杉並区がん対策推進計画の策定と区民意識調査
杉並区議会公明党の一員として、がん対策について質問いたします。
私は、一昨年の第3回定例会でも同様のテーマで質問をいたしました。本日は、その後の区の施策の進捗状況や新たな課題、また取り巻く環境の変化等を踏まえて、改めて質問をさせていただきます。
このたび、本区としては初めて仮称がん対策推進計画を策定することが明らかになりました。本区のこれまでのがん対策としては、子宮頸がんワクチン接種費用の助成や検診無料クーポン券の配付、また健康と医療・介護の緊急推進プランで喫緊の課題に取り組むなど、さまざまな施策を進めてきました。これらは、どちらかというと個々の施策の積み上げ、または緊急的な対応という印象でありましたが、かねてより私どもが主張してきたとおり、がん対策は多岐にわたり、内容によっては時間を要するものもあるため、総合的に体系立てて進めるべきであります。
そういう意味では、推進計画を策定するということは、いよいよ本区が腰を据えて本格的にがん対策に取り組む意思のあらわれと受けとめており、これからの展開に大いに期待したいと思います。
まず、この仮称がん対策推進計画に関して伺います。
現在、国や東京都でも、がん対策の計画の改定作業が進められています。厚生労働省は先日、24年度からの次期がん対策推進基本計画の素案を対策推進協議会に提示しました。また、都でも、これまでの推進計画を次の5カ年に向けて新たに改定する運びとなっています。当然、本区の推進計画も、これら国や都の計画との整合性が必要になるでしょう。区の計画を策定するに当たっては、ぜひともがん患者や経験者あるいはその家族の立場に寄り添った内容であってほしいと強く願います。実際に経験した人の生の声が反映される計画策定のプロセスになるよう、工夫を凝らしていただきたいと思います。
仮称がん対策推進計画の策定を決定するに至った背景及び区の考えをお聞かせ願います。区の計画体系上における本計画の位置づけや計画期間、基本的な考え方、また、いつまでにどのようにして策定していくのか等、現段階でわかる範囲でお示しください。
前回の質問で私は、施策のPDCAサイクルの基礎となる今の実態を把握するために、まずは区民のがんに対する考えや患者及び家族の状況等に関する区民意識調査を行うべきではないかと訴えました。区は、昨年1月から2月にかけて、無作為抽出の区民4,500人を対象に、区民検診・がん検診に関する意識・意向調査を実施しました。そのうち2,500人から回答があり、それらを調査報告書としてまとめました。今回はあくまでも検診に関してのみの調査でありましたが、区がこのように真摯に取り組みを始めたことを高く評価したいと思います。
このような調査は、これからも継続的に行っていくべきであります。今回の調査結果について、区はどのような活用を具体的に検討しているのでしょうか。また、がん対策を今後どのような評価、検証、改善のプロセスで効果的に推進していくのか、所見を伺います。
推進計画における目標設定について伺います。新たな総合計画案では、がんによる年齢調整死亡率の数値が施策の指標として説明されています。年齢調整死亡率とは、人口規模や年齢構成が異なる地域の死亡数を基準人口で補正して算出した割合であり、杉並区の平成22年度でのデータによれば、人口10万に対し男性182.9人、女性では90.7人が、がんにより亡くなっていることになります。区はこれを3年後、10年後に向けて引き下げていくことを目指すとしています。区がこのように死亡率をがん対策の中心的な目標と位置づけた背景について、お示しください。
ちなみに、国立がん研究センターのがん対策情報センターで公表されている統計データや国や都の計画で採用されているのは、75歳未満の年齢調整死亡率であります。一方で本区は、全年齢の死亡率を採用しています。この両者の違いはどのような意味があるのでしょうか。また、他の自治体等と比較検討するため同一にする必要性についてはどのように考えておられるのか、ご説明をお願いします。
ちなみに、現状では、本区におけるがんの死亡率は、他の自治体と比較してどのような位置にあるのか。全年齢、75歳未満、どちらのデータでも結構ですが、相対的な状況についてお示しいただきたいと思います。
がん予防と普及啓発、子宮頸がんワクチン接種の現状
