行政評価制度の成果と目的の変化、指標設定の課題
杉並区議会公明党の一員として、行政評価について質問を行います。
少子高齢化、情報化、生活形態の多様化など、行政需要は日々変化しています。行政はその変化に対して柔軟に対応できなければなりません。区がみずからの現状を客観的に把握し、あるべき姿と比較して、的確な判断のもとで改善に結びつけられているかどうか、また、その判断や改善が適切かどうか、常に検証する体制の充実が求められていると考えます。まず、この点について区の見解を伺います。
地方自治法では、「住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げる」との地方公共団体の責務を定めています。杉並区にとって「福祉の増進に努める」とは、基本構想の目標実現に向けて施策を着実に遂行することであります。この自治法の条文における責務を果たしていくには、施策執行プロセスの効率性と成果を生み出す有効性を測定し、そして評価するシステムが不可欠であると考えます。プロセスの効率性を測定、評価するシステムには、フルコストに基づく公会計情報の活用が有益であることは、これまでも訴えてきたところです。
一方、その成果を生み出す有効性の評価については、福祉の増進という行政目的が貨幣価値に換算できないため、公会計情報のみで行うことはできません。行政評価は、貨幣価値とは別の客観的なデータをもとに体系的に効率性と有効性の評価・検証を行い改善につなげるという、PDCAサイクルのシステムであります。その意味から、公会計とは相互に補完する関係にあると言えます。
杉並区における行政評価は、平成11年度に事務事業を対象に、14年度に政策、施策を対象に導入されました。20年度予算から、予算の事務事業と事務事業評価の単位を可能な限り一致させ、決算と行政評価を一体的に行う体制を整えました。21年度からは、行政評価の結果に基づいて区政経営報告書を作成し、決算説明資料として公表しています。
評価の体系は、現在では、総合計画の体系と合わせ、施策評価と事務事業評価の2階層の構成としています。32の施策と657の事務事業は、それぞれの成果やコスト、さらには目的の達成状況などから、効率性や有効性について評価され、そして事務事業は、構成している施策の成果向上への関連性も踏まえて、評価や見直しが行われます。
実施体制については、事務事業評価は担当所管みずからが、施策評価は指定された各施策の評価担当課が実施します。それらを、部長を責任者とする二次評価部門が二次評価を行い、その後、外部の専門家がその結果について外部評価を行います。
評価や改善といった機能については、予算、決算特別委員会を含む議会もその任を担っていると言えます。しかし、職員みずからが評価そのものに参画し、区政全体を網羅し、体系立った制度として唯一存在するのが行政評価であります。区の自治基本条例でも、政策等の成果及び達成度を明らかにし、効率的かつ効果的な区政運営を行うため、行政評価を実施、公表することを定めています。
これまで区が長きにわたって取り組んできた行政評価が区政運営に対してどのような成果を生んできたのか、総括的に制度自体に対する評価をお聞かせください。
現在の区の行政評価は、3つの目的に沿って実施しています。目的の1つ目は、総合計画の進捗状況、達成度の把握、2つ目が、職員の政策形成能力の向上、すなわち多くの職員が評価と改善の作業プロセスにかかわることで、政策形成能力の向上を目指すというものです。そして3つ目が、説明責任と区政の透明性の確保であります。
平成11年の開始当初においては、事業や施策の目的の妥当性、有効性、効率性、そして人材や財源等の資源の有効活用といったことを目的としており、現在よりも効率性や経済性の向上に重きを置いていたように見受けられます。本区の行政評価を実施する目的が年を経るに従って変化してきたことについて、その背景にあるものは何か、区の所見を伺います。
続いて、指標の設定について伺います。
行政評価は数値指標に基づいて行うことが基本です。指標には2種類あります。1つは、施策や事業の遂行結果に関して区の活動量、アウトプットをあらわす活動指標、もう一つは、その活動量がどの程度の実質的な成果、アウトカムを生み出したかを測定する成果指標であります。こうした数値データ、すなわち客観的な根拠に基づき事業や施策目標の達成状況を分析し、次の改善にまでつなげていくということを目指しています。いわば指標はサイクルの軸の役割を担っているのです。であるならば、具体的にどのような数値を指標として設定するのかが大変重要になります。その指標が施策の目標や事業の取り組み内容と合致しているのか、あるいは事務事業の指標と施策の指標の整合性がとれているのか、施策と事業、さらには活動指標と成果指標を連動させて整理し、適切な指標を設定することが必要です。
