9月12日から、杉並区議会第3回定例会が開催されています。岸本聡子新区長を迎えて初めての区議会です。
本日、一般質問をいたしました。テーマは、財政運営についてと、ICT(情報通信技術)調達についてです。
長文になりますが、以下質問全文掲載します。
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杉並区議会公明党の中村康弘です。会派の一員として、通告に従い、財政運営について、ICT調達について質問を行います。
区政経営改革推進基本方針では、「財政の健全性の確保と時代の変化に即応できる持続可能な財政運営の実現」を謳っています。そして、その具体策として「財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方」(以下、「基本的な考え方」と言います)で、次の5つの指標を定めています。①財政調整基金の年度末残高350億円の維持、②施設整備基金への毎年度40億円以上の積み立て、③公債費負担比率は5%を超えない、④行政コスト対税収等比率は100%を超えない、⑤債務償還可能年数は5年を超えない、以上の5項目です。
これらは、単年度の収支均衡と中長期的な財政の健全性、そして現金主義と発生主義のそれぞれの会計情報から、区財政を捉え、管理すべき数値を指標化したものであります。時間軸と会計方法という、2つの視点による財政分析と管理指標は、私自身、議会で主張してきたことであり、区がそれを採用していることは、率直に評価しています。
【1】 この「基本的な考え方」に対する区長の評価を伺います。これまで、代表質問でもご答弁されてきましたが、今後もこれを継続して採用する意向なのか、改めて確認いたします。
【2】 区長は、区長就任後職員から、区政の現状等を聞いていく中で、「安定した財政基盤を維持することが必要との認識を新たに」したと述べられています。では、それ以前は、どのような認識であったのでしょうか。また、安定した財政基盤が必要と認識するに至った最大の理由は何か、お答え下さい。
本区において、指標を設定し、健全な財政を確保する試みは、2012年度に策定した「財政の健全化と持続可能な財政運営を確保するためのルール」から始まっています。本年度からは、数値の達成にとらわれることなく、柔軟で機動的な財政運営を行うということから、「考え方」へと名称が変わりました。また、指標項目についても、幾度か見直しが行われてきました。
私は、かねてより、財政規律の仕組みの必要性は訴える一方で、過度に硬直的になるのではなく、むしろその時々の財政状況に応じて、直面するニーズや課題に臨機応変に対応することを是としています。その立場から、5項目の内容について、更なる改善も促しつつ、以下伺ってまいります。
まず、項目1と2、および『財政のダム』について伺います。項目1は、財政調整基金を維持する残高、項目2は、施設整備基金に毎年度積み立てる金額を定めています。これらは、それぞれの基金の目的や性格に応じて、適切に活用していくための目標です。
地方自治体の予算は、単年度で収支が均衡することを原則に編成されています。これは毎年の経済成長に比例して、自治体の歳入も右肩上がりで自然に増加している時代には有効であったのかもしれません。しかし、このような時代は、はるか昔のことです。未来を見据えた上で、後世にツケを回さず、状況の変化にも柔軟に対応できる財政運営でなければなりません。
私はこうした認識から、かねてより「財政のダム」の必要性を主張してきました。基金を「ダム」に例え、平時に可能な範囲で水を溜めておき、緊急時に放流することで、安定的に行政サービスを提供する仕組みを訴えてきました。
項目1で、財政調整基金350億円を維持するとしているのは、その考えが反映されています。大規模災害に備え、被災した自治体の事例を踏まえ一人当たりの災害復旧費を杉並区の人口に換算した場合の経費約150億円、そして経済状況の著しい変動に備え、リーマン・ショック時に、区が実際に基金を取り崩した約200億円を足した額となっています。
実際に放流した事例として、現在のコロナ対策があります。区は、コロナ禍を「大規模災害に匹敵する事態」ととらえ、必要な財源を積極的に投入するとの一貫した方針で、コロナ対応に当たってきました。その中でも、特筆すべきは、「入院・外来医療体制強化事業補助金」です。当時、コロナ感染が急激に拡大し、「医療崩壊」の危機という今まで経験したことがない恐怖に、私たちは包まれました。その最中、区は、区内4基幹病院に対して、予算額で合計22億2900万円、支払額として16億3005万円の財政支援を行いました。
この事業は、その後第三者による検証が行われ、今年の3月に検証結果が公表されました。その報告書によると、対象となった一昨年の4月~6月期は、4病院ともコロナ対応によって、大幅な減収となり、病院経営が圧迫される状況にありました。現・預金等の残高が前年3月末比で5割以下に激減し、キャッシュフローの悪化が心配されましたが、区からの補助により、深刻な事態が回避できたことが報告されています。国や東京都からの補助金が入金されたのは秋口であり、スピードを重視した、この区の包括補助が、まさに救いの手となったのです。当事者である医療機関からは、「真っ先に杉並区が包括的に支援を打ち出したことで、医療に専念できた」、「杉並区と共同で社会的な使命が果たせた」との声が寄せられました。
