杉並区のデジタル化推進と情報セキュリティ対策
杉並区議会公明党の中村康弘です。本日は、通告に基づきデジタル化について、そして情報セキュリティーについて質問をいたします。
区では、杉並区デジタル化推進基本方針とそれに基づく推進計画を定め、現在2年目を迎えています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の提唱者であるストルターマン教授は、公共におけるDXは既存の仕組みや手続への挑戦、より住民本位の革新的な解決策を協働で考えることを促すと述べています。
本区も基本方針に掲げる区民サービスの向上と行政内部の効率化の推進というデジタル化の効果目標の実現のため、既存の仕組みや手続に果敢に挑戦していくことを期待しております。区は今年度重点的にデジタル化に取り組むポイントとして、1、行政手続のオンライン化の推進、2、デジタルデバイドの是正、3、定型データ入力業務の自動化・効率化、4、住民情報系システムの標準化、5、働き方改革を推進するための情報インフラ環境の再構築を挙げています。
まず、行政手続のオンライン化の推進について伺います。
議長、ここで資料を提示させていただきます。
はい。
この表は、本区の令和3年度の実績に基づく行政手続オンライン化の実施状況であります。合計で2,620ある手続に対してオンライン化が既になされているものは198、そしてオンライン化未対応は2,422で、手続数では7.6%がオンライン化済みとなっています。ただ、それぞれの手続の申請数で見ると、オンライン化されている198の手続では年間で424万件の申請があり、この数は区の業務全体、約588万件の72.1%に上ります。そしてオンライン化未対応に対しては、区は国や東京都等と連携している、あるいは対面や押印が必須など、現時点でオンライン化が不可能とされている2,076の手続を除外し、残りの346のうち、年間申請数が1,000件を超える31の手続を令和6年度末までに優先的にオンライン化していく、このような計画を進めています。
しかし、このオンライン化済みとされている手続にも課題が残されています。この対応済みの手続と言われているものに対して、実際にオンライン化で申請されている手続は4割程度にしかすぎず、残りの6割、約254万件に関しては、いまだ紙ベースで行われているというのが実態なのであります。行政手続のオンライン化は、区民に利用されて初めて意味があります。オンライン化対応済みの手続の約6割が使用されていないという実態に対して、その理由は何か、どこに課題があるのかを調査分析し、対策を講ずるべきと考えますが、区の所見を伺います。
この調査は、デジタルディバイドの是正という意味からも有益と考えます。区が取り組むデジタルディバイドの是正は、情報通信機器のリテラシーの向上と区のシステムのアクセシビリティーの改善、すなわちサービスの利用者側と提供者側の双方向からのアプローチです。したがい、こうした利用実態を調査分析することはデジタルディバイドの是正にも寄与するものと考えますが、区はいかがお考えでしょうか。
もう一度掲げさせていただきます。さらに申し上げると、このオンライン化不可能に分類されている2,076手続、そして146万件に関しましても、課題を整理し、トランスフォーメーションという観点から抜本的な見直しを行うべきと考えますが、所見をお聞かせください。
窓口サービス改善、マイナンバーカード、定型業務自動化の現状と課題
次に、窓口サービスの改善に向けたデジタル技術の活用について伺います。
先日、会派の議員と埼玉県深谷市の書かない窓口の視察を行いました。同市では、システムの連携やRPA等の導入による窓口業務の改革を行い、2020年7月より、市役所の来訪者が住民票や印鑑証明の手続や発行などの申請書を書く必要がなくなりました。市民にとっては、何枚も同じような書類を書く手間が省け、大変好評です。同市では、この導入の2年前に1年間かけてBPR手法による業務分析を行い、自動化に向けての業務手順の簡素化や市民の利便性向上の方策などを徹底して検討し、その仕様要求に最も沿ったシステムを選定、導入いたしました。これまで大きな問題は発生しておらず、事前の入念な準備が成功の要因と思われます。
書かない窓口については、本区でも導入の検討を進めているものと理解しています。現在の取組状況を確認いたします。窓口業務支援のデジタル化は、システムの設計思想が異なる幾つかのアプローチが考えられると思います。区が現在検討しているシステム設計のイメージや重視しているポイントは何か、お聞かせください。
本年2月、区では、子育てや介護関係等の申請や届出をマイナポータルのオンライン上で完了することができるぴったりサービスの対象業務を大幅に拡大しました。現在、本区においてこのサービスが利用できるのはどの業務か、お示しください。また、これまでのこのサービスの利用状況を確認いたします。
関連して、マイナンバーカードについて伺います。