しかし、本年度行われた直近の評価でも、活動指標と成果指標の設定の意図がいま一つ不明なものが幾つか見受けられます。例えば施策4、「利便性の高い快適な都市基盤の整備」の評価では、バリアフリー推進連絡会等の開催回数、沿線まちづくり活動団体支援数、道路拡幅整備距離、南北バスすぎ丸の運行本数を活動指標としていながら、その成果指標は、区民意向調査による区内での定住意向の割合としています。これら活動指標と区民の定住意向にどれだけの因果関係があるのか、もっと言えば、成果指標のパーセンテージの上下に影響を及ぼすのは区の施策だけなのか、検証が必要だと思います。
また、施策31、「交流と平和、男女共同参画の推進」の評価においては、国際交流事業参加者数が活動指標、その成果指標が国内交流事業参加者数となっています。活動がどの程度の成果を生み出したかを評価する指標として、これらは適切なのでしょうか。
評価指標については、資源投入のインプット、それに伴うアウトプット、その結果得られたアウトカムといった、それぞれの論理的な因果関係で結びつけたロジックモデルのもとでの設定が必要です。指標の整理、見直しの実施体制及びこうした課題認識について、区の所見を伺います。
施策と事務事業の体系、予算への活用、コスト分析、外部評価、公表方法
次に、施策と事務事業の体系立てについて伺います。
さきに述べたとおり、本区の行政評価は、施策評価と事務事業評価の2階層です。施策は事務事業を行う目的、事務事業は施策を進めるための手段として、互いに目的と手段という関係性が成立していることを前提に評価が行われています。しかし、例えば施策8、「水とみどりのネットワークの形成」では、12の構成事業の中に公衆便所の維持管理として、その定期清掃回数を活動指標としている事業も含まれています。また、施策31、「交流と平和、男女共同参画の推進」のための8つの事業の1つが、住居表示の管理であり、住居表示の不定件数や案内板の設置数が活動指標となっています。これらは個々には当然必要な事業ですが、目的と手段という施策との関係性からの体系立てが果たして適切なのか、疑問が残ります。
また、平成27年度の行政評価報告書によれば、施策の今後の方向性に対する評価結果を「拡充」としたものが71.9%、「現状維持」としたものが21.9%であったのに対し、それらを構成している事務事業の今後のあり方については、「拡充」が22.7%、「現状維持」67.3%と、全く逆の結果が示されています。本来であれば、施策と事務事業のあり方に対する評価としては相当の因果関係があるはずだと思うのですが、こうした結果となっていることも不可解です。施策とそれを構成する事務事業の関連性や評価体系における整理、見直しの実施体制及びこうした課題認識について、区の所見をお聞かせください。
行政評価結果の予算編成への活用について伺います。
評価は、それでとどまるのではなく、活用してこそ意味を持つものです。行政評価の結果を各課において事業の見直しにつなげるほか、次の予算編成に活用することで初めてPDCAサイクルが成立し、実効性が高まると考えます。行政評価の結果を予算編成へと結びつける運用は、現状どのようになっているのでしょうか。また、そのことについての区の方針や考え方をお聞かせください。
評価シートの記載欄についても、1点指摘をさせていただきます。
施策と事務事業それぞれのシートには、今後の方向性、今後の進め方について総括的にコメントを記載する欄が設けられていますが、そのタイトルが「改善・見直しの方向 中長期」となっています。改善・見直しの方向が「中長期」では、時期が抽象的ではないでしょうか。これを「翌年度」としたほうがより具体的な評価、そして改善に結びつくと考えますが、区の考えはいかがでしょうか。
効率性の評価の観点から、コスト分析について伺います。
施策や事務事業は多種多様で、コスト構造も大きく異なります。現状、全ての施策と事務事業の評価シートに、投資的経費等と委託費に分類された事業費と職員数の配分に伴う人件費がコスト情報として記載され、それらを足したものが総事業費としてそれぞれ記載されています。各施策の総事業に占める人件費の割合が、低いもので4%程度、高いものでは53%のものもあります。また、投資的経費でも、これは年度間でばらつきが発生するとは思いますが、ゼロのものもあれば、総事業費の7割を超えている施策もあります。労働集約的、資本集約的、あるいは金銭を主要な手段とする資金集約的等々、さまざまであります。それぞれの活動のコスト情報は正確に把握する必要があり、それには、冒頭でも述べたとおり、フルコスト、すなわち減価償却費や退職給付費用、起債に伴う金利等、見えなくとも実際は発生しているコストを含めるべきであると考えます。管理会計の意味からの公会計情報の活用であります。
