平成21年11月21日 第4回定例会

杉並区のIT統制と情報化政策の現状・課題

中村 康弘

本日は、杉並区議会公明党の一員として、IT統制について質問を行わせていただきます。
 今日、すべての企業や団体と同様に、杉並区においても、不正経理への対策や個人情報の漏えい阻止、さらには法令遵守などの面において、内部統制の強化は非常に重要な課題であります。内部統制とは、企業や団体等が不正な活動を生み出す余地をできるだけ排除し、組織の健全な活動を確実に実行するために管理する仕組みのことを指します。
 エンロンやワールドコム事件など、企業の財務報告に関する不正事件が発生したことにより、アメリカでは、企業、団体における内部統制システムの必要性が広く認識されるようになりました。
 日本においても、二〇〇六年に金融商品取引法の中で、企業の会計監査制度、コーポレートガバナンスや情報開示などについて取り組みを強化する規制が行われ、いわゆる日本版SOX法が制定されました。これにより、すべての上場企業に対して、財務情報等の正確性を確保する体制が義務づけられました。
 内部統制システムの中で、業務及びマネジメントが健全かつ有効に実施されているかどうかを、コンピューターシステムを利用して監視、統制し、同時に、そのコンピューターシステム自体が健全かつ有効に運用されるように監視、統制していく仕組みがIT統制であります。
 IT統制を考えるにおいて、本区における情報システムは毎年二十億円を超える予算が割り当てられている事業でもあり、また、区の経営に必要不可欠な基幹ツールであることから、改めてその重要性を認識しなければなりません。情報システムにふぐあいや障害、また誤った運用等が発生してしまった際には、業務の執行に致命的な影響を与え、行政サービスの信頼性を損なうことにもなりかねないからです。区のIT導入や活用状況について、特にその有効性と効率性、法令や会計基準、規則などに合致した準拠性、情報処理の信頼性、情報が必要なときに利用できる可用性、そして情報セキュリティーの機密性、これらが全体的に向上し、理想的なIT利用に近づけていけるよう、問題提起もしながら、さまざま質問をさせていただきます。
 まず、これまでの情報化政策の総括を伺います。
 本区は、電子区役所の構築を目標として、地域と行政の情報化に取り組んできました。区の情報化政策に対する現状認識及び課題について、ご所見をお聞かせ願います。
 私及び我が会派は、杉並区におけるIT利用を区役所全体として組織的に推進していくこと、また、人的資源を含むITガバナンスの強化について、以前より議会でも訴えてきました。そしてこのたび十一月一日付で、本区は、福岡県の情報企画監や日本マクドナルド社のシステム&サービスマネジメント部部長などを歴任してこられた溝江言彦氏を初の情報政策監として迎え入れました。
 溝江氏は、一九九九年から六年間、民間登用として福岡県の企画振興部高度情報政策課において情報企画監の任につかれ、いわゆるCIO補佐官のような立場で、県の情報システムの技術基盤や構築方法の統一と標準化、システム運用方法の統一化とデータセンターへの集中化、さらにはシステム開発や保守運用を標準化するための手順書とひな形の作成等に取り組まれました。同時に、ギガビットネットワークのインフラ整備も進めてこられました。二〇〇六年から本年春までは、日本マクドナルド社でシステム連携基盤の構築や社内標準の策定に携わってこられ、全社の統合ビジネスシステムの再構築やITを通した効率的なオペレーションの展開、BPRの責任者として活躍されました。まさに民間企業と自治体におけるシステム構築の現場を熟知した、情報化推進の第一人者と言える方でしょう。いよいよ本区としても本格的に情報化推進に取り組むという強い意思のあらわれであると受けとめており、高く評価をしております。
 改めて伺いますが、本区における現在のCIO、すなわち情報化政策の推進の責任者とは、具体的にどなたを指すのか。また、情報化推進についてはどのような体制で行われているのか、組織の概要についてもお示しください。
 さらには、今回CIOを補佐する情報政策監を民間から登用するに至った経緯についても伺います。
 また、予算配分や行政改革への関与等、同政策監の権限及び役割について、そして、今後同氏に期待することをお答えください。
 また、情報政策監が一人で区の情報政策すべてを推進することは当然不可能であり、同氏の活動を支えるチームや支援体制もあわせて整備しなければなりません。特に、情報担当部門と業務担当部門の協力体制が必要不可欠で、一つ一つのプロジェクトを責任を持って統括、管理していくプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)のようなものが必要ではないかと考えますが、区のご所見をお聞かせください。

情報化基本方針の達成状況と環境変化への対応

中村 康弘

 次に、IT利用の基本方針についてお伺いします。
 本区は、杉並区情報化基本方針を平成十四年十月に制定しております。同基本方針では、電子区役所の構築を目指して、顧客志向の行政サービスの実現、区民との情報共有とパートナーシップの充実、行政経営の革新と情報化推進基盤の確立、さらにはセキュリティー対策の再構築と個人情報保護を目標として、情報化の推進に取り組んでこられました。以来七年を超える歳月を経て、区として、基本方針の達成状況、自己評価をどのように認識されているのでしょうか。
 また、現在区が置かれている情報化の環境変化について、私が以前さまざまな機会でも質問させていただいたBCPや住基法改正等の観点も交えて、区の見解をお聞かせください。
 また、総合計画などと情報化の連動についてはどのような位置づけになっているのでしょうか。さらには、資金計画も含んだ情報化の計画策定はどのように進められているのでしょうか。
 情報化の推進は、区の業務遂行や区民とのコミュニケーションと直接かかわる事項でもあり、区の総合計画や行財政改革の計画と密接に連動するべきであります。予算編成過程や新規事業においても、企画段階から、情報担当部門も交えて機能面と経費面での適正化を図っていくべきであると考えます。