マイナンバーカードをめぐる一連のトラブルを受け、政府は11月末までの完了を目指して総点検を行うとしています。政府には、原因の洗い出しと対策を徹底して行い、全力で国民の不安払拭に努めていただきたいと思います。トラブルの内容といたしましては、公金受け取り口座や健康保険証へのひもづけ、マイナポイント付与、障害者手帳の登録、コンビニでの証明書交付、年金記録の登録などにおいて誤りが発生してきました。一連のマイナンバーカードに伴うトラブル事案について、本区における状況を確認いたします。
これまでのトラブルの原因は主にヒューマンエラーによるものですが、その中で、自治体が行う作業としての公金受け取り口座のひもづけや、マイナポイント付与の際のログアウト漏れがありました。本区での関連する業務の作業手順にログアウト漏れの予防策は組み込まれているのか、確認いたします。
また、埼玉県所沢市では、介護保険等の還付金である高額介護合算療養費をマイナンバーに関する業務の中で、誤って同姓同名、同生年月日の別人に対して送金するという事案もありました。これは介護施設に入所する際の住所地特例に伴う処理が関係したとされております。この所沢市における高額介護合算療養費の誤送金の事案の経緯を御説明ください。併せて本区における同様の事案の発生リスクはどうなのか、確認いたします。
総点検に関しては、デジタル庁の資料によると、国から各自治体に対してマイナンバーを取り扱う事務に関する調査が行われ、結果、適切に行われていないと判断された332の自治体が対象となりました。ちなみに本区は対象外でした。国からの調査はどのような内容であったのでしょうか。また、本区では総点検の必要がないと判断された理由は何か、お聞かせください。
続いて、定型データ入力業務の自動化、効率化について伺います。
区では、超過業務が多かった保育課の働き方改革として、一昨年より、保育所入所選考や申請書等の内容のデータ化の処理にAIやRPAなどのデジタル技術を導入し、大きく業務改革を成し遂げました。これは本区におけるDXの代表的な成功事例であると思います。改めて保育課におけるデジタル技術による自動化、効率化の取組内容と、そのことによる成果をお示しください。また、導入前と比較して担当職員の業務の内容、質がどのように変化したのか、お答えください。
保育課業務は、保育サービスの利用者の多くがデジタルのリテラシーが高い年齢層にあり、DXとの親和性が高く、得られる効果も大きいのではないでしょうか。したがい、今後もデジタル化を先駆的に進めていく分野であると考えます。改めて保育課業務に関するデジタル化の現状及び今後の計画についてお示しください。
定型データ入力業務の自動化、効率化は、他の部署や業務にも展開されています。他の部署における導入実績を今年度予定しているものも含めてお聞かせください。また、AIやRPAなどの導入に係る令和4年度及び令和5年度の費用を確認いたします。加えて、導入による効果についてもお聞かせください。
住民情報系システム標準化の費用対効果と情報セキュリティ体制
次に、住民情報系システムの標準化について伺います。
区では2026年1月からの稼働を目指して、現在の住民情報系システムを、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、国が進める自治体情報システムの標準化への移行作業を進めています。この標準化移行の対象とされているのは住民記録や税務関係、介護保険、児童手当等の18業務であり、これらは現在、11の中央電算システムや10の小型電算システムで運営されております。本区では住民情報系の基幹システムを、3年以上の時間をかけて、それまでのホストコンピューターからクラウドサービスによるオープン系の新しいシステムへと再構築したばかりです。このシステムは2021年1月から稼働しているので、標準化移行までの実働期間は僅か5年となります。短い気もしますが、標準化は法律に基づくプロジェクトであるため、やむを得ないのでしょう。
国は、システムの標準化を全国で行うことでコスト削減、ベンダーロックインの解消、行政サービス、住民利便性の向上、行政運営の効率化が図られるとしております。さきの区の再構築では、それ以前のホストコンピューターからクラウド、パッケージシステムへ移行することにより、関連する運営経費が約2割削減される見込みとのことでした。実際に令和4年度の運営経費は、それまでと比べてどのように変化したのか。また、標準化によって、経費のさらなる削減が見込まれるのか。また、それはどのようにして実現されるのか、お聞かせください。
ベンダーロックインの解消については、現在のシステムはオープン系で複数のベンダーを採用しているため、本区にとってベンダーロックインは、今ではさほど大きな問題ではないのではないか、所見を伺います。
また、行政サービスや住民の利便性の向上、行政運営の効率化は、標準化により具体的にどのような形で実現されるのか、お示しください。
再構築の際には、3年間で合計約20億円の費用が発生しました。今回の標準化においても同程度、あるいは、それ以上の費用がかかることが予想されています。それに対する国からの補助は、僅か4.9億円程度とのこと。特別区長会でも、国へ財政措置の拡充を求めていると理解しておりますが、いかんせん相手があることです。現実問題として、区は財源を確保しなければなりません。財源の手当てについて、現在の区の考えをお聞かせください。
