平成20年9月16日 第3回定例会

災害時における業務継続計画(BCP)の認識と必要性

中村 康弘

本日は、杉並区議会公明党の一員として、BCP(業務継続計画)に関する質問を行わせていただきます。
 BCPとはビジネス・コンティニュイティ・プランの頭文字で、行政機関を対象とする場合は業務継続計画、民間企業では事業継続計画との日本語訳が多く使用されています。災害時や緊急事態においてもいかに事業や業務を継続するかという考え方に重点を置いているところが従来の防災計画と異なっており、二〇〇一年の同時多発テロ以来、米国を中心に広まってきた危機管理の考え方であります。
 地震大国と言われる日本、国土の面積では世界のわずか〇・三%にすぎませんが、これまでの十数年間でマグニチュード六・〇以上の大地震が発生してきた頻度では、全世界の二〇%以上がこの日本で起きています。六千人を超える死者、行方不明者を出した阪神・淡路大震災、近年では新潟県中越地震、能登半島沖地震、新潟県中越沖地震、そして、ことし六月の岩手・宮城内陸地震等、大規模な地震が我が国では多数発生しています。私たちの住む首都圏東京におきましても、マグニチュード七程度の直下型の地震が発生する確率が今後三十年以内に七〇%、五十年以内であれば九〇%という調査結果があり、いつ大災害に見舞われてもおかしくない状況にあります。
 それぞれの企業、組織には、どのような状況であれ、必要とされる業務を遂行しなければならない、社会に対する一定の責任というものがあります。しかし、大規模な災害のときには自らも被災し、機能不全に近い状態となり、業務遂行に支障を来すような事態に陥ることも予想されます。
 BCPでは、企業や組織において災害や事故等で大きな被害を受けても重要業務をなるべく中断させない、仮に中断しても、できるだけ早急に、あるいは許容される時間内に復旧させる、業務継続を実現するための戦略を計画します。優先的に継続、復旧すべき最重要業務を事前に特定しておき、バックアップ準備やリスクの軽減、事後の災害時応急対応、復旧手順の明確化、指揮命令系統の確保等の計画をあらかじめ立案し、被災の影響を最小限にとどめる、そしてその実現を可能にするために、被害状況と資源の活用状況を詳しく想定、分析した上で、事前対策を着実に実施していくことを定めます。
 日本でのBCP普及の流れとしては、平成十七年八月に内閣府により事業継続ガイドラインが発表され、民間企業におけるBCPを策定する上での一定の指針が示されました。また、経済産業省からは、情報セキュリティーと中小企業の取り組みの観点からガイドラインが発表されています。
 民間企業においては、本年、ある経営コンサルティング会社が、国内の全上場企業及び売上高五百億円以上の未上場企業を対象にBCPに関する調査を行ったところ、BCPを既に策定済みあるいは策定中と回答した企業は七八%で、二年前の同じ調査での四九%から二九ポイントも上昇しています。また、BCPの必要性を感じていると回答した企業は九六%にも上り、ここ数年でBCPに対する関心が大きく増大しています。
 官公庁においても、国土交通省や財務省を初め、既に十七の中央省庁がBCPを策定、公表済みで、そのうちの十六省庁が本年の三月から七月の間に策定しているという、まさに今、BCPラッシュの様相を呈しております。
 地方公共団体では、都道府県で三団体、区市町村では二・三%に当たる四十一団体が策定済みという状況で、まださほど浸透はしていませんが、東京都では先月七日に都政のBCP(東京都事業継続計画)の素案を発表し、パブリックコメントを受けた後、本年十一月の計画策定を目途に作業を進めております。
 そこで質問をいたします。基礎的自治体として、子育て、教育、保健、医療、福祉、年金等、区民の日常生活に直結した行政サービスを提供する杉並区が、災害時にあっても必要な行政サービスの業務を継続しなければならないという区民に対する責任についてどう認識しているのか、所見をお伺いいたします。
 また、予測不可能なリスクの発生懸念材料が最近は増加しているのではないかと私は感じております。地震以外でも、先月にはゲリラ的集中豪雨が東京都を初め全国で多数発生しました。新型インフルエンザやSARSのような人的資源の活動を脅かす疫病、情報通信機器に対するサイバーテロの脅威等、リスクの種類が増加しているのではないでしょうか。当区の業務活動に重大な影響を与える災害リスクの発生懸念について、区としての考えをお伺いいたします。
 一方で、危機管理に対する区民の意識が向上すればするほど、当区の災害時の対応への期待感、要求度が高まります。最近の杉並区民の災害に関する危機意識について、区としてはどのように認識されているのでしょうか。
 杉並区地域防災計画では、区民の協力のもとに、災害予防対策、応急対策及び復旧復興対策の実施に区が中心的な役割を担うことを定めております。しかし、こういった防災計画に加え、自らも深刻な被害を受けるということを合理的に想定して、その上で何ができるか、何をしなければならないかという業務継続計画の策定をする必要があると考えますが、区の所見をお伺いします。