【3】 入院・外来医療体制強化事業補助金についての検証結果を受けて、改めて、区としての同事業の総括を伺います。
この事業を皮切りに、この間、14回にわたり合計103億円の財政調整基金の取り崩しが行われ、その内の大部分がコロナ対策の財源に充てられてきました。
【4】 基金の取り崩しにより対応してきた、これまでの対策の内訳をお示し下さい。併せて、一連の区のコロナ対策に、財政調整基金が果たしてきた財政面からの役割について、どのように評価しているのか、お聞きします。
今後、首都直下型大地震等の大規模災害が区内で発生した場合は、事態はさらに深刻であると予想されます。以前、一般質問にて、阪神淡路大震災の被害が大きかった兵庫県西宮市の事例を紹介したことがあります。同市では、震災直後からの18年間で震災関連経費の合計額が4485億円に上り、その4割弱の1700億円を市債発行により対応しました。結果、20年以上を経た現在でも、市債の償還が重い財政負担となっています。
高岡法科大学の野口のり子教授は、「昨今の災害の被害の複合化、多様化そして大規模化によって、災害の応急対策から復旧・復興への過程が長期化し、対策の連続性への財源確保が今、地方自治体に求められている喫緊の課題」であると述べています。財政のダムは、「いつか」のための特別な措置ではなく、通常の財政運営の中に組み込まれるべきものと考えます。
【5】 緊急対応に備えた財政運営のあり方について、一層の研究を重ね、より精度の高い、効果的な「財政のダム」の構築に努めていただきたいと思いますが、区の所見を伺います。
次に、項目2、施設整備基金への毎年40億円以上の積み立てについて伺います。将来の財政負担を予測し、平準化させる取組みであり、これも一種の「財政のダム」と言えます。40億円以上という数字は、「区立施設再編整備計画(第2期)」に基づき、今後40年間の区立施設の長寿命化も含めた改築・改修等に要する経費に対して、施設整備基金からの繰り出しに必要な年平均額を算出したものです。
今年の予算特別委員会で、私は、このスキーム自体は理解できるものの、40年間という対象期間が長すぎるのではないかと指摘いたしました。将来の物価変動や、国や都による施設整備への補助制度が変化していくことなども考えられるため、例えば総合計画の2030年度までを対象とした方が、より現実的ではないかと、問題提起をいたしました。それに対し、区は、柔軟に見直していくとの考えを示しました。
【6】 項目2、施設整備基金への積立計画40年間、という期間についての、私の指摘に対して、区はどうお考えか、改めてお聞かせ下さい。
続いて、項目4、行政コスト対税収等比率100%以下について伺います。これは、経常的な行政コストが、税収や補助金等の歳入に占める割合を示したものです。100%を下回るということは、単年度の収支に資産形成や財政のダム等に回せる弾力性があることを意味します。本区の実績は90%代で推移しており、財源がコストを上回っています。
【7】 しかし、2020年度は、95.4%で、それまでの平均的な値より数%ポイント上昇しました。区は、この要因について、どのように分析しているのか、確認します。
次に、項目3、公債費負担比率と、項目5、償還可能年数について伺います。これら2つの指標は、区債発行に関するものです。まず公債費負担比率について、5%を超えないと設定しています。一般的には5%でもかなり低い数字ですが、区の過去の実績に基づいて、より抑制的な数値となっています。
しかし、公債費負担比率は、果たして財政規律を維持する事前統制的な指標になり得るものか、予算特別委員会で、私はこの点についても質問しました。なぜなら、公債費負担比率とは古くは20年、25年も前に起債した区債の元利償還金等の一般財源に対する比率であり、正確な数字は決算後に明らかになるからです。
対して、財政課は、この指標は、中長期的なシミュレーションをし、起債の調整を行うことにより、予防的措置への活用が可能との考えを示しました。この財政課の考えが実行できれば、まさに単年度の収支均衡と中長期的な財政の健全性を図るというコンセプトに合致します。しかし、それを実際に行うには複雑な作業と多大な労力を必要とし、前提とするシミュレーションの精度も、課題になると想像します。
【8】 先に、区が答弁した公債費負担比率を用いた予防的措置について、現段階での検討状況と、今後の取組み予定について伺います。
項目5の債務償還可能年数については、私は常々、発行済区債の平均償還年数と、対比して見ています。現状、区債の平均償還年数は、17、8年程度、対する債務償還可能年数は、ほぼ2年未満というのが実態です。つまり17、8年で返済する借金に対し、数年で返せる財源を保有しており、財源から見れば、本区の区債発行余力は、まだ十分にあると私は考えます。