次に、がんの予防、普及啓発に関して伺います。
がんの要因はさまざまですが、喫煙や日常の適度な運動、さらには食事の内容等を改善することによってがんの発生を抑制することができ、生活習慣はがん予防にとって大変重要であります。このことは区も十分理解されていると思います。特に喫煙は、がんの原因の中で最大であり、3割程度を占めています。肺がんへのリスクは、たばこを吸わない人に比べて4倍程度高く、また肺がんだけではなく、胃がん、食道がん、肝臓がんなどの発生にも影響するとされています。周囲の人々の受動喫煙による健康被害の問題もあります。
厚労省の次期基本計画の素案では、成人喫煙率を今後10年間で現状の19.5%から12.2%にまで減らし、受動喫煙の機会も、行政機関と医療機関では0%、家庭でも3%に下げると、喫煙に関して初めて目標値を明示しました。今後、区としても、たばこが健康に及ぼす影響について広く区民に啓発を進めるとともに、区内の公共的な施設においても禁煙、分煙の受動喫煙防止対策を、関係機関とも連携をとりながら積極的に推進していくべきであると考えます。区の所見を伺います。
子宮頸がん予防ワクチン接種の助成について伺います。この事業は、一昨年、本区が全国でも先駆を切って実施を表明し、今では多くの自治体でも推進されています。これまでの接種状況について報告を願います。
また当初、平成23年度までとされていた国の子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例基金については、先日成立した第4次補正予算に盛り込まれており、24年度末まで延長されることになりました。本来であれば、こうした事業は恒久的な仕組みにして、補正予算ではなく当初予算の中に入れるべきであり、あるいは定期接種への移行を検討するべきであると考えます。区としては、本事業について今後どのような考えで取り組むのか、所見を伺います。
また、子どもや若年世代のときから健康と命の大切さや健康管理について理解し、がんという病気やがん患者に対する正しい認識を持つことも大切です。学校現場におけるがんに関する教育の機会について、実態をお示しください。さらには、がん検診の対象年齢に満たない区民若年層へのがん予防の普及啓発はどのように推進されているのでしょうか、今後の方向性とあわせてお示しください。
がん検診の推進と受診率向上への取り組み
次に、がん検診の推進、受診率の向上への取り組みについて伺います。
がんの早期発見・早期治療のためにも、検診を受けることは大変に重要です。現在区では、胃がん、肺がんのエックス線検査、大腸がん便潜血検査、子宮頸がんの細胞診検査、乳がんのマンモグラフィー検査等を実施しています。また、区の実施以外にも、勤務先での職域検診、あるいは健康診断や人間ドック等個人的に検診を受ける場面があり、それぞれにおいて受診率向上に向けた効果的な取り組みを進める必要があります。
それぞれにおける受診率については、国は3年ごとの国民生活基礎調査でその実態を把握しており、最新の調査は平成22年に行われています。それに対して本区においては、これまでは区が実施するがん検診の受診率しか把握できていませんでしたが、さきの区民の意識・意向調査により、他の受診機会における同等のデータも初めて得ることができました。
これらの調査から、全国と本区におけるそれぞれの受診率を比較しますと、以下のようになります。若干数字が続きますが、ご紹介いたします。
胃がん検診では、男性、全国34.3%、杉並区37.1%。胃がん検診女性、全国26.3%、杉並区24%。肺がん男性、全国24.9%、杉並区64.7%。肺がん女性、全国21.2%、杉並区51%。大腸がん男性、全国27.4%、杉並区49.5%。大腸がん女性、全国22.6%、杉並区43%。子宮頸がん、全国32%、杉並区43.3%。乳がん、全国31.4%、杉並区35.3%。
これから、これらの数値についての精緻な背景調査や分析が必要と思われますが、データを見るにおいては、杉並区民の受診率は、女性の胃がん検診以外はすべて国を上回っており、特に肺がんと大腸がん検診については、男女とも5割近いあるいは5割を超えている状況です。全体の平均では42.3%の受診率となっています。
