人生100年時代を見据えた高齢者施策の推進
杉並区議会公明党の一員として、人生100年時代を見据えての高齢者施策について、健康寿命の延伸について、就労支援について、そして生涯学習について質問を行います。一部の質問が前の議員の御質問と重なる部分もありますが、通告に基づき質問をさせていただきます。
昨年、日本でもベストセラーになった「LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略」が、各方面に多くの反響を呼びました。著者の、人材論、組織論の世界的権威であるリンダ・グラットン・ロンドンビジネススクール教授と同校のアンドリュー・スコット教授は、過去200年間の世界的な長寿化の進行から、先進国においては平均寿命が100歳になるという人生100年時代の到来を予測しています。
同書では、長寿化がもたらす恩恵は、煎じ詰めれば、時間という贈り物であり、人生が長くなれば、目的意識を持って有意義な人生を形づくるチャンスが生まれると、プラス志向で長寿化を捉えています。その上で、長寿化により、人々の働き方や教育、家族、余暇、そして老後の過ごし方など、社会のあらゆる分野において大きな変化が起きることを想定し、個人の人生設計や社会のシステムを人生100年モデルへとシフトすることを提唱しています。
このメッセージに対する受けとめ方は人によってさまざまであると思いますが、この説によると、ちょうど人生の折り返し地点を過ぎた年齢である私にとっては、自身の後半生を、そして未来の社会のありようを新しい角度から見詰め直すきっかけとなる一書でした。
まず、これまでの杉並区民の長寿化の進行状況について確認します。
近年の区民男女の平均寿命と100歳以上人口はどのように推移してきているのか、お示しください。将来予測についてもあわせてお示しください。
また、長寿化、高齢化に伴う社会モデルの変化に対する行政のあり方について、所見をお聞かせください。
昨年、日本老年学会と日本老年医学会のワーキンググループが、高齢者の老化に関するデータの経年的変化に関する報告書を発表しました。それによると、現在の高齢者は10年前や20年前と比較して、加齢による身体・心理機能の変化が起きるのが5年から10年遅くなっており、若返り現象が見られているとのこと。特に65歳から74歳までの前期高齢者においては、心身ともに健康で活発な人が大多数を占めているとの調査結果が示されています。
確かに昔に比べて今の中高年以上の人は、体力的に、また見た目も若くなっているとよく言われます。わかりやすい例えが、人気長寿アニメ「サザエさん」のキャラクターである磯野波平さんとの比較です。盆栽と囲碁が趣味で、時々雷を落とす昭和時代の父親像として描かれている波平さんの年齢設定は、54歳だそうです。タレントのダウンタウンが現在54歳で、歌手の藤井フミヤさんが55歳ですから、今の世代のほうがいかに若々しいかがわかります。芸能人ではない一般男性と比べても同様ではないかと思います。
ちなみに、私は波平さんの3つ下の年齢に当たりますが、同い年に、現役Jリーガー、三浦知良選手がいます。スポーツ医学の発達にもよるものなのか、昔ではとっくに引退していた年齢でも、なお現役で活躍しているアスリートがほかにも多くいます。彼らの姿に勇気づけられている方々も、私を含めて多いのではないでしょうか。
そこで、健康寿命について伺います。
私は、平成26年第4回定例会で、2000年から2010年の10年間で区民の平均寿命が3年延びているのに対して、健康寿命はほぼ横ばいで推移してきたデータを示し、健康寿命の延伸への取り組みを訴えました。
区は総合計画において、東京都保健所長会方式による区民の65歳健康寿命を、平成24年度当時の男性82.5歳、女性85.5歳から、33年度にはそれぞれ84歳、87歳へと延ばすことを目標に健康施策を進めています。現段階における達成状況を確認させていただきます。
来年度からは、国民健康保険の第2期データヘルス計画、第3期特定健診等実施計画の6カ年計画が同時スタートします。これらの計画を一体的に策定したことにどのような意図が込められているのでしょうか。また、健康保持増進のためにどのような取り組みが計画化されているのか、概要をお示しください。
作家の司馬遼太郎氏は、近代以前は歯が寿命の信号だった、漢字の「歯」が年齢という意味を兼ねていることでもそのことがわかると述べています。確かに「齢」という字には「歯」の漢字が含まれており、古来、歯と人の年齢は密接に関連していると考えられてきたことがうかがえます。
本年度より区が進めているフレイル予防の取り組みに、年齢を重ねても食べる力を維持するオーラルフレイルの予防対策が含まれています。口腔機能の維持向上により、低栄養や筋力低下を予防することは、高齢者の健康寿命の延伸に大変重要です。今後のオーラルフレイル予防の取り組みを、全体のフレイル予防による健康増進策の展開とあわせてお示しください。
