令和4年5月23日 第2回定例会

杉並区の健康増進策と65歳健康寿命の延伸

中村 康弘

杉並区議会公明党の一員として、健康増進について質問を行います。
 昨年、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーが全国の男女1万5,000人を対象に行った調査によると、コロナ前と比較して健康意識が高まったと39%の人が回答し、最も多く、次いで、病気を予防することが大切だと一層思うようになったが34%に上りました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、2年以上が経過し、人々の健康に対する意識や価値観にも変化が起きていると思われます。杉並区では、健康長寿の地域社会の実現を目指して、平成26年に杉並区健康づくり推進条例を制定しました。また、新基本構想でも、「『人生100年時代』を自分らしく健やかに生きることができるまち」と掲げており、健康増進や健康寿命の延伸は区政の最重要課題の一つであると言えます。
 本日は、ウィズコロナ、アフターコロナにあって、将来像を区民と共有しながら健康増進を大きく広げていただきたいとの思いから質問をいたします。
 まず、65歳健康寿命について伺います。
 区では、総合計画の健康・医療分野における主要な成果指標に東京都保健所長会方式による65歳健康寿命を用いています。これは、65歳の人が何らかの障害のために日常生活動作が制限されるまで、具体的には要介護に至るまでを健康な状態と定義し、その平均的な年齢を表したものであります。これは前の総合計画から引き継がれており、約20年間に及ぶ長期的な成果指標です。前の総合計画では、平成23年度当時の区民の65歳健康寿命、男性82.5歳、女性85.5歳を10年後の平成33年度、すなわち令和3年度時点でそれぞれ84歳、87歳まで延伸させるとの目標を設定しました。これに対し、公表されている令和2年度のデータでは83.7歳、86.9歳と、9年間で男性1.2歳、女性1.4歳延伸し、目標達成へあと一歩のところまで来ています。前の総合計画における65歳健康寿命の目標は、最終的に達成できたのでしょうか。令和3年度の結果はいかがであったか。この10年間の区の取組の総括と併せて伺います。
 65歳健康寿命を公表している他の自治体と比較して、本区は相対的にどのような状況にあるのか、お聞かせください。
 また、現総合計画では、令和12年度の目標を男性84.4歳、女性88.2歳と設定しました。この値を目標とした根拠について伺います。
 また、目標達成に向けて、区はどのような推進体制を組み、どのような施策事業を展開しているのか、確認をいたします。
 近年、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング(EBPM)と呼ばれる、エビデンスに基づく政策立案の在り方が注目されています。EBPMは目標に向けた取組と期待する効果との間の論理的な因果関係、すなわちロジックモデルがあることが前提となります。風が吹けば本当におけ屋はもうかるのか。構成するエビデンスの分析と検証、そして、それらの因果関係を正確に把握することが求められます。このことは健康増進策に限ったことではなく、全ての区の施策に通じる考えであると思います。効果の評価や区民への説明責任を果たすためのロジックモデルの構築について、区の所見を伺います。
 65歳健康寿命は、人の生存、死亡や健康、不健康に関わる総合的な指標であります。そして、そこには元の平均寿命の延び、医療技術の発展や医療資源へのアクセス、感染症などの蔓延状況、人々の健康に対する意識や行動、さらには生活や社会の環境など、複合的な要素が絡み合っていると考えられます。65歳健康寿命の延伸について、現状、区はどのようなロジックモデルに基づき、どのようにエビデンスの分析を行い、施策の展開に結びつけているのか、お聞かせ願います。
 指標に関しては、国が定める健康日本21においても健康寿命が採用されています。しかし、これは区の65歳健康寿命とは算出方法が異なります。国のほうは、3年ごとに実施する国民生活基礎調査における健康上の問題で日常生活に影響があるかとの質問に対し、ないと答えた回答を健康、あると答えた回答を不健康とみなし、その回答結果からサリバン法により算出するものです。つまり個人の主観的健康観に基づいているのが国の健康寿命です。
 それに対して、区の65歳健康寿命は介護保険の認定結果に基づいており、客観性があります。また、区が保有するデータによるため、速報性にすぐれているという利点もあります。ただ、要介護1以下は健康、要介護2以上は不健康と機械的に分類することに対しては、個人によって感じ方が異なるとの意見もあり、また、主観的健康観と死亡リスクに相関関係があることを認める研究も多くあります。この主観的健康観については、本区でも区政相談課が区民意向調査で満18歳以上の3,000人の区民を対象に毎年、健康推進課が生活習慣行動調査で満20歳以上の2,500人の区民を対象に3年に一度調査を行っています。前者は85%前後、後者は80%強が健康との回答で例年推移しています。区は、これら主観的健康観についての調査結果をどのように分析し、活用しているのでしょうか、お聞かせください。
 健康づくり推進条例では、全ての区民が健康についての関心と必要な知識を持つこと、区民、事業者、関係団体及び区が協働して健康づくりに努めることをうたっています。したがい、65歳健康寿命も広く区民に認識、共有されてこそ意味をなすものと考えます。
 しかし、私は、その数字の示す意味が一見して少し分かりづらいのではないかとの印象を持っています。つまり、国の健康寿命の令和元年のデータでは、平均寿命との差が男性で8.7年、女性で12.1年あり、この不健康な期間を極力短くするために健康増進を目指すという、そういう意図が分かります。
 一方、65歳健康寿命は、平均寿命から引き算をして示されるものではありません。例えば令和元年の実績では、女性区民の平均寿命が88歳で、65歳健康寿命の86.9歳を1.1年上回っています。ただ、それは、不健康な期間が平均1年程度しかないという意味ではないのです。男性については、平均寿命82.3歳に対して65歳健康寿命は83.7歳と、健康寿命のほうが長くなっています。これらはどういうことなのか。成果指標としての65歳健康寿命は、多くの区民によく理解され、共有されるべきであり、数字の意味や現状値、平均寿命との関係性など、分かりやすく工夫して説明していく必要があると考えますが、所見を伺います。