それでは、次の項目、情報セキュリティー対策について伺います。
まず、情報セキュリティーに対する現在の区の体制と取組についてお示しください。
個人情報保護制度と住基ネット不正アクセス再発防止策の強化
次に、個人情報保護制度について伺います。
区の情報公開・個人情報保護審議会は昭和62年に設置され、以来、区の個人情報の保護水準の維持向上に重要な役割を果たしてきました。しかし、先般、個人情報保護法が改正されたことにより、これまで同審議会が情報公開・個人情報保護委員会に諮問してきた事項について、一部諮問ができなくなりました。そうした中でも、区は改正法の施行後も、これまでの区の個人情報の保護に向けた取組を引き続き維持向上させていくとしています。
では、具体的に現在どのような取組を実施しているのか、確認をいたします。
昨年11月、住基ネットを不正に検索して得た個人情報を外部に漏えいしたとして、区職員が逮捕されました。区民のみならず、全国の皆様の行政及び住基ネットに対する信頼を大きく損ねる事態を招いた、極めて遺憾な事件でありました。区は、二度とこうした事件が起きることのないよう再発防止に努め、区政に対する信頼回復に全力で取り組んでいくことを改めて要望いたします。
事件を受けて発足した再発防止対策検討委員会は、操作ログ点検の充実・強化、職員に対する教育・研修の充実・強化、職場環境の見直しの3点から成るさらなる再発防止対策を、有識者から聴取した意見を加えて今年2月に公表しています。
まず対策の1点目、操作ログ点検の充実・強化に関して何点か確認いたします。
操作ログの点検については、事件発生前までも定期的に行われていました。にもかかわらず、当該の不正行為の検知ができませんでした。以前の点検は何を目的として、どの項目に対して行っていたのでしょうか。また、これまでの点検で検知できなかったのはどのような視点が欠落していたのか、お答えください。
今回、充実・強化策として、氏名等により検索した操作ログの点検も加わりました。そして、住基ネットで氏名等の検索を行う場合には、ログインする前に都度記録票に記入し、その内容と後のログ履歴とを突合することといたしました。改めて、このことが防止策として有効となる仕組みを御説明ください。
本区の住基ネットのログ記録は、令和3年度で言いますと、全部で約199万件ありました。そのうち、氏名等による検索の履歴は約6,000件です。つまり99%以上となる検索履歴以外のログについては、どのような扱いとなっているのでしょうか。現状における点検項目について、従来から行っているものと併せて整理してお示しください。
また、報告書では、住基ネットシステムの操作ログをよりチェックしやすいものとするよう、国へ改善を要望するべきとの意見が付されています。具体的にどのような点での改善が必要とされているのでしょうか。また、そのことについて国、具体的には地方公共団体情報システム機構(J-LIS)とやり取りは行っているのでしょうか。さらに、J-LIS側での何らかの動きはあるのか、お答えください。
2点目の対策、職員に対する教育・研修の充実・強化では、住基ネットの操作権限を付与するときや住基ネット業務管理補助者の任に就いたときに実施していた教育・研修を毎年実施し、また、全職員を対象にした公務員倫理・情報セキュリティ研修も職場ごとに毎年実施するとしております。つまり研修の機会を増やすことを対策としております。しかし、当該元職員も公務員倫理や情報セキュリティーに関する新任研修のほか、住基ネットに関する研修を計6回受講していました。しかし、当人は、研修は受けたが、法令遵守、情報管理に対する認識が極めて薄かったことを認めています。回数のみならず、研修の内容や方法等についても改善が必要と思われますが、見直しの状況を伺います。
3点目の対策、職場環境の見直しでは、一部の住基ネット端末が見通しの悪い場所に設置されていたことから、レイアウトの変更など職場環境の見直し、改善を図るとしております。また、情報の持ち出しを防ぐために、住基ネット端末設置エリアへの電子機器の持込みは原則禁止とするルールを徹底するとしています。これらの実施状況を確認いたします。
ちなみに区のネットワークは、住基ネットを含む個人番号利用事務系、LGWAN接続系、インターネット接続系の3層が分離する形でそれぞれにセキュリティー対策が施されています。今回の事件は住基ネットによるもので、したがい、再発防止対策も住基ネット端末の取扱いやセキュリティーに関するものです。しかし、不適正なアクセスや情報の持ち出し等に対するセキュリティー対策の基本的な枠組みは、他の2つのネットワークにも共通する部分が多く、横展開をして強化するべきと考えますが、所見を伺います。
外部委託先における情報セキュリティ対策とサイバー攻撃への備え
次に、外部委託先管理のシステム運用に関するセキュリティー対策について伺います。
