健康長寿社会実現に向けた杉並区の取り組み
杉並区議会公明党の一員として、健康長寿について質問いたします。
私の家の近所にNさんという、ことし94歳になる女性がいます。Nさんは、週3回ヘルパーに家事の手伝いを受けながら、1人で自立した生活を送っています。新しい友人をつくっておしゃべりをするのが大好きで、近所の方々からも慕われ、笑顔の絶えない日々を過ごされています。
体はどこも悪いところがないのですが、ことしの夏は食欲が少し落ちて2キロほどやせてしまい、本人いわく2歳年をとったとのことでした。少し心配になり、先日お邪魔をさせていただきましたが、5歳で関東大震災に遭遇したときのことや、今とは全く異なる様相の戦前、戦中の青梅街道沿いのまちなみについて等々、非常に鮮明な記憶に基づいて約2時間にわたり興味深いお話を聞かせていただき、相変わらずのお元気な様子に安心しました。
これからのさらなる高齢化、長寿命化の時代に、Nさんのように高齢期の充実したクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を迎えるためにも、健康な状態を保持していくことがいや増して重要になってくると言えましょう。
先日発表された厚生労働省のデータによりますと、昨年の日本人の平均寿命は、男性が79.44歳、女性が85.90歳でした。世界の中でも男性は8位、女性は1985年以来保っていた1位の座は明け渡したものの第2位の長さで、日本人は世界有数の長寿の国民であることに変わりはありません。杉並区民においては、平成21年の時点で男性、女性それぞれ80.66歳、87.04歳と日本人の平均を上回っており、全国の区市町村の中で12位、172位と、長寿国の中でもさらに長寿を誇っている区であります。
では、健康寿命についてはどうか。平成22年度における本区の65歳健康寿命は、男性で82.56歳、女性85.58歳とのデータが示されております。この年数について、他の自治体との比較においては相対的に現状どのような状況にあるのでしょうか。
基本構想において「健康長寿と支えあいのまち」という目標を本区は掲げており、総合計画でも10年後の65歳健康寿命を男性で84歳、女性は87歳まで延ばしていくという具体的な目標を設定しています。この健康寿命の延伸の10年間の目標はどのような考えで進めていくのでしょうか。また、今後10年を見据えたときに、時代とともに、都市環境や社会の仕組みあるいは高齢者のライフスタイル等、さまざまに健康に対する社会状況の変化が起きることが考えられます。区はどのような認識をお持ちでしょうか。
健康寿命に関する国レベルの取り組みについては、この7月、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針が全面的に改定されました。これに基づき、平成25年度から34年度までを期間とした21世紀における第2次国民健康づくり運動、いわゆる健康日本21(第2次)が進められることになります。この中で、健康寿命の延伸の目標が指標化されて盛り込まれています。
同じ健康寿命でも、区と国では、その定義や計算において異なった方式が採用されています。区の65歳健康寿命は、65歳の人が何らかの障害のために要介護認定を受けるまでの状態を健康と考え、その障害のために認定を受ける年齢を平均的にあらわすものと定義し、65歳平均自立期間に65を足して計算する東京保健所長会方式を採用しています。
一方、健康日本21では、入院や介護を受けるなどせず日常生活を支障なく暮らせる期間として、国民生活基礎調査データをもとにしたサリバン法という計算方式を採用しています。この方式によりますと、男性は70.42歳、女性が73.62歳、区の65歳健康寿命とは年数が大きく異なります。この双方の方式の違いについてご説明をいただきたいと思います。そして、本区が現行東京保健所長会方式を採用している理由をお聞かせください。
ところで、本区においては、今年度、区制施行80周年記念事業の一環として、80歳の区民を対象とする健康長寿モニター事業に取り組んでおります。この事業の概要及び現在における進展状況についてお示しください。さらに、これらの調査結果については今後どのように施策の展開に活用していくお考えか、区の所見をお聞かせください。