健康づくり推進条例に基づく施策と後期高齢者の健康増進

中村 康弘

 次に、条例に基づく施策指標について伺います。
 健康づくり推進条例では、区長の附属機関である杉並区健康づくり推進協議会の意見を聞いた上で、区の健康づくり推進に関する施策の目標設定及び評価を行うとされております。改めて同推進協議会の役割、メンバー構成、活動状況について確認をいたします。
 そして、その協議会の意見に基づき、区では体の健康、心の健康、歯と口腔の健康、健康づくりを支える社会環境の4つの分野で45の指標、51の評価項目を設定しました。それらは令和3年度までを期間としています。がん検診や国保特定健診の受診率、新規人工透析患者数、個人の野菜の摂取量、減塩――塩分を減らす――を心がける者の割合、日常生活における1日当たりの歩数、ヘルシーメニューの推奨店の数など多岐にわたっています。それぞれのデータの出典も人口動態調査、生活習慣行動調査、国保レセプトデータ、事業実績や東京都の調査など多種多様です。令和3年度の実績を踏まえて、これらの指標、評価項目の達成状況を確認いたします。
 多岐にわたる指標の中には実行計画や保健福祉計画、あるいはデータヘルス計画等でPDCAのプロセスが明確になっているものもあれば、そうしたことが明確ではないものもあります。条例に基づくこれらの指標は、区の保健福祉計画の資料編に掲載されているのですが、計画体系の中ではどのような位置づけとなっているのでしょうか。また、どのようなプロセスでPDCAが行われているのか、確認をいたします。
 指標の中には、単に減らすとか増やすなど、具体的な数値が示されていないものが全体の約3分の1、14個あります。減らす、増やすとは、どの程度のことを指しているのか。もう少し具体性を伴った指標設定が求められるのではないでしょうか、所見を伺います。
 また、これらの指標は現在見直し作業が行われていると理解しますが、今後のスケジュールを伺います。
 また、コロナなど、前回から社会環境が大きく異なっており、これまでの見直し作業で検討されてきたポイントをお示しいただきたいと思います。
 続いて、後期高齢者の健康増進について伺います。
 今、申し述べた条例に基づく指標は、特に中年期や前期高齢期における生活習慣病の予防や管理に関するものが多く見受けられます。国民生活基礎調査によると、要支援または要介護と認定された人の介護が必要になった主な原因のうち、高齢による衰弱、すなわちフレイルによるものが全体の16.1%を占めています。これは認知症、脳卒中に次いで3番目です。したがい、特に後期高齢者にとっては、フレイル予防が健康寿命の延伸への重要なアプローチとなります。
 今さら申し上げるまでもありませんが、フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下して要介護状態、そして死亡などの危険が高くなった状態を指します。そして、適切に対応を行えば、予防、あるいは一時的にフレイル状態になっても回復できるという可逆性があるとされています。本区では、平成29年度よりフレイル予防による高齢者の健康づくりを推進してきました。この5年間の取組の総括と評価について、所見を伺います。
 後期高齢者健康診査は、東京都広域連合からの委託事業として区が行っていますが、受診率が平成28年度の59.2%から令和2年度では50.1%へと、2割近く低下しています。令和2年度はコロナによる受診控えが影響したものと考えられますが、既にコロナ前の令和元年度までの3年間でも受診率は低下傾向をたどっていました。ただし、これは杉並区だけではなく、東京都全体でも同様の傾向にあるようです。区としても、都と連携を取りながら受診率低下の原因調査と対策に努めていただきたいと思います。