国は、トータルの受診率として50%を長期的な目標としています。本区の推進計画においても50%以上あるいはもっと高い目標を掲げ、さらに受診率向上の取り組みを進めていただきたいと思います。区の考えをお聞かせください。
また、これまで特に受診率が低いとされてきた女性特有のがん検診については、私たちもポスター等で広くPRをしてきた乳がん、子宮頸がんの検診無料クーポン券の効果もあってか、国の平均を上回る受診率となりました。また今年度からは、大腸がん検診無料クーポン券の配布事業も開始しています。
さらに区は、昨年5月には、「杉並区がん検診のお知らせ」という各種がん検診について説明したリーフレットを作成し、区内の全戸に配布を行いました。これには複数のがん検診の申し込みが一度にできるはがきも同封されており、大変好評で、申込者も多数あったと伺っております。
区のこういった努力を高く評価する一方で、見方を変えれば、まだ半数以上の区民が受診していないということでもあります。意識・意向調査報告書によりますと、検診を受診しようと思わなかった理由として、「家事や仕事が忙しく時間がないから」が24.3%で最も多く、次いで「今は健康なので自覚症状が出てから受ければよいと思うから」が23.3%との結果が示されています。特に30代、40代の男性では、「申し込み方法がわからないから」という回答が三十数%に上っており、特徴的な結果が示されました。
これらの調査結果は大変示唆に富むものです。検診率のさらなる向上のためには、継続的でわかりやすい周知方法、年齢や生活実態により対象者を絞った勧奨、受診機会の拡大や利便性の向上が効果的と思われます。今回の調査を受けての今後の区の取り組み方針について考えをお聞かせ願います
がん患者と家族への情報提供とピアサポート
続きまして、がん患者と家族に対する支援について伺います。
現在のがんの主な治療法には、手術のほか放射線療法、抗がん剤などによる化学療法があり、単独もしくはこれらを組み合わせたさまざまな手法が行われています。がん治療については日々新たな技術が開発されており、先日もNHKの朝の情報番組で、予防ではなく治すがんワクチンが紹介されていました。まだ臨床試験の段階ですが、人体の免疫能力を活性化させ、がん細胞を攻撃し、副作用が少なく、延命効果が認められるという画期的なワクチンで、番組の反響も大変大きかったとのことです。これからの展開に大きく期待するところです。
最近の医療では、患者が医師から治療について十分な説明を受けた上で、同意をもって治療を進めていくというインフォームド・コンセントが重視されており、がんは特にインフォームド・コンセントが重要な病気であると言われています。そのような環境の中で、がん患者はどのような医療を受ければよいか、どのような療養生活を送っていけばよいのかなど、自ら選択をしていく自己決定が必要な場面に遭遇することになります。
そういう意味でも、がん及び治療生活に関する情報というものは、患者や家族にとっていや増して欠かせないものとなっています。これらの情報は、今日、インターネットを初めちまたに多く見受けられますが、一方的に提供される場合が多く、当事者が主体的に選択できるような提供方法や情報選択へのサポートについては、まだまだ十分とは言えません。
ついては、既に発信されているがんや医療に関する情報を整理して、近隣地域の医療体制、在宅、福祉、介護など、点在するさまざまな情報の中から区民が主体的に選択できるように、例えば専用のホームページの開設や「広報すぎなみ」でも定期的にコーナーを設けるなど、区民とのコミュニケーションの場で充実した情報提供に努めるべきであると考えます。所見を伺います。
さらには、当事者でなければなかなか理解ができないがん患者及び家族の社会的や精神的な不安や悩みを軽減するため、がんの経験者によるがん患者サロン等のピアサポートを推進し、区がそれをバックアップしていくという体制が有意義であると考えますが、区の認識をお聞かせください。
在宅医療・緩和ケアと胃がん対策(ピロリ菌検査)
次に、在宅医療、在宅緩和ケアについて伺います。
がん患者が住みなれた家庭での療養を希望される場合、在宅療養支援診療所や訪問看護ステーション、訪問歯科医、薬剤師、介護事業所、心のケアの専門家、あるいは患者を支えるボランティアなどが連携してチームを組み、24時間のケア、場合によってはみとりまでできる体制の整備が求められます。