杉並区のBCPにおける優先業務と民間委託の連携

中村 康弘

 次に、BCPの中身について伺います。
 東京都のBCP素案では、マグニチュード七・三の地震が東京湾北部で発生し、都の防災会議が発表した被害想定を前提として、都民の生命、生活及び財産を保護すること、首都東京の都市機能を維持することの二つを計画の目標としています。都の総業務数二千八百九十二のうち六百九十七の業務を発災後すぐに業務に着手しないと、都民の生命、生活及び財産または都市機能維持に重大な影響を及ぼすため、優先的に対策を課すべき業務、これをAランクと定め、発災後二十四時間以内に復旧に着手し、三日以内に業務復旧を目標としています。そして、二百六業務をBランクとして、発災後一日から三日以内に復旧に着手、一週間以内に業務復旧させることを目標としています。そのほか、百六十五の業務をCランク、三日から一週間以内に着手し、三十日以内の復旧目標と定めています。これらのAランク、Bランク、Cランクの合計千六十八業務を非常時優先業務と分類しています。それ以外の千八百二十四業務に関しては、緊急性が低いという判断のもと、限られた資源をA、B、Cの業務に集中的に投入するという優先業務の実効性の確保に重点を置いた計画を立てています。
 当区としましては、通常業務として行っている事務事業の数は、平成十九年度末で六百六あります。そのうちで災害時にも継続が必要な業務、また災害時に取り組まなければならない応急・復旧業務等で優先順位を明確にし、それらの実効性を確保する必要性があると考えますが、区としての考えをお聞かせください。
 また、平成二十二年度までに、六〇%の事業がNPO等との協働、民営化や民間委託によって区役所以外の組織によって運営されることが目標として計画化されております。公共サービスの担い手の災害時の緊急対応、復興、そして事業継続の計画について、区としてどのように把握、また対策を推進されているのか、現状と今後の展開についてお聞かせください。
 業務の優先順位を明らかにした上で、それを遂行するための必要な人員の確保と適切な配置、安否確認等を行う必要があります。東京都の素案では、災害時での参集人員を、勤務時間外に徒歩によって参集可能な人員で対応することを前提としています。当区においては、職員の居住地を考慮した上で、勤務時間外に災害が発生した際に、参集可能人員を時間帯別でどこまで正確に把握されているのでしょうか。また、災害時の非常時優先業務を遂行する環境として、非常時のバックアップの発電設備の体制を含めて、区庁舎等の施設の業務遂行拠点としての被災対策の現状と今後の取り組みについてお示しください。