ちなみに、高齢者を対象とした歯科健診は、歯周疾患の健診のみならず、口腔ケアの役割も果たし、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。区として、80歳を対象とする歯科健診を実施することも有益ではないかと考えます。
高齢者の就労支援について伺います。
平成29年版の高齢者白書によれば、全就業者数に占める65歳以上の割合が平成19年当時は8.3%であったものが、28年では11.9%にまで拡大し、労働力人口に占める高齢者の比率は、この間上昇傾向にあります。また、現在仕事をしている高齢者の4割が、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答し、70歳ぐらいまで、もしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っているとの調査結果が示されています。
元気で行動的な高齢者、いわゆるアクティブシニア層の就業などの社会参画を促進することは、健康維持や生きがい創出、さらには地域の活性化にもつながります。区では、シニアの就業・起業・地域活動応援事業を通して、シニア層の社会参加の支援を行っています。また、公益社団法人杉並区シルバー人材センターでは、請負または委任契約により、臨時的、短期的、そして軽易な仕事を、会員として登録した高齢者に提供しています。
そのほか、区が行っている就労支援としては、就労支援センターがあります。ただ、このセンターについては、開設した平成24年度当時、就労環境が厳しかった若者を主にターゲットとした事業であります。
シニアの就業・起業・地域活動応援事業の実施実績と、相談に来られる方の意識や希望等の傾向についてお聞かせください。
杉並区シルバー人材センターの会員数、会員平均年齢、契約件数、契約金額等の推移についてお示しください。
また、センターが提供する業務内容がいわゆるホワイトカラー退職者の受け皿となり得ていないことが、巷間、課題として指摘をされておりますが、そのことに対する区の考えをお聞かせください。
さらには、区の就労支援センター利用者の年齢層を含む利用状況についてお示しください。
また、就労支援センターがシニアの就業・起業・地域活動応援事業やシルバー人材センターなどと連携を密にすることで、互いの機能が補完され、アクティブシニア層向けのジョブマッチングの精度と量が向上するのではないかと考えますが、所見を伺います。
私は、一昨年、広島市を訪れ、協同労働プラットフォーム(らぼーろひろしま)の取り組みを伺いました。この団体が推進している協同労働とは、地域の課題解決につながる新たな働き方のことであります。60歳以上を中心とする地域住民により構成される多くの自主団体が、メンバーみずから出資者、経営者、そして労働者となり、高齢者の見守り、子育て支援、地域の安全・安心、多世代間の交流といった活動を行っています。株主、経営者、労働者が分かれている株式会社や無償のボランティアでもない、出資、経営を集まった方々全員で行い、責任を分担しながら各自が収入を得るというユニークな運営形態です。
本区のシニア層向けの就労支援においても、このような新しい事業モデルの創出や、起業を含む多様な就労形態や雇用機会の拡大などについて研究を進めてはいかがでしょうか、所見を伺います。
関連して、がん患者の就労支援、生活支援について伺います。
がんは、国民の2人に1人が生涯でかかる可能性がある一方、医療の発達に伴い、その生存率も年々改善してきています。長寿化により、がんにかかる可能性が高まることは避けられない中、がんを経験し、がんとつき合いながらも自分らしく誇りを持って働くことができる社会が理想であると思います。
しかし、厚生労働省の調査によると、働き盛りの世代ががんになると、サラリーマンでは30%が依願退職し、4%が解雇され、自営業者も13%が廃業という厳しい現実があります。こうした現状について、区としての課題認識をお聞かせください。
国の傷病手当金制度、介護休業制度、ジョブコーチ支援制度、さらには東京都の難病・がん患者就業支援奨励金など、さまざまな関連する制度があります。ハローワークやがん診療連携拠点病院の就労相談窓口等と連携をとりながら、区としてもがん患者の就労支援の強化に努めていただきたいと思います。
また、ふだん健康に生活している人ががんと宣告された日から、本人、そしてその家族は、日常の生活から精神的なケアまで、病院では解決できないさまざまな問題に直面することになります。