情報システムの全体最適化と評価・調達管理

中村 康弘

 次に、情報システムの全体最適化への取り組みについてお伺いします。
 杉並区の情報システムが各部署ごとに開発、運用されている場合、区役所全体として見ると、大きな無駄を生んでいることも考えられます。このような無駄をなくす全体最適化の取り組みは、IT統制における基本戦略として推進することが必要です。全体最適化を行うためには、全庁的な情報システムにかかわる資産の一元的把握を行うことが、その前提となると考えます。本区としては、どのような情報資産の一元管理を行っていますでしょうか。
 また、例えば使用するソフトウエアや端末の規格、開発する情報システムのインターフェースなどの技術基準における統一化、さらにはデータベースやプラットフォームなどの共通基盤の整備については現状どのように行っているのか、お示しください。
 システム全体の総額費用を抑制するためにも、情報資産の一元管理を、技術的側面においても体系的に実行していただきたいと思います。
 そして、さらに言えば、業務プロセスの効率化や改善活動、いわゆるBPRとあわせた最適化についてはどのように認識し、取り組まれているのでしょうか。業務プロセス自体が非効率な場合、情報システムだけで効率化を行うには限界があります。より本格的に全体最適化を図るために、情報システムだけではなく、業務プロセスの最適化を同時に進める体制を全庁プロジェクトとして進めていくべきであります。
 情報化施策の評価の実施に関してお伺いします。
 さまざまな情報化に関する施策に当初予定したとおりの効果が生じないことも、可能性としては当然考え得る事態であります。情報化施策に関する評価と改善、PDCAのサイクルについてはどのような体制で行われているのでしょうか。大切なのは、日常業務に組み入れた形でのモニタリングや定期的な内部監査などを行い、それらの結果を今後の施策に反映させていく体制であると考えます。
 情報システムの調達、開発、運用の管理について伺います。外部事業者に委託するにせよ、意図したとおりの効果を発揮するシステムを開発、調達するには、仕様書や要件定義書の内容をサービスレベルアグリーメント(SLA)として明確にする必要があります。このような調達、開発における取り組みは、現状いかがでしょうか。
 また、開発コストの積算方法の庁内での標準化や複数事業者による見積もりの比較、また、運用コストも含めたトータルコストの把握等、コスト積算に関する改善はどのように進められているのでしょうか。さらには、調達方法自体にも透明性、公平性を確保した改革、改善の取り組みがあれば、あわせてお示しください。

情報セキュリティ対策の現状と今後の強化

中村 康弘

 続きまして、情報セキュリティーへの取り組みに関してお伺いします。
 本区は、平成十六年にISMSの認証を自治体として全国三番目に取得し、その後ISO27001に移行しました。平成十九年には全庁的なセキュリティーマネジメントシステムを構築するなど、情報システムのセキュリティー対策には、早い段階から高度な取り組みを行ってきたと言えるでしょう。
 一方、先日、藤沢市が自治体として初めて情報セキュリティー対策の格付会社から格付を受けたとの報道がありました。同市が採用しているセキュリティー対策は、十七段階のうち上から四段階目であり、情報サービス会社や金融機関の顧客情報管理と同じレベルにあるとのことです。本件については、費用対効果や利便性と安全性のバランスといったことも考慮しながら、一つのセキュリティー対策の先進事例として研究する価値があると考えます。区のセキュリティー対策におけるマネジメントサイクルについての取り組み状況をお聞かせください。
 また、情報漏えいについては、ハッキング等の外部からの侵入という可能性とともに、内部職員や外部委託職員などの規定違反などに由来することもあり得ます。こういった一般職員を含む内外の職員に対しての対策についてはどのような対策をしかれているのでしょうか。ネットワーク、ITの利用は、デジタルとアナログの両面が密接に結びついているのが実態であり、一〇〇%の安全を守ることは、ある意味イタチごっこに近いでしょう。そういう意味においては、最悪、事故、事件が起こった場合の対策は万全なのか、区の取り組みをお聞かせください。
 セキュリティー対策には終わりはありません。さまざまな状況やリスクを勘案しながら、どこに、どういった情報が、どのような状態で存在し、どういったレベルにおいて、どのようにして守られるのか、これからも継続的な改善の取り組みを積極的に進めていっていただきたいと思います。
 情報技術とコミュニケーションを促進するツールとして、ITは、大量かつ多様な情報を迅速に処理、伝達、共有化することを可能にしました。そして社会経済活動のさまざまな局面において、生産性、効率性の飛躍的な向上をもたらしてきました。また、物理的な距離や時間を超えて、人、物、金、知識、情報を結びつけることにより、新たなサービスや利便性といった価値や文化を日々創造し続けています。他方では、個人情報漏えいやサイバー攻撃、匿名性による中傷など、情報通信技術が持つ負の側面も深刻度を深めているという現実もあります。
 今後も、区は、ITが持つ負の側面への継続的な対策強化と、正の機能を最大限に活用するよう取り組み、区役所内にとどまらず、地域社会全体でその便益を最大限に享受することを目指すべきであると考えます。
 二十世紀の大歴史家アーノルド・トインビーは、加速度を増した技術変革は、同時に社会の変革の速度をも速めていると述べています。今日の情報通信技術の急激な進化は、社会全体のあり方を急激に変化させているとも言えるでしょう。情報化というものは、とめることができない社会変化の流れであります。しかし、情報化それ自体は手段であり、区政運営の目的は、あくまでも区民福祉の増進、区民満足度の向上であると思います。この点についてここで改めて確認をさせていただきまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

答弁

議長(富本卓議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
     〔区長(山田 宏)登壇〕