災害時のICT部門業務継続体制とデータ保全

中村 康弘

 続きまして、災害時における区の情報システム、ICT部門の業務継続の体制についてお伺いいたします。
 二〇〇五年十一月一日に起きた東京証券取引所のシステムダウンは、オペレーションマニュアルの記入漏れが原因だったそうですが、発生直後はシステムトラブルの原因を特定できず、結局、午前中の取引が全面停止となり、企業や市場関係者にはかり知れないダメージを与える異常事態に発展しました。現代社会は、情報システム、情報通信技術、ICTに大きく依存している反面、当のコンピューターシステムは意外と脆弱性を抱えています。この点は災害対策についても同様です。
 情報システムは、平常時からの業務継続の備えがないと、被害を受けてからの事後的な復旧に多くの時間を要してしまう特性が強い。また、区民情報等を失ってしまい、その回復に多くの時間を要してしまえば、甚大で回復困難な影響を区民に生じさせてしまいます。したがって、当区におけるICT部門のBCP策定の必要性は他の部門よりも高く、重点的に業務継続力をつけることの価値は大きいと考えます。そういった観点から、少々詳しくお伺いいたします。
 現在、区の業務執行のための情報システムは、ハードウエアとしては、業務処理用と開発用のメーンフレームコンピューターが二台、ホスト系のサーバーが四十台近く、スイッチ系のサーバーが百台近く設置されています。専用LAN回線で接続されたホスト系の端末機が本庁舎と出先事務所を合わせて四百五十台近く、そして、オープン系として合計三千台近いパソコンが連日使用されております。また、ソフトウエアでは、大小合わせて四百近い業務処理アプリケーションが存在しています。さらには、年間数百万回にも及ぶデータ入力がコンピューター上で行われており、区民と区に関係する大切なデータが大量に保管されています。
 基本的なご認識を伺います。区のこれらのコンピューターシステムが完全に、または主要部分がダウンしてしまった場合、区の業務遂行に対してどのような影響を与えるとお考えでしょうか、所見をお聞かせください。
 また、情報通信機器への耐震、耐火、耐水等への対策はどのようにとられているのでしょうか。庁舎の耐震基準はもとより、ガラス等の飛散、設備の転倒防止、発火時には火とともに水からも守らなければならない情報通信機器に対する消火対策、また、機器自体に被害がなくても、空調の故障による湿度や温度の異常により機器が停止する可能性、これらの諸問題についてはどのような対策をとられているのか、具体的にお示しください。
 情報システムの運用に関して、重要なサーバーを庁舎とは別の遠隔地のデータセンター等に設置することも一つの方法です。今後、区としては、庁舎との同時被災を回避するため、遠隔地にデータセンターを設置することに対してどのようなお考えか、所見をお聞かせ願います。
 また、庁舎内及び外部と接続する通信ネットワークが二重化されているのか、もしくは庁舎の通信機器が故障した場合に鱶回経路等を準備しているのか、ネットワークの機器対策についてもお聞かせください。
 納税や国民健康保険など、当区のみが保有している区民等に関する情報を消失することは、どのような理由があれ回避しなければなりません。したがって、重要な情報のバックアップを実施することは最低限の責務であります。現在の区のデータ保存のバックアップ体制はどのようになっているのか、現状をお聞かせください。
 練馬区では、二〇〇四年十二月から、区役所から数十キロ離れた民間施設に大容量の記憶装置を設置し、暗号化したデータを毎日伝送する、いわゆるレプリケーションを行っています。さらに進化した方法では、RAIDと呼ばれる分散型データ保存技術によるデータ損失の防止対策も民間企業では広く採用されています。当区においても、これらの技術を活用し、今後、データ保存のバックアップ体制をより強固にしていくことをぜひとも研究するようご提案いたしますが、区の見解をお示し願います。
 昨年の第二回定例会で、私は、全体像を見据えた上での区の情報システムの最適化、また、区としてのITガバナンスの体制強化について質問をいたしました。これからの情報システムを考えたときに、災害対策という点にも重きを置いた運営計画を策定していくことが必要であると考えます。年間約二十五億円の予算がつけられており、業務の基幹を支える大変重要な部門でありますので、区としても抜本的な取り組みを展開されることを要望いたします。
 BCPへの取り組みは、単なる計画の策定が目的ではありません。現状分析、計画策定、訓練、テスト、検証、改善を継続的に行っていく、PDCAを通してのマネジメントシステムとして体系立てて活用していくことが肝要となります。現在、ISOのようなBCPのマネジメントシステムの統一規格及びその認証制度設立の動きが世界的に進められております。そのような動向も見据えながら、実効性の担保された、区としての責務を果たす盤石なシステムの構築を目指していただきたい、このように念願いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

答弁

副議長(小川宗次郎議員)

理事者の答弁を求めます。
 区長。
     〔区長(山田 宏)登壇〕