そこで、例えば治療費と今後の生活設計に関しては、ファイナンシャルプランナーに相談したり、勤め先との関係については、弁護士や社会保険労務士からアドバイスを受けたり、あるいは抗がん剤治療により頭髪や眉毛が抜け、やつれてしまった場合は、美容師やメークアップの専門家の協力を得たりするなど、さまざまな生活上の問題に対応するがんコンシェルジュのようなチームがあれば、安心して治療に向き合えると思います。これには、がん患者の生活を幅広く支える個人、団体間の多面的なネットワークづくりが有益と考えます。こうしたネットワークの必要性について、区の所見を伺います。
1月28日、セシオン杉並で開かれた在宅医療推進フォーラムに参加いたしました。今回のフォーラムの開催テーマは、「40代から始める明るい終活」でありました。ホールをほぼ埋め尽くした参加者の中には、40代、50代と思われる方々も多く見受けられ、こうした世代も高い関心を持っていることがうかがえました。
しかし、仮に平均寿命が100歳になるならば、終活に至るまでにはまだまだ長い時間を過ごすことになります。「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」の中で著者は、これからの長寿社会では、人生の3つのステージからマルチステージへ変化すると予測しています。3つのステージとは、年齢に沿って、教育、勤労、引退を順番にたどる生き方です。それに対してマルチステージとは、生涯で複数のキャリアを持ち、各ステージを行き来したり、あるいは同時に進んだりする生き方を指しています。そして個々人においては、引退後の資金問題にとどまらず、スキル、健康、人間関係といった見えない資産について、できるだけ早いうちから意識し、育んでおくことを著者は提唱しています。
そこで注目されるのが生涯教育の役割です。区教育委員会では、教育ビジョン2012推進計画において、「誰もが学び続け、その成果を活かせる地域づくりを進めます」との目標を掲げ、生涯学習事業を実施しています。改めて生涯学習の意義と目的について、区教育委員会の考えをお聞かせください。
本区の生涯学習プログラムには、すぎなみ大人塾や区民企画の講座のほか、区内大学と連携した取り組みなど、主に地域活動や趣味、教養といった内容のものが多く見受けられます。しかし、これからは、さらに仕事上のキャリアの構築に関係する専門性の高い職業能力や知識の習得といった社会人教育への関心も高まってくるのではないかと考えます。
マルチステージは、決められたレールではなく、人生の進む道が多様化するということであります。それは労働や就労に関していうと、一人一人の専門性や職種は会社が決め、育成も会社が行うというこれまでの終身雇用を前提としたシステムから、個人がみずから主体的にキャリアの選択を行うという形に変わっていくことになります。そして仕事のあり方自体も、人工知能(AI)やロボティック・プロセス・オートメーションといった新技術により、大規模かつ急速に変化することが予測されます。
iPhoneがこの世に誕生して、わずか10年余りの間に世界中を席巻し、人々のライフスタイルに大きな変化をもたらしたように、私たちはこれからも大きな技術革新に遭遇するでしょう。そのような背景から、リカレント教育に関してお尋ねします。
リカレント教育とは、変化する社会に適応していくため、誰でも必要なときに教育機関に戻って、職業的スキルや知識を学べる仕組みのことであります。社会人が一時、仕事をやめ、大学院などに進み、キャリアを構築することなどは、労働市場の流動性が高い欧米では<社会の仕組みとして定着しています。また日本においても、近年、専門職大学院などが普及してきました。
私も、大学を卒業後10年間勤めた商社を退職し、2年間弱、アメリカのビジネススクールで経営学を学び、そこで学んだことを、業界も職種も異なるアメリカの企業への転職につなげた経験があります。17年も前の話ではありますが、当時、準備に際して、関係する情報の収集や専門の相談先を探すのに大変苦労しました。
今日では、多くの海外の有名大学の公開講座がインターネット上で無料で受けられる環境でもあり、区がみずから、キャリアの構築のための専門的な学習プログラムを運営する必要はないと思います。しかし、リカレント教育の裾野が一番身近な自治体である区の生涯教育にも広がることで、これからマルチステージのキャリアを追求する人たちへの支援につながるのではないでしょうか。例えば、リカレント教育に関する情報提供や相談、広報・啓発活動、民間機関や学術機関と連携した事業などに対しては、一定の区民ニーズがあるのではないかと考えます。
生涯学習とリカレント教育の推進
最後に、この点についての区教育委員会の所見を伺って、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