資、調達には信頼性、安全性、有効性の確保に加えリスク対応など、全体を俯瞰した形でも外部専門家の知見が必要ではないでしょうか。
ICT調達に関する区の所見
最後に、この点についての区の所見を伺って、私の質問を終わります。ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(岸本聡子)登壇〕
財政調整基金の適正規模と大規模災害への備え
御答弁ありがとうございました。区長の区財政に対する認識の変化について再質問させていただきます。
先ほどの御答弁で、区長就任前は財政調整基金の本区の積立額が多いので、もっと何かほかに使えるのではないかとの認識をお持ちであったと御答弁されておりました。例えば令和2年度末時点での23区の財政調整基金残高をちょっと調べましたけれども、額面だけを比べると、杉並区は23区中7位です。そういう意味では、確かに多いように見えます。ただ、積立額の残高を単純比較しただけで財政状況を把握できるものではないというふうに思っております。
まず、杉並区は23区中、人口規模では第6位です。残高が7番目に多いということは、人口比でいくと、決してそうではないということが1点目。
もう一つは、本区には災害対策基金がありません。23区中12区には、財政調整基金とは別に災害対策基金があります。先ほど来お話しさせていただいたとおり、本区の財政調整基金は災害対策基金の機能も兼ね備えていると、それが実態でございます。ちなみに令和2年度末時点での財調基金と、災害対策基金――本区にはありませんけれども、足した額を23区でもう一度比較すると、順位は杉並区は7位で変わらないんだけれども、次の8位、9位、10位との積立額とほぼ拮抗しております。ですから、7位のときもあれば瞬間的には10位にもなるという形で、決して潤沢に財政調整基金があるというふうには、これだけでは見えない。中位程度じゃないかなというふうに私は思っております。
また、先ほど区長は、コロナ対策が健全財政の必要性を認識した一番最大の理由だというふうにお話をされましたが、しかし、想像していただければ分かるかと思いますけれども、首都直下型地震等の大規模災害が発生した場合はこの程度では済まないというふうに思います。今は現実的なところとして150億円という数字を設定しているんだというふうに私は理解しておりますけれども、果たしてこれで十分なのかどうか。これ、さらに検討、精査をして進めていく必要があるというふうに思います。
先ほど政策経営部長が安全、安心のよすが――よすがという言葉も久しぶりに聞きましたけれども――となる財政のダムと述べられた。よすがとは、すなわち、真にしっかり頼ることができるよりどころ、そういう意味だというふうに理解しておりますけれども、そういうことも踏まえた上で効果的な財政のダムを目指していただきたいと思います。改めて区長の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(岸本聡子)登壇〕