また、近年のがん治療では、がんと診断されたときから、治療と並行して緩和ケアを行うことが重要視されています。これまでは、緩和ケアは終末期医療との偏見や医療用麻薬への誤解などがありましたが、治療と並行した積極的な緩和ケアは、療養生活の質を向上させ、結果、生存期間も長くなるとされています。いつでも安心して、希望するところで療養生活ができる社会基盤が必要です。区は、昨年7月に在宅医療相談調整窓口を開設しました。この事業の主な目的は、高齢者の在宅療養生活を支援することであると理解しております。
一方で、がんにおける在宅療養生活は、患者が在宅に移ってから生活を送る期間や、また容体が変化する度合いに関しても、高齢者のケアとは基本的に様相が異なります。在宅医療相談窓口など区の資源を在宅のがん患者や家族のためにも有効活用できるよう、専門的ながん治療や在宅緩和ケアなどを支援する体制を強化していってはどうか、所見を伺います。
続いて、胃がん対策、特にピロリ菌検査について伺います。
日本は、先進国の中でも胃がん発生率が非常に高い国です。日本がん予防学会理事である北海道大学特任教授・浅香正博氏の「わが国から胃癌を撲滅するための具体的戦略」という論文が、平成23年度日本医師会医学賞を受賞しました。浅香教授によれば、胃がん患者の95%はピロリ菌に感染しており、ピロリ菌がない人はほとんどが胃がんにならず、ピロリ菌を除菌することにより、胃がんの発生を3分の1以下に抑制できるとのこと。特に若い世代に対してピロリ菌検査を行い、感染している場合は、除菌すればほとんどの胃がんの予防が可能になるとのことです。
ピロリ菌は1982年に胃粘膜から発見され、その後、胃がんとの関係性が明らかになりました。1993年には国際がん研究機関(IARC)が、胃がんの原因の1つはピロリ菌との結論を出しています。日本においては昨年2月、公明党の秋野公造参議院議員の国会での質問主意書に対し、厚労省が、胃がんとピロリ菌との関係を遅ればせながら認める回答を行いました。
長野県飯島町では、胃がん撲滅キャンペーンの一環として、約5,000円かかるピロリ菌感染検査の費用のうち約3,500円を町が補助、また平成21年度からは、成人式の出席者に無料で呼気試験をする方式を取り入れております。23区では足立区と目黒区がピロリ菌検診を実施しています。現在、本区での胃がん検診は、主にバリウムを飲んでレントゲン撮影を行う方式がとられていますが、私自身も含めて、バリウムを飲むことに抵抗感を持つ人は少なくないと思います。本区も胃がん撲滅を目指して、このようなピロリ菌検査及び除去の取り組みをされてはいかがでしょうか。
また、胃がん検診における新しい試みについては、昨年、我が会派の川原口宏之議員が内視鏡検査の導入について訴え、区は検討を進めていくとのことでしたが、改めて現在のお考えを伺います。
小児がん対策の認識と支援体制の構築
最後に、小児がん対策について伺います。
小児がんは子どもの死亡原因の第1位で、全国で年間2,000人から2,500人が発症しています。本区でも平成22年に3名の尊いお子さんの命ががんにより失われました。小児がんの種類としては、白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫などが多く、また治癒した場合でも、後遺症による発育発達障害や臓器障害に加え、二次がんを発症することもあり、患者や家族はさまざまな問題を抱えています。
小児がんは、成人に比べ症例が少なく、習熟した専門医の不足や拠点病院が少ないことなどが大きな課題となっています。専門医の育成や拠点病院の整備などは、国や都にとっての急務の課題ではありますが、区としても、患者や家族が安心して適切な医療を受けられるよう、でき得る限りの支援体制を整備するべきであると考えます。
本区としては、小児がんに対してどのような認識を持たれているでしょうか。推進計画においても、患者と家族の支援体制の構築を検討していただきたいと思いますが、区の考えを伺います。
笑顔と希望あふれる安心の健康長寿社会を目指して、本区の命と健康を守るがん対策が大きく前進していくことに改めて期待を寄せ、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