一方、金利状況も区債発行の大きな検討要素です。超低金利の時代が続き、過去5年間で本区が起債したもので最も高い利率は0.4%でした。そのような背景から、私は、昨年度と今年度、区債充当事業を拡大するなど、区債を最大限活用するよう提案し、区はそうした起債方針を採用しています。しかし、いずれ金利が上昇局面に転ずるリスクはあり、金利動向が急激に変化した場合でも、柔軟かつ機敏に対応できなければなりません。
【9】 区は、区債発行に伴い、金利変動リスクに対して、どのような対策をとっているのでしょうか。
実態として、全国の自治体の中でも、他の特別区とともに杉並区の財政状況は相対的に優良です。しかし、現下では、コロナ対策に引き続き万全を期すことが求められ、長期的には、人口減少、少子高齢化、災害、税制度の改正など、いくつもの課題、あるいはリスクを抱えています。そのような中で、杉並区が、これからも永きにわたって、区民福祉の向上を推進していくには、健全な財政が必要不可欠であることを改めて訴えたいと思います。
【10】 引き続き、区民サービスの向上と健全財政の維持の両立に尽力していただきたいと思いますが、所見を伺います。
次の項目、ICT調達について伺います。
このグラフは、2020年度までの過去10年間の、本区の情報システム運営コストの推移です。具体的には、情報システム部門が直接管理する内部情報系と住民情報系のシステム関連と、ネットワークやセキュリティ等の全庁的な情報インフラに関連する経費を示しています。棒グラフは各年度の決算額で、2011年度は15億7700万円、2020年度は11億2700万円でした。
一方、折れ線グラフは、一般会計における割合であり、2011年度は1.0%、2020年度は0.4%となっています。点線の部分は住民情報系のメインフレームシステムの再構築に要した、3年間で合計約20億円にのぼった投資的経費であり、今申し上げた数字には含まれていません。
さかのぼること15年前の2007年度は、24億8000万円で、一般会計に占める割合が1.6%と、金額では倍以上、割合では4倍という状況でした。
情報システムは、専門性が高く、複雑になればなるほど、適正価格の検証や効率化を図ることが難しい分野です。にもかかわらず、情報システム部門が直接管理する範囲については、着実にコストの縮減が図られてきており、評価に値するものと考えます。
【11】 改めて、過去15年にわたり、情報システムの運営に関わる経費が着実に縮減されてきた経緯、所管が行ってきた取組み等について、確認します。
【12】 一方で、情報システム部門が直接管理していない、各所管における情報化も進んでいます。全庁的な状況は把握しているのでしょうか。また、システムの全体最適化を図るためには、情報システム部門が各所管に対して積極的に関与することが必要と考えますが、所見を伺います。
今や、ICTやデジタルの情報・技術が社会や生活の形を変える、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の時代へと移っています。本区においても、今年度より「デジタル化推進基本方針」に基づく、「杉並区デジタル化推進計画(第1次)」の実行期間に入っています。
【13】 ICTの効率的な導入・運営を図りつつ、戦略的にICT分野への投資を進める局面へ入っていると理解しますが、改めて、DX時代における、ICT・デジタル分野への投資に対する区の考えを伺います。
デジタル化推進基本方針では、「デジタル技術を活用した区民サービスの向上」と、「行政内部のデジタル化による効率化の推進」という二つの大きな方針を掲げています。つまり、区民サービスの向上と行政の効率化が、本区におけるデジタル化の目的です。
「杉並区情報システム調達ガイドライン」では、ICT調達においては、「業務全体を俯瞰して全体最適化に向けた検討」や、「業務フローや事務処理方法とあわせた改善の視点、ビジネスプロセス改善(BPI)、ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)」、さらには「サービスデザイン思考」をめざしていくと謳っています。我が会派としても、訴え続けてきた内容であります。
【14】 これらの概念はどのように具現化するお考えでしょうか。また、具現化の過程においては、現状や進捗の見える化が必要であり、「区民サービスの向上」と「デジタル化による効率化」の状況を把握し評価する数値的な成果指標(KPI)を設けるべきであると考えます。このことにより、より合理的、客観的に、ICT投資における可否の判断や優先順位付けが可能になると考えます。所見を伺います。
現在、区では、4名のデジタル戦略アドバイザーによる意見・助言を受け、経費精査では監査法人の情報システム部門によりコンサルティングを受ける等、それぞれの局面で外部専門家を活用しています。
【15】 デジタル化やICT投資・調達には、信頼性・安全性・有効性の確保に加え、リスク対応など全体を俯瞰した形でも、外部専門家の知見が必要ではないでしょうか。最後に、この点についての区の所見を伺って、私の質問を終わります。
以上