 その後期高齢者健診は、令和2年度以降、制度改正が行われ、フレイルの予防、重症化予防に着目したフレイル健診が進められています。受診者は健康状態、心の健康状態、食習慣、口腔機能、体重変化、運動・転倒、認知機能、喫煙、社会参加、ソーシャルサポートの10類型、15項目の質問に答え、それぞれの回答結果を、国保データベースに登録されている健診、医療、介護のデータと照合し、フレイルのリスクがある高齢者の支援につなげるという仕組みであります。フレイル健診による高齢者の健康状態を支える取組について、本区における事業の概要と今後の事業展開をお聞かせください。
 コロナ禍における受診控え、健診控えについて伺います。
 杉並区国民健康保険第二期データヘルス計画中間報告によれば、本区の過去5年間の国保医療費総額は、平成28年度の369億円から360億円台で推移していたものが、令和2年度には340億円へと大きく減少しました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、一般診療の受診控えが起きたことによるものと推察されております。また、国保の特定健診も令和2年度は41.2%と、平成20年度以降で最低の受診率でした。
 がん検診も同様の傾向にあります。昨年、第2回定例会の一般質問にて、区のがん検診の受診状況について確認をいたしましたが、令和2年度の実績では、区民健診の制度変更があった肺がん検診を除いて、子宮頸がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんの各がん検診は対前年度比で1割程度低下しました。胃がん検診は、精度管理上の問題から一時期中止となっていたことから、対前年度比で約4割減でした。減少幅は、日本対がん協会による全国調査での約3割減に比べて小さかったものの、本区においても、令和2年度は全体的にがん検診の受診控えの傾向が見られました。同協会の新たな調査によると、令和3年は前年より回復したものの、全国的に依然低い水準が続き、コロナ前には戻っていないとのことであります。がん検診受診率の低下は、がんの年齢調整死亡率の悪化に影響します。昨年の議会答弁では、区は、検診場所で徹底した感染予防策を施した上で普及啓発や個別勧奨等、コロナ禍にあっても受診率向上へ取り組むとのことでした。
 そこで、令和3年度の受診状況はいかがであったか。また、令和4年度の取組状況も併せて確認いたします。
 高齢者の社会活動の減少について伺います。
 本区の介護保険の通所介護サービスの利用実績によれば、令和2年度は3万8,148件で、コロナ前の元年度の4万3,937件から大幅に減少し、過去5年間で最低を記録しました。通所リハビリテーションも同様に過去5年間で最低の件数で、地域密着型の通所サービスの利用も令和2年度は大きく減少しました。そのほか、長寿応援ポイント事業、ふれあい入浴、高齢者活動支援センターやゆうゆう館の利用など、高齢者の社会参加に関する各種事業の実績も令和2年度は軒並み大きく減少しました。高齢者の外出や人との接触の機会、体を動かす機会が減ると心身機能が低下するなど、いわゆる健康2次被害が懸念されます。改めて区内高齢者へのコロナによる健康2次被害の影響について、区の認識を伺います。
 新型コロナウイルスは、100年前のスペイン風邪以来の大規模な世界的パンデミックとなりました。本区においても、先週までの累計で、区民人口の1割を超える6万人近い感染が確認されています。加えて、この間の一般診療や各種健診の受診控え、さらには高齢者の社会活動の抑制などもあり、区民の健康は肉体的にも精神的にも後退を一部余儀なくされた2年間であったと言わざるを得ないと思います。社会活動の正常化は、しばらくはコロナの感染拡大への警戒との両にらみの状況が続くと思われます。しかし、一日も早く、この間のマイナス影響を挽回し、コロナ前よりむしろ大きく前進していけるような区の健康増進策の拡大を期待いたします。
 最後に区の決意を伺って、質問を終わります。

答弁

議長(脇坂たつや議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
      〔区長(田中 良)登壇〕