先日、公会計情報の行政評価への活用に先進的な取り組みを行っている町田市を訪れ、詳しくお話を伺いました。同市では、課別事業別の行政評価シートにそれぞれ細かく分けた財務諸表を掲載し、ストックやフルコストの情報を提供しています。それを行政評価の非財務情報と交えて分析し、マネジメント上の課題を明らかにする試みを行っています。また、先日、総務財政委員会で視察に伺った大阪府吹田市も、同様の取り組みを進めています。ともに詳細な情報インフラを整備し、議会や市民に対する説明責任に徹する姿勢が大変印象的でありました。
ただ、こうした取り組みは、両市で行っているように、日々仕訳を導入し、全職員に複式簿記の考えが浸透してこそ実効性が発揮されるものと考えます。その意味から、本区では、まだこれらを導入する環境が整っていないというのが私の率直な感想です。しかし、将来を見据えて、本区も検討を進めていただきたいと思います。公会計情報と行政評価とを組み合わせることで、より詳細なコスト分析及び評価が可能になり、有意義なツールになると考えます。区の考えを伺います。
関連して、毎年9月に発行している事業別行政コスト計算書についても伺います。
この計算書は行政評価とは連動しておらず、独立した分析です。全てではありませんが、財務諸表からフルコストに近い情報を使用しています。今後、事業別行政コスト計算書を発展させ、幾つかの財政へ影響が大きい事業、とりわけ同じ事業に複数の運営形態、コスト構造が存在するものなどは、行政評価との関係性を持たせた上で、区政経営報告書に分析結果を掲載することも有益ではないかと考えます。区の所見を伺います。
外部評価について伺います。
区では、専門的知見を有する第三者の立場から、5人の学識経験者から成る杉並区外部評価委員会において、外部評価を実施しています。行政評価の客観性を高め、制度の充実を図ることを目的としたものです。
同委員会では、毎年6つの施策と、施策を構成しない2つの事務事業を選定し、さらには、区が財政的な支援などを行っている団体の経営状況とあわせて評価を行っています。所管課とのヒアリングや、施策担当の課長及び関係課職員との意見交換なども評価プロセスに組み込まれています。指標の適切性、費用対効果や評価の視点、また、改善見直しに当たり留意すべき視点が押さえられているかといった観点から、さらには記載内容がわかりやすくなっているかなど、評価制度そのものに対する評価を受けています。鋭く、時には忌憚のない意見もいただいており、区にとって大変価値があるものと思います。
外部評価報告書には、外部評価に対する所管の対処方針として、いただいた指摘、意見に対しての区側の考えも明らかにしており、意見を受けっ放しで終わっていないところは評価できます。しかし、中には意見の交換にとどまり、実際の改善に至っていないものもあるようです。外部評価の活用について、区はどういう改善が必要と認識しているのでしょうか、所見を伺います。
評価結果の公表方法について伺います。
先日、本区の外部評価委員を経験された方にお話を伺いました。杉並区民でもあるその方は、外部評価委員の活動を通して、区の職員が矜持を持って誠実に日常の業務に取り組んでいることがよく理解できた、また、区が実施する事業や議会での質問なども身近に感じるようになったと語っておられました。外部評価については、区民サービスの直接の受け手である、より多くの区民の評価への参画、あるいは意見が反映される形が本来であれば理想であると思います。多くの方々に区の実情をよく理解していただくことは、区政運営にとって大切であると考えるからです。
しかし、行政評価の公表方法は、各図書館に分厚いファイルが並べられているほか、ホームページ上で大量のPDFシートが張りつけられているだけであります。私自身の肌感覚から、制度の認知度は余り高くないと思います。行政評価の結果あるいは制度自体がどの程度区民に普及しているのか。また周知方法で改善するべき点は何か、所見を伺います。
回答が限定されたり、バイアスがかかったりする可能性はあるものの、アンケート結果を評価へ組み込む仕組みなども検討の余地があるかもしれません。
これまでるる課題の指摘などを行わせていただきましたが、実態としては、行政評価の形骸化、制度自体の目的化といった状況に陥るおそれも一部あるのではないかとの印象を受けています。また、その背景として、行政評価実施に伴う現場での作業負担感も課題の1つであると思います。しかし、冒頭述べたとおり、時代に即して変化に対応する福祉の増進と効率性の向上への飽くなき挑戦は、これからも継続していくべき区の責務であります。評価のあり方について、現場の作業負担の軽減に配慮するとともに、目的や利用者に応じて適用範囲や対象を限定した評価制度を導入したり、単発の評価をその都度実施したりするなど、柔軟性を持たせ、多様化を図るといったことも必要かもしれません。
行政評価の今後の展開
最後に、行政評価の今後の展開について区の考えをお聞きして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(田中 良)登壇〕