健康寿命の延伸には疾病予防が大変重要です。本区の疾病予防に関する施策としては、生活習慣病、特にメタボリックシンドローム予防のために保健所が実施している杉並ウエストサイズ物語、また国民健康保険の事業として、国保加入者で40歳から74歳の方を対象にした特定健診、特定保健指導などを主に行っています。これらの事業のこれまでの成果についてはどのように認識をされているのでしょうか。また、単なる受診率や参加人数だけを指標とするのではなく、定量的に分析、評価できるものでなければ、効果的な対策や改善策をとりづらいのではないかと考えますが、この点について区の見解をお聞かせください。
疾病予防及び重症化予防の取り組みにおいては、まず現状を的確に把握する必要があり、そのためにレセプト、すなわち診療報酬明細書のデータをしっかりと分析することが有効であると考えます。レセプトデータとは、ある方が国民健康保険などの公的医療保険を使って診療を受けた際、初診料から手術費用、薬代までそれぞれに、その患者に対して実施された医療行為の1つ1つの情報であります。
国保におけるレセプトのデータは、医療機関からまず各都道府県の国民健康保険団体連合会に送られ、そこから杉並区などの保険運営者に送付されます。以前は紙の書類で処理されていましたが、業務としても非効率であり、診療データを有効活用することも困難なため、情報を電子化し、オンラインで送る仕組みが始められています。杉並区も加盟している東京都国民健康保険連合会におけるレセプトの電子化に対して、これまでの経緯と現状について、概要をお示しいただきたいと思います。また、電子化されたことにより改善された点、一方で、これからの課題と感じている点についても所見をお伺いいたします。
レセプトデータの活用については、電子化されたデータベースからデータマイニングを行うことで、紙ベースではできなかった複雑な抽出、分析が可能になります。この方法を活用しての広島県呉市における生活習慣病予備群を対象とした医療訪問指導や糖尿病性腎症の重症化を予防するプログラムなどの取り組みは有名です。
電子化されたレセプトのデータ分析を通して、特定健診、特定保健指導についても、40歳から74歳の全加入者という広いターゲットの中から、例えば過去の健診の受診歴や治療未受診や治療中断の可能性がある人の把握、あるいは全体の疾病構造や生活習慣病と他の疾病の併発状況等の分析を通して、効果的で効率的な保健事業が可能になると考えます。
これらのことを参考にした上で、医療専門家の協力も受けながら、本区においても電子レセプトのデータベースを区民の健康づくりに役立てていってはどうか。区はいかがお考えでしょうか、所見を伺います。
がん対策に関連して質問します。
がんは、本区も含め日本国民の死亡要因の断トツの1位であり、約3割の方々ががんにより亡くなっています。私自身、これまでも再三主張してきたとおり、がん対策は区民の健康増進、健康寿命の延伸に避けて通れない課題であります。今、区は、杉並区がん対策推進計画の策定作業を進めているところです。杉並区として、がんと敢然と闘う決意のみなぎる計画ができることを心から期待しています。現在どこまで進んでいるのでしょうか、進捗状況をお示しいただきたいと思います。
がんの早期発見・早期治療のためにも大変重要ながん検診については、その受診率の向上への取り組みは継続的に進め、トータルとして50%の目標を早急に達成するためのフォロー体制の強化が必要です。具体的には普及啓発の強化、費用負担の軽減、利便性の向上が検診率の上昇に結びつき、さらには検診の精度の向上とあわせて総合的に進めていくことが重要であると考えられます。これらの事項について、区も同じ考えであると理解しておりますが、今の取り組み状況、今後の展開について改めて確認をさせていただきます。
歯の健康な状態を保つことも、健康寿命の延伸には大変重要です。このことは、歯科口腔保健の推進に関する法律が昨年の8月に制定されたことを受け、昨年の第3回定例会でも訴えさせていただきました。