去る5月30日、区が学童クラブと放課後等居場所事業を委託している事業者のサーバー内のデータが、ランサムウエアにより暗号化されるという事案が発生しました。被害に遭ったサーバーには、委託事業の利用者に関する個人情報データも含まれていたとのことであります。先日、所管課による調査結果の報告があり、外部への情報流出の可能性は今後も含めて極めて低いとのことでした。その上で社内ネットワークの再構築や保守体制の強化、外部接続機器の操作制限、使用者の限定、持ち出し履歴の記録の徹底などの再発防止策が打ち出されました。改めて委託事業者におけるインシデント発生時の区への報告や初動対応などの対応フローはどのような取決めとなっているのでしょうか。また、本事案が発生した際には、その取決めどおりの対応がなされたのか、確認をいたします。
また、こうした事案は、他の委託事業者でも発生するリスクがあります。区の情報セキュリティ基本方針では、「外部委託事業者等との間で適切な契約を締結し、その完全な履行を確保する」と定めていますが、外部委託事業者における情報管理の体制、区と事業者との具体的な契約内容及び履行の確認方法についてお示しください。また、今回の事案を受け、委託事業者のセキュリティー管理について見直し、改善は行っているのか、お答えください。
本年、広島で行われたG7サミットの際に、ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた航空機が5月20日の15時30分に広島空港に降り立ちました。それから約1時間後、広島市のウェブサイトに対して大量のデータを送りつけるDDoS攻撃が発生し、同市のホームページは完全に復旧するまで数日間を要する事態になりました。一自治体にあっても、突如サイバー攻撃の対象となることも想定していなければなりません。高度化、巧妙化が進むサイバー上のリスクに対して、どこまでやれば安全と言えるのか。いたちごっこかもしれません。しかし、区のデジタル化の推進にあって、システムの信頼性を確保することは大前提になります。最善の策は常に追求していかなければなりません。
区のデジタル化推進と情報セキュリティ強化に関する区長の考え
最後に、今後の区のデジタル化推進と情報セキュリティー強化に対してのトップである区長の考えを伺って質問を終わります。ありがとうございました。
答弁
理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(岸本聡子)登壇〕
御答弁ありがとうございます。2点再質問させていただきます。
まず1つ目は、今、政策経営部長のほうからも御答弁ございましたとおり、財源の確保に関しての考え方でございます。御存じのとおり、この再構築の事業に関しましては複数年かかると。数十億円という、まとまった、かなりの大量の額が必要とされる。また、一方で避けて通ることができない、そういう事業でございます。逆にまた、もう一方で、これは長期的に財源を確保しなければならないものでもありません。経常的な経費ではないということであります。
今現在、財政調整基金の運用について見直しが行われていると理解しておりますけれども、こうした性質の経費こそが財政調整基金、いわゆる財政のダムを活用するということじゃないのかなというふうに私は思っております。一過性であり、なおかつある程度まとまったものを事前に確保しておくという、そういう考え方でございます。この財源確保に関しまして、予算編成とか全体を見ながら検討していくという御答弁でございましたけれども、改めて財政調整基金の計画的な活用という観点で、もう一度、区の考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
もう1点に関しましては、数百万件もある操作ログの点検作業に関して確認させていただきたいと思います。今、御答弁では、今回の氏名等の検索履歴以外に、これまでやってきた不在職員のIDによるログが行われていないかとか、また、業務時間外の不自然なログがないのかどうかとか、そういったことも併せて調査、点検しているということでした。ただ、全体で200万件やる中で、これをどう抽出して作業しているのか、この点検作業は誰がどのようにどうしたタイミングで行っているのか、ちょっと確認させていただきたいというふうに思います。
また、今回の事件のように当初想定していなかった不適正な利用、今後もまた別の新しい不適正な利用が発生しないとは限らないわけであります。そうすると、また新たな点検項目を加えなきゃいけなくなるかもしれない。御存じのとおり、この作業に関しては全く生産的ではない作業ですね。ただ一方で、これはやらなければならない作業。まさにこうした作業こそが効率化を図るべきじゃないかと。国のほうにシステムの改修を依頼していると言っていましたけれども、例えばこういうところにAIを利用するとか、もっと頻度を細かいスパンで、そういったことも瞬時に計算ができると。また、職員の労力も非生産的なところに割かなくていいんじゃないか、そういったことも私は考えるわけでありますけれども、改めて区の所見を伺います。
以上でございます。
理事者の答弁を求めます。
政策経営部長。
〔政策経営部長(伊藤宗敏)登壇〕