平成21年、首都大学東京と東京都港区芝歯科医師会との共同研究、「都市住民の歯科受診者における口腔ケア行動と口腔衛生の関連」という研究結果が発表されました。それは、42の医療機関の受診者約2,900名の歯と他の部分の健康状態を分析したもので、かかりつけ歯科医など歯のメンテナンスや予防を主な目的として歯科医院を受診している人は、口腔ケアがすぐれ、外出する頻度が高く、また自分が健康であると判断する主観的健康感が高くなる、そして歯科治療がその支援に寄与している可能性が示唆されるというものです。
これらの研究からも、80歳で20本の歯を残す8020運動の推進など、生涯にわたって口腔の健康を保持増進することは、健康維持のために非常に大切であることを改めて強調したいと思います。健康寿命の延伸における歯科医療、特に健診等により丈夫な歯を維持することの重要性について、改めて区の認識を伺います。
昨年10月に、杉並区歯科保健医療センターがハーモニーすぎなみとして装いも新たに荻窪の保健所にオープンして以来、約1年がたちます。立地条件がよくなったこともあり、利用者も増加していると伺っていますが、同センターの運営状況はいかがでしょうか。また、さらなる改善に向けての課題等について、区はどのように把握、認識しているのでしょうか。
また、新装オープンとともに新規事業として行われている有病高齢者への訪問歯科診療については、杉並区歯科医師会の自主事業として実施されています。在宅高齢者の健康保持という観点で、いろいろな立場で区も協力していくべきであると考えます。本事業における今後の支援体制について、区の考えをお聞かせ願います。
高齢になると食べ物を飲み込む機能が衰え、義歯の汚れなどもあり、誤って歯周病菌が気管支や肺に送り込まれ、誤嚥性肺炎を引き起こすことが知られています。肺炎にかかると命に及ぶ危険に直面することもあります。また、食べ物がかめなくなり、そのせいで顔の筋肉が衰え、顔だちが変わる、発音が不明瞭になる、脚力やバランス能力などの運動機能が低下するといったことも言われています。それゆえ、胃ろうをなるべく避け、自らの口で物を食べる摂食や嚥下の機能を維持していくことについての関心も高まっています。
一方で、本区の成人歯科健診は、50歳以降では60歳、70歳しか対象となっていません。そこで、かかりつけ歯科医のさらなる普及、あるいは例えば高齢者歯科医療健診のような事業を創設することなどにより、歯の病気の早期発見・早期治療ができる体制を充実させてはいかがでしょうか、所見を伺います。
骨粗鬆症予防と健康長寿施策の推進
最後に、骨粗鬆症について伺います。
それまで元気であった高齢者が転倒等により足の骨を折り、寝たきりや要介護となることがたびたびあります。加齢とともに骨密度が減少することにより、骨折しやすくなるという骨粗鬆症は、特に女性に多いとされています。予防としては、若いときからの食生活や、運動を心がけて骨密度を高めておくことが、将来の骨折リスクを減らすことにつながります。
本区においては、各保健センターでの母親学級のプログラムの中で骨密度の測定が行われています。これは比較的簡易な形で行われる測定でもありますので、さらに幅広い方々にも気軽に測定できるような体制を検討されてはいかがでしょうか。
また、以前横山議員からも訴えさせていただきましたが、骨粗鬆症の健診事業を本区においても導入することを重ねて要望したいと思いますが、区の考えをお聞かせください。
本日は、医療に関する事柄を中心に健康長寿への取り組みについて質問、そして要望や提案をしてまいりました。1つ1つが区民の健康保持にとって大切なものであり、区としても真摯に向き合い、前向きに検討を進めていただきたいと思いますとともに、世界保健機構(WHO)が、単に病気や障害でない状態にとどまらず、フィジカル(身体的)、メディカル(医学的)、メンタル(精神的)、スピリチュアル(生きがい、前向きな姿勢)に良好である状態と、健康について定義しているとおり、高齢者の生活のあり方、社会や他人とのかかわり合い、さらには心の健康といったことも含めた総合的に健全なライフスタイルという考え方でも、健康長寿社会を築いていくべきであります。
区の健康長寿に向けての施策のさらなる推進を通して、1人1人が健康で、長生きで、笑顔で、大満足の人生を謳歌していける社会が一段と進んでいくことを